輸入車
更新日:2024.09.21 / 掲載日:2024.09.21
3600万円のクラシックディフェンダーに思うこと【九島辰也】
文●九島辰也 写真●ランドローバー
アウトドア色の強いSUV人気が続いています。ゲレンデヴァーゲンを筆頭に、ディフェンダー、ジープ・ラングラー、ランドクルーザー300/250/70などに羨望の眼差しが集まっているようです。トヨタRAV4もそうでしょう。現行型は乗用車テイストが主流のSUVトレンドの真逆を行くようなスタイリングで発表され、注目されました。“オフロードパッケージ”なんて特別仕様車も出して、マーケットニーズに応えています。“オフパケ2”も出るくらい人気です。
個人的にRAV4をカスタムしてオフ会に出たことがありましたが、オフローダーに仕上げたクルマが多かったのを覚えています。車高を上げ、オフロードタイヤを装着し、グリルガードやルーフラックを取り付けます。そう、かなりワイルドな装い。それでもワタクシが手を入れたRAV4が一番目立っていましたけどね。構造変更したスリーサイズは全長5m、全幅2m、全高1.9mでしたから。マットグリーンにオールペンされたボディは左ハンドルで、エンジンは2.5リッターだったし……。
それはともかく、そんな流れの中でディフェンダーに関するニュースを発見しました。それはランドローバー自身がクラシックディフェンダーV8をレストアしてヨーロッパで販売するというもの。ランドローバークラシックワークスの専門チームが手作業で仕上げ、顧客の好みに合わせてカスタマイズするそうです。
ベースになるのは2012~2016年に製造された車両で、エンジンは当時の5リッターV8(405hp)、それにZF社製8速ATが組み合わされます。販売価格はなんと19万ポンド。日本円に換算すると約3600万円になります。どうなんですかね。いいプロジェクトですが、値段を聞くと正直引きます。
クラシックディフェンダーをもう一度蘇らせようという気持ちはわからなくありません。ワタクシも自他共に認めるオフローダー好きですから。ランドローバーシリーズ1から同シリーズ2、そしてディフェンダーの前身となるシリーズ3、すべてを英国でテストドライブしたことがあります。もちろん初期のディフェンダーも。V8のガソリン、5気筒ディーゼルなどいろいろ。
で、それを現代風に蘇らせたのが、ジェリー・マクガバン氏が手がけた現行ディフェンダーです。クラシックディフェンダーを新しく解釈して完成させました。でも、こうしてクラシックディフェンダーにこだわるなら、ゲレンデヴァーゲンのようなモデルチェンジ方式でもよかったのではないかと思います。要するに、デザインをそのまま残し進化させる方法です。
もちろん、これは大変な苦労があります。なんたって現代の安全基準や環境対策とはかけ離れた作りですから、それを最新の基準に合わせるのは、マルっと新しくするより大変です。乗員保護を目的とした側面衝突などはほぼ毎年のように厳しくなっていますし、排ガス規制をクリアするには今のパワーソースに載せ替える必要があります。う~ん、エンジンルームにそんなスペースがあるのかどうか。
でも、かなり苦労しながらもメルセデスはそれを成し遂げています。先週それについて記述しましたが、ピラーの細いスクエアなスタイリングやドアの音や閉めた時のフィーリングはそのままキープされています。でもってパワーソースに最新のクリーンディーゼルを搭載したり、モーターによるマイルドハイブリッド化で、排ガス問題に向き合っています。
結果、人気は絶大。新型は新車価格が上がったので、それにつられるように中古車価格も高値キープされています。いやはやお見事。かつて自分でも乗っていましたが、たまにネットでいい状態の中古車を見つけると、もう一度買いたくなります。
ここまでで何が言いたいかというと、実は新型ディフェンダーが出た時から、クラシックディフェンダーをゲレンデヴァーゲンのようにモデルチェンジ出来なかったのかなと感じていました。新しいディフェンダーも悪くないですが、クラシックディフェンダーの方が魅力的だと思ったからです。とはいえ、セールス的に新型は大成功を納めたわけですからね。この話は封印しました。ただ、前述した3600万円のクラシックディフェンダーのニュースを読むとそんな考えを思い出します。まぁ、メーカーも時代に柔軟に対応しなければなりませんけどね。そのうちこのプロジェクトに初代レンジローバーも加わるかもしれませんし。いずれにせよ、時代を席巻した遺産は大切です。