新車試乗レポート
更新日:2022.09.02 / 掲載日:2022.09.02
ルノーがE-TECHハイブリッドを開発した背景

文●九島辰也 写真●ルノー
ルノーのパワートレインが今おもしろいことになっています。簡単に言ってしまえばいわゆるハイブリッドなのですが、彼ら独自のアイデアと技術でできています。ひと口に“ハイブリッド”と言ってもいろいろあるんですね。とても勉強になります。
システムの名前はE-TECH HYBRIDです。現在日本でもアルカナ、ルーテシア、そしてキャプチャーに積まれています。フランス本国にはメガーヌにもありますから、今後増えることは間違いありません。新型SUVのAUSTRAL(アウストラル?)にも積まれることが決定しています。

E-TECH HYBRIDは1.6リッター直4自然吸気エンジン+2モーター+電子制御ドッグクラッチマルチモードATから構成されます。で、ナニがユニークかというと、2モーターの内訳とATの仕組み。内燃機関とバッテリーで動かすモーターの使い方が他と違います。
まず2つのモーターですが、これはメインモーターとなるEモーターとHSG(ハイボルテージスターター&ジェネレーター)を指します。多くの場合“2モーター”が意味するのはフロントとリアのアクスルに一つずつ搭載する方式。それだとAWDとなりますが、E-TECH HYBRIDはそうでありません。メインモーターが動かすのはフロントだけ。で、もうひとつはメインモーターのエンジン側に取り付けられサポートにまわります。コンパクトで場所を取らないのも特徴的です。
次に電子制御ドッグクラッチマルチモードATですが、これはルノーが長年参戦しているF1レースからフィードバックしたシステムです。クラッチとシンクロナイザーを省くことでコンパクトで軽量なギアボックスとなりました。具体的にはモーター側に2つ、エンジン側に4つのギアを持つことで、それぞれ組み合わせて12通りの変速比を活用します。シームレスな加速ができるのはこのおかげでしょう。それにしてもF1マシンからのフィードバックと聞くと心躍りますよね。日本では地味な印象がありますが、ルノーの底力を知ったような気がします。
ではなぜルノーは独自のハイブリッド技術を開発したのか? その背景にはトヨタのハイブリッドシステムがあります。どのメーカーよりも早く大規模な市販化に漕ぎ着けたこの方式にはたくさんの特許があります。なので、他のメーカーが手を出した時にはすでにがんじがらめになっていたのはお分かりでしょう。そのためドイツ系メーカーはEV開発を優先し、その間を48Vマイルドハイブリッドで乗り切ろうと考えました。もちろん、ハイブリッドも完成させていますが、主軸にはしません。
そこでルノーが考えたのがこのE-TECH HYBRID。彼らもこのシステムに関して150以上の特許を取得しているそうです。昔からメーカー同士は特許技術の凌ぎ合いですよね。大変です。
そんなルノーですが、日本での目玉は今年年末か来年初頭に上陸するであろう新型カングーに他なりません。ネットで写真を見た感じでは、大きくなりラグジュアリーな装いになった気がします。ちょっと路線変更ですかね。日本でメチャクチャ人気の高いクルマですから興味津々です。先日もカングーファンの友人に情報あったら教えてと連絡がありました。残念ながらネットにある公開情報しか知りませんが……。

ただ個人的に興味があるというか、好きなのはアルカナです。話がE-TECH HYBRIDにばかりいきますが、アルカナのスタイリングはかなりかっこいいと思います。SUVでありながらスポーティさを強く感じます。それにスムーズで力強い走りと軽快なハンドリング。かなり好みだな。こういうシュッとしたSUVが増えるといいですよね。まさにトレンドど真ん中!って感じです。