新型車比較・ライバル車対決
更新日:2021.06.11 / 掲載日:2021.06.09
新型ヴェゼル・価格帯別ガチンコ比較【2】予算250万~300万円クラス

最新技術を惜しみなく注入したことで、大きな進化を遂げた新型ヴェゼル。もはやライバルはコンパクトSUVのみならず、ミドルSUVも視野に入るほどだ。ここでは価格帯別にヴェゼルのライバルモデルをチェックしてみたい。
ライバルは個性派が揃うが万能タイプの強みで勝負
この価格帯に入るヴェゼルはハイブリッドのXとZ。Xは装備面ではガソリンGと同等のベーシック仕様。高級感の演出は上級グレードに及ばないが、実用的な機能装備が充実しており、ホンダコネクトやナビ装着キットも標準。ホンダセンシングも標準装着になり安全&運転支援装備はトップレベル。価格対策モデルというよりも、コスパ重視の実用グレードといえる。上級設定のZは、優れた実用性に加えて、高級感を高める加飾やハンズフリーパワーリヤゲートやグレードアップ型エアコンの装着、BSMやマルチビューカメラの設定など、日常とレジャーの利便快適性向上が図られている。なお、4WD車としてはZがヴェゼルの最上級仕様になるが、300万円以下では4WD車には手が届かない。ちなみにXとZの4WD車の価格差は24万円になる。 この2つのグレードの価格はハイブリッドなどの上位パワートレーンを搭載するコンパクトSUVと競合する。さらにユーザーが求める性能機能によって、比較検討するべきモデルも変わってくる。 例えば、キックスとC-HRのハイブリッド車はFF車のみの設定なので、ヴェゼルのFF車と真っ向ライバルになる。ヤリスクロスは4WD車が選べるが性能面で秀でているとも言い難い。悪路対応力を重視するならスバルXVが候補車筆頭だが、車体サイズは一回り大きくなってしまう。CX-30は適応用途でヴェゼルと比較的近いポジションにあるが、キャビン実用性が気になる部分である。 このように価格面では競合するものの、ヴェゼルと適応用途やキャラが完全に被るモデルはない。ヴェゼルはウェルバランスな多様性、競合他車は適応用途特化型の個性が見所とも言える。特化型のほうがメリットが大きいように思えるが、実用性や嗜好的な要素のバランスが崩れるので、選び手側も同様の割り切りが必要となる。 実用性に関わる機能や性能の優劣は気になるところだが、コンパクトSUVは個性的なモデルが揃っているので、これを活かさない手はない。 そして、そんなコンパクトSUVの基準器となるのがヴェゼルのXとZだ。万人にとってベストチョイスとまでは言えないが、幅広い領域で高いレベルを体感させてくれる優等生だけに、SUVとして外しの少ない選択として自信を持ってオススメできる。 同価格帯のSUVではトップクラスのキャビンスペースとユーティリティを持つヴェゼル。何を求めているとしてもSUV選びの有力候補なのは間違いない。
HONDA ヴェゼル(e:HEV)

●車両本体価格e:HEV X 265万8700円(FF) 287万8700円(4WD)e:HEV Z 289万8500円(FF) 311万8500円(4WD)
実はヴェゼル選びの大本命。優れた実用性能を味わえる
イメージではPLaYが看板になっているが、レジャー用途向けのSUVらしさではXとZが主力モデルと考えるべき。厳しい悪路走行向けの4WDではないがアウトドア趣味に使うには十分な踏破性も備え、ホンダセンシングもホンダコネクトも最新仕様。4WDでWLTC総合モード22.0km/Lの燃費も魅力である。

新型ヴェゼルに搭載するe:HEVは、現行フィット用をベースに改良されたもの。1.5Lエンジンも2モーター内蔵電気式CVTも出力特性を強化。SUVボディを力強く走らせてくれる。


スポーティハッチバックのフォルムをSUVボディに落とし込んだ独自のスタイリングが魅力。先代に比べるとフラットかつ角ばった印象が強まったが、佇まい全体から感じるフレンドリーさは健在だ。

センタータンクレイアウトがもたらす、広々としたキャビン空間も健在。ボディやパネルに音響特性を考慮した工夫が凝らされたことで、静粛性も大きく高まっている。
TOYOTA ヤリスクロス(ハイブリッド車)
●車両本体価格228万4000~281万5000円
燃費優先ならば最も強力なライバルになる
ヤリスベースのSUVだが、パーソナルユースに振ったヤリスに対して後席と荷室の実用性を大幅改善したモデルと考えた方が理解しやすい。最低地上高は170mmあるが、悪路性能では後輪の駆動力に余裕がない。最大の魅力は燃費。Z以外のWLTC総合モードは4WD車で28km/L超、FF車では30km/L超にもなる。

3気筒エンジン特有のエンジンフィールはあるものの、高速長距離を難なくこなせる出力特性は上級モデルにも負けない大きな武器だ。サスチューンは硬めながらも、一般道での快適性も考慮した味付けだ。

内装意匠は少し物足りなさもあるが、ボディ拡大分を居住性の向上に充てたことで大人4名がゆったりと寛げるキャビンを実現している。
NISSAN キックス
●車両本体価格275万9900~311万4100円
武器はe-POWERのみにあらず。キャビンユーティリティも優秀
最低地上高は170mmを確保するがFFのみの設定なので悪路性能からSUVを選択するユーザーには不向き。しかし、e-POWERの力強い走りや広い室内と荷室などオンロードユース向けのコンパクトワゴンとして魅力的な性能と実用性を備える。プレミアムコンパクト相当の立ち位置だが、キャビン実用性を重視するユーザー向けである。

電動走行がもたらす力強い走りと小気味良いステア感覚は、キックスを積極的に選びたくなる理由。FF車のみというのは残念だが、オンロード主体ならば問題ないだろう。

国内向けは、内装意匠を豪華に仕立てた上級グレードのみ。価格帯はやや高めに思えるが、プロパイロットが標準装着されるなど、実はコスパも悪くない。
SUBARU スバルXV(e-BOXER車)
●車両本体価格265万1000~292万6000円
伸びない燃費は弱点だが走りの総合力はトップクラス
ボディシェルをインプレッサスポーツと共用するため、視覚やキャビンスペースでSUVらしさは少ない。ただ、上級コンパクトの寛ぎと走りのよさをそのままに活かしたツーリング性能と優れた悪路踏破性は大きな魅力。ただ、カタログ値からも分かるように、実用走行でも燃費が泣き所。燃費を求めてハイブリッド車を選ぶなら不向きだ。

e-BOXER車は滑らかな吹け上がり感も魅力の一つ。秀逸なサスチューンもあってSUVとしては相当高いレベルの走りを披露してくれる。
MAZDA CX-30(2L車/ディーゼルターボ車)
●車両本体価格239万2500~303万500円(ガソリン車)288万7500~330万5500円(ディーゼルターボ車)
キャビン性能に難点はあるがプレミアム感の高さは魅力
先日の改良で乗り心地を改善。内外装や走行感覚のプレミアム感で評価するならコンパクトSUVの最上位だ。後席居住性や荷室積載は凡庸であり、キャビン実用性を重視するユーザーには勧めづらいが、2名乗車を基準にレジャー&ツーリングを楽しむには好適。動力性能と燃費の点からディーゼルモデルがイチオシだ。

一部改良により乗り心地が大幅改善されたことで、一般的にオススメできるSUVとなった。本革仕様でなければコスパも悪くない。
TOYOTA C-HR
●車両本体価格238万2000~301万3000円(ガソリン車)274万5000~314万5000円(ハイブリッド車)
燃費や走りはトップクラスだがキャビンの狭さが大きな弱点
SUVらしいのは全高のみ、といっては言い過ぎかもしれないが、先ずスタイルありきでデザインのために後席や荷室の使い勝手が悪い。最低地上高は140mmであり、ハイブリッド車はFFに限定されている。燃費はクラストップレベルだが、SUVをモチーフにしたスペシャリティカーあるいはプリウススポーツと考えるべきだ。
●文:川島茂夫/月刊自家用車編集部