新型車比較・ライバル車対決
更新日:2020.09.29 / 掲載日:2020.09.29
TOYOTA ヤリスクロス大解剖【3】他車比較&結論!
プロトタイプ取材や編集部調べの価格によって、他車との現実的な比較が可能に。果たしてライバルや兄弟車との違いは?※ヤリスクロスの写真はプロトタイプ
【姉妹車対決】vsヤリス

実用性と付加価値で ヤリスとの違いは明確
ハードウェア面では姉妹車になるが前提とする適応用途が異なる。ヤリスの実用性はSUVで言えばCHRに近い。前席2名乗車を基準に4名乗車または2名+かさ張る荷物という使い方を前提にしたキャビンだ。ファミリー&レジャーに足りない実用性をCHRは嗜好的な魅力で、ヤリスは経済性で補っているのだが、いずれにしても4名乗車+荷物が前提のファミリー&レジャー用途に向けて開発されたヤリスクロスとは、見ている方向が根本的に異なっている。
走行ハードを共用すれば性能については軽量なヤリスが上回るのは当然であり、一方、悪路対応力はヤリスにはないヤリスクロスの付加価値。クルマのある生活の楽しみ方の幅の広さに大きな隔たりがある。
TOYOTA ヤリス

●発売日:20年2月10日 ●価格:139万5000-249万3000円
【1.0L・FF】【1.5L・FF/4WD】【1.5Lハイブリッド・FF/4WD】 フルチェンジを機にヴィッツから車名を変更。TNGAに基づいてハードとソフトを刷新、車線維持機能などの現代的な先進安全&運転支援機能を備え、高速長距離も苦にしない。後席や荷室の広さよりドライバーの満足感を重視するパーソナルカー的2BOXだ。
こんな人にはヤリス!
後席使用頻度の高いユーザーには不適。タウン&ツーリングを基本にしたプレ&ポストファミリー向けであり、特に省燃費の面から、距離も頻度も使い倒すようなユーザー向けだ。
【新作ライバル対決】vs キックス

電動プレミアム狙いで 低価格グレードが不在
ヤリスクロスとともに今後のスモール&コンパクト市場を牽引するモデルとなりそうな一台。 高い全高と長いキャビンを採用。拡大した後席空間や荷室容量により、同サイズのクルマとしては優れたファミリー&レジャー用途適性を得ている。
走りの質感や燃費性能においてはヤリスクロスより世代の古さを感じさせるが、プロパイロットやドライブフィールの洗練感を高めたePOWERなど魅力も多い。
ただ、気になるのは価格設定と車種展開。充実装備のせいもあるが、標準車でヤリスクロスのFF最上級グレードより約18万円高く、4WD車が設定されていない。プレミアム路線での展開を狙った結果かもしれないが、コスパ重視の実用派には厳しい部分もある。
NISSAN キックス

●発売日:20年6月30日 ●価格:275万9900-286万9900円
【モーター・FF】 すでに南米やアジアで販売されていた車種が、日本国内向けはプロパイロット標準搭載のe-POWER専用車として登場。車重増加に対応して車体も改良され、モーターの力強い走りと相まってキャラ変。先進感/プレミアム感を押し出した乗車感覚をアピールする。
e-POWERのエンジン(1.2L直3・82PS)は発電専用だ。
こんな人にはキックス!
キャビンユーティリティの向上を求めてノートe-POWERからのステップアップを考えているユーザーには最適。走りの味わいもタウン&ツーリングのウェルバランス型である。
【同門対決】vs ロッキー

ヤリスクロスの弟分だが 価格差はさほど大きくない
ダイハツの新世代設計理念「DNGA」から開発されたコンパクトSUV。全車に3気筒の1Lターボを採用。キレのいい加速感覚や軽量車らしい軽快なフットワークも魅力のひとつ。4mを下回る全長ながら視角的にも寸法的にも実用的な後席居住性を備えるなど、軽乗用で培ったダイハツのノウハウを感じさせるモデルだ。
もっとも、ヤリスクロスと比較すると格下の感は否めない。走りにスポーティな味付けを施したこともあるが、乗り味、居心地、安心感ともにヤリスクロスがクラス上の出来。言い方を換えるなら用途の軸脚がヤリスクロスよりも短中距離用途に置かれている。微妙な価格差でもあり、コスパについても圧倒的な優位性はない。
DAIHATSU ロッキー

●発売日:19年11月5日 ●価格:170万5000~236万7200円
【1.0Lターボ・FF/4WD】 トヨタが販売する兄弟車・ライズとともに大ヒット。タフなデザイン、新世代パワートレーン&シャシーの走り、最新アーキテクチャーによる先進安全&運転支援機能等々、セールスポイントが多数。それでいて価格を抑えたコスパの優等生だ。
こんな人にはロッキー!
グッと蹴り出すようなダッシュと伸びやかな加速感、車重を意識させない軽快なフットワークなど、実用性だけでなくちょっとファントゥドライブも楽しみたいなら最適。
まとめ
タウン、レジャー、エコHV等々、多様な視点から選べる!

レジャーとファミリーを無理なくこなせる最小クラスのモデルがヤリスクロス。TNGAの最新モデルらしくパワートレーンやシャシー、安全&運転支援機能も良好。生活用途の配慮も利いている。コンパクトSUV筆頭モデルなのは間違いないのだが、ヤリスクロスの何を選ぶかは悩みどころだ。
パワートレーンと駆動方式についての「ズバリ!」は別項で述べたが、悪路志向で選ぶと最高価格車イコール最適モデルとならないので注意が必要。悪路前提ならガソリンの4WD車を選択するのが賢明である。また、車両価格に対するFFと4WDの価格差が大きいので、実用2BOXとして選ぶならFF。プリウスの後継としてハイブリッド車を選ぶのもアリ!。
どうなる? コンパクトSUV勢力図
ロッキー/ライズに続いてコスパ志向をさらに刺激!?
冒頭で述べた通り、コンパクトSUVはセミハイト系の実用2BOX車としても位置付けられる。汎用性の高いキャビンと走行性能はクルマの基準器といってもいいくらいだ。そこに悪路対応力を加えて活動範囲のさらなる拡大を図った。それがヤリスクロスである。
CX-3やC-HRなど嗜好的なプレミアム性に振ったモデルもあるものの、ロッキーの好調を見ても分かるように、こういった特性はコンパクトSUVの標準的な価値感となると予想される。実用性はコスパで評価されるべきであり、その点でヤリスクロスの値頃感のある価格設定は興味深い。タウン&レジャーを前提とした各論でも優等生のクルマだけに、他社の価格戦略にも大きく影響してきそうだ。
荷室の機能性をメインに分類。ハイブリッド専用のキックスは進歩派としたが、クーペ的なフォルムではないため実用路線とも言える。
実用路線
DAIHATSU/TOYOTA ロッキー/ライズ
HONDA ヴェゼル
プレミアム路線
MAZDA CX-3
TOYOYA C-HR
進歩派路線
NISSAN キックス

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ヤリスクロス 購入必勝法
ヴェゼルで揺さぶり、最後は同士討ちに!
マツダCX-3をぶつけても反応は鈍い。キャラ的にも価格的にも真っ向からぶつかるのはヴェゼルだ。これを先行させて「ホンダはここまで安くなった」などと揺さぶりをかけると効果が得られる。上級グレードにはXVも有効。ただし一番の攻略法は「経営の異なるトヨタの販売店をまわってヤリスクロス同士の争いにもち込む」ことだ。
<ヤリスクロス購入一問一答>
Q納期は いつ頃?
A先行予約の段階では納期は3~4か月だったが、正式発売後はさらに延びると見たほうがいい。9月以降は「年内は厳しい」となりそうだ。
Qトヨタ全系列のうち、 どこを狙えばいい?
A長い間、ヤリスの前身・ヴィッツを専売車として取り扱っていたネッツ店が狙い目。そこを軸に他の3系列との競合交渉を進めるのがコツだ。
Q値引きに有効な 競合車は?
Aトヨタはヴェゼルをライバル車として強く意識している。ホンダは値引きを大きく緩めているので支払い総額を比べながら攻めると効果的だ。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久