新車試乗レポート
更新日:2022.07.22 / 掲載日:2022.07.22

【試乗レポート 日産 フェアレディZ】ウェット路面でも安心して操れる405馬力

文●九島辰也 写真●日産

 ついに新型フェアレディZのステアリングを握る時がきた。場所は公道ではなく北海道にある日産の陸別試験場。正式な発売開始を前にしたモータージャーナリスト向けのテストドライブである。このタイミングで乗れるのは正直嬉しい。新型Zは個人的な趣味嗜好として“アリ”なクルマだからだ。

GT-Rが「モビルスーツ」だとしたらフェアレディZは「ダンスパートナー」

日産 フェアレディZ

 クルマの素性はすでにメディアを賑わせているので多くは語らないが、ご存じのようにプラットフォームはこれまでを継承する。といっても、足回りのセッティングやフロアの補強など、かなりの部分を新設計しているのは紛れもない事実。走りの面での進化もそうだし、衝突安全基準への対応に関しても従来型をそのまま使うわけにはいかない。ということで、型式にZ34の文字は残るが新型車と言っても間違いでないだろう。

 そんな新型はZファンのためにつくられた。Zの魅力は、カッコよくて、速くて、良い音を鳴らすことであり、それを歴代最高に仕上げたのがこいつだそうだ。陸別試験場でのプレゼンテーションでは、ブランドアンバサダー田村氏のそんな熱い話が続いた。中でも個人的にも関心を持ったのは、「ZとGT-Rとの違い」という題目。そこで、Zを“ダンスパートナー”とし、GT-Rを“モビルスーツ”と表現した。確かにGT-Rはモビルスーツ的だ。ガンダムと例えるよりずっとスマートな表現である。

初代「S30」のイメージを取り入れたスタイリング

日産 フェアレディZ

 デザインに関してはこんな話があった。アンケートによると歴代Zの中でS30は圧倒的に人気が高く、多くのファンがそのデザインが最高であると信じているそうだ。よって、新型はそのシルエットを上手に取り入れている。ヘッドライトの上下の湾曲したLEDラインはS30の丸型ヘッドライトのリフレクター部分で、そこへの反射をイメージしているらしい。ただ、リアコンビネーションランプはZ32を踏襲。それまでとは異なる高級感を醸し出している。確かに、新型のスタートプライスは500万円オーバーで、ボリュームゾーンは600万円台だから、高級感も必要だ。

405馬力の3L V6ツインターボを試す

 なんて話はともかく、実際に走らせた印象へ話を移そう。まず乗り込んだのは9速ATの18インチ。通常であればメインストリームになるモデルだが、このクルマの場合MTとAT比率はかなり50:50に近いというからひとつの選択肢と考えた方がいいだろう。ちなみに、エンジンはギアボックスの種類を問わず3リッターV6ツインターボのみの設定。パワーは405ps。あの400Rと同じユニットとなる。

日産 フェアレディZ

 陸別試験場の天気はあいにくの小雨であった。それとクローズドエリアではあるが、制限速度が設けられていたのを明記しておこう。そんな中での18インチホイールを履いたZは割と大人しく思えた。乗る前のイメージはスパルタンでピーキーな領域を持っていると勝手に思い込んでいたこともあり、少し肩透かしを食らった。高速路でもワインディングでもクルマは終始安定していて、ウェットでも安心。ステアリングは正確で操舵感もしっかりあり、クセもない。2シータースポーツではあるが、GTカー的な要素があるんだと感じたほどだ。確かに、今どきのスポーツカーはこのくらい安定感がなければ成立しないのかもしれない。

 ただ、ドライブモードを“スポーツ”にし、積極的にパドルを使うと、違う顔を見せる。ブリッピングサウンドは大きくなり、操作に対し素早い変速を繰り返すことで、エンジンのおいしいところをそのまま使えるのだ。よって走りはよりスパルタンになる。このクルマはこうやって走るんだなぁ、と実感する瞬間だ。

 その後乗った6速MT搭載の19インチタイヤはその延長線上にあった。シフトチェンジに対するシビアな挙動が生まれるので、走っていると楽しい。ウェットの時こそその変化を実感できるのがポイントだ。操作感を全身で味わえるのはやはりこちらだろう。とはいえ、このMTが100点満点であるわけではない。もう少しショートストロークでカチカチと動けばなおさら楽しくなる。それと個体差かもしれないが、6速から5速へのシフトダウンのゲージが真っ直ぐでないような気がしたのが少し気になった……。

自動車ジャーナリストの九島辰也氏

 といった重箱の端を突っつく話はともかく、フェアレディZ復活は明るいニュースであることは間違いない。個人的にも嬉しい限り。近未来のショッピングリストに入れたいほどだ。なんたって素直にかっこいいと思えるスタイリングだしね。ボディカラーはバーガンディかミッドナイトブラックかな。いずれにせよ、大人が乗れるシックなスポーツカー誕生に胸躍る週末であった。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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