車の最新技術
更新日:2023.05.09 / 掲載日:2022.01.31

【BMW iX】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 ここへ来て、EV(電気自動車)のニューモデルが続々と発表・発売・上陸を果たしているが、2022年はこうした動きがより活発になりそうだ。そこで【グーEVテスト】では、2022年のEVマーケットで注目を集めそうな上陸したての2台をピックアップ。実力の一部をチェックすることにした。

 今回フォーカスするのは、BMWの「iX」。2021年11月4日に発売が始まったばかりのモデルであり、BMWとしては「i3」以来、7年ぶりに日本市場へ投入するピュアEVである。

 今回のブリーフテストの監修と解説は、EVや自動運転車といった先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏が担当。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックを行うことで、「iX」の魅力と実力をチェックする。

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BMW iXのプロフィール

 BMWの「iX」は、同ブランドが“SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)”と呼ぶSUVカテゴリーのモデルをベースに、コンセプトやデザイン、パワートレーンなどのすべてにおいて次世代を見据えて開発したEVだ。次世代のEVらしく、エクステリア&インテリアデザインは独創的で、さらには最新の運転支援システムや通信システムも搭載されている。

 フロントマスクは、BMWの象徴ともいうべきキドニーグリルが一段と大型化。そこに、BMWのラインアップで最もスリムなヘッドライトを組み合わせることで、次世代のEVらしさをアピールする。一方リア回りは、ヘッドライトに通じる薄くシャープなコンビネーションランプを採用し、デザインの統一感を図る一方、エアロダイナミクスを追求したディフューザーやワイドなリアトレッドなどにより、存在感を際立たせている。

 次世代のEVらしさはインテリアにおいても追求されている。メーターパネルとコントロールディスプレイを一体化し、さらに形状を湾曲させることで、操作性や視認性が向上。多くの物理スイッチを廃止したり、送風口をスリム化したりすることですっきりとした印象に仕上げつつ、独自の“iDriveコントローラー”を装備することで、優れた操作性も手に入れている。

 ヘッドレスト一体型のシートや、ゆったりとしたリアシート空間など、キャビンの快適性も上々。さらにオプションの「ファースト・クラス・パッケージ」をチョイスすれば、電動シートの調整スイッチやスタート/ストップボタン、iDriveコントローラーなどがクリスタル製となるなど、未来感の演出も施される。

 そんな「iX」は、前輪と後輪をそれぞれ駆動する、2個のモーターを搭載した4WDモデルだ。今回試乗した高出力バージョンの「xDrive50」は、前輪を最高出力258ps、最大トルク37.2kgfのモーターで、後輪を最高出力313ps、最大トルク40.8kgfのモーターでそれぞれ駆動し、システムトータルの最高出力は523ps、最大トルクは78.0kgfを誇る。そこに組み合わされるリチウムイオンバッテリーの総電力量は111.5kWhと大容量で、一充電走行距離はWLTCモードで650km、交流電力量消費率は同モードで190Wh/kmをマークする。

 また「iX」は、充電テクノロジーにおいても最新のものを採用。最大150kWの急速充電器に対応しており、40分以内に約80%までの充電が完了し、約500kmの走行を可能とする。

  • ■グレード構成&価格
  • ・「xDrive50」(1116万円)
  • ・「xDrive40」(981万円)
  • ■電費データ
  • <xDrive50>
  • ◎交流電力量消費率
  • ・WLTCモード:190Wh/km
  •  >>>市街地モード:193Wh/km
  •  >>>郊外モード:183Wh/km
  •  >>>高速道路モード:194Wh/km
  • ◎一充電走行距離
  • ・WLTCモード:650km
  • <xDrive40>
  • ◎交流電力量消費率
  • ・WLTCモード:183Wh/km
  •  >>>市街地モード:180Wh/km
  •  >>>郊外モード:177Wh/km
  •  >>>高速道路モード:188Wh/km
  • ◎一充電走行距離
  • ・WLTCモード:450km

軽量設計の効果か冬場であってもライバルと同等の電費を記録

 今回のテストは1月とあって気温が低く、前夜には関東でも山沿いなどでは雪がちらついた日だった。朝6時に東名高速・東京ICをスタートしたときの外気温は4.5℃。ヒーターの負荷が大きく、電費には不利な状況。一般的に、春や秋など穏やかな気候のときに比べれば20~30%は悪化すると言われており、当EVテストでも概ねそんな傾向にあることが確認されている。そんななかで走った高速道路の電費は制限速度100km/h区間のその1とその4はともに4.6km/kWh、制限速度70km/h区間ではその2が5.2km/kWh、その3が4.4km/kWhだった。

 この日の交通状況は往路では、交通量が多くて渋滞の名所である大和トンネル付近などで速度が落ちたり、小田原厚木道路では工事区間があったりして、制限速度付近で走り続けられるということはなかったが、それはいつものことで、状況としては平均的。制限速度100km/km区間に比べて70km/km区間のほうが電費がいい傾向にあるのが普通で、同日テストのシトロエンE-C4は正直にそうなっている。ところがiXはその3がガクンと落ちてしまった。工事区間がいくつかあって、加速と減速が多く、それが電費悪化の要因とはなっていた。

 全般的に見れば、バッテリー容量95kWhで車両重量2560kgのアウディe-tron55スポーツバックや80kWhで2470kgのメルセデス・ベンツEQCと比べて、冬場であるにもかかわらずほとんど同等の電費であり、かなり立派。111.5kWhで2530kgのiXは、随所に軽量素材を用いたEV専用プラットフォームであり、空力にもこだわって電費を向上させているものと思われる。

寒さや交通量の影響が見られたがポテンシャルは高そうだ

 今回は路面コンディションが悪く、ワインディングロードのテストは断念せざるを得なかった。代替コースを走ることも考えはしたが、毎回同じコースを同じように走るEVテストとしてはあまり意味がなく、今回は電費に不利な冬場であり、また春以降に同じ車両でデータをとってみたいということも合わせて、今回は高速道路と一般道のみとした。

高速道路で想像以上に良好な電費を誇ったiXだったが、一般道は3.4km/kWhとやや奮わなかった。ちなみにアウディe-tron55スポーツバックは4.1km/kWh、メルセデス・ベンツEQCは4.0km/kWh。それに比べると20%弱の悪化に収まっているので、冬場のテストとしてはまったく悪くはなく(一般道走行時の外気温は6.0~6.5℃)、春にやればもう少し改善してe-tronやEQCを抜く可能性も十分にある。

ただ、高速道路に比べてやや奮わないのは、ストップ&ゴーなど速度変動が大きいと影響を受けやすいということも推測される。そう考えれば高速道路その3があまり良くなかったことも頷けるのだ。逆にいえば、空力など走行抵抗低減の性能が高く、速度変動が少ないときには驚異的な電費を叩き出せるとも見てとれる。

東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約23kmの距離を走行した

急速充電テスト! 大容量かつ充電能力の高さで30kWh以上を充電した

海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

 111.5kWhの大容量バッテリーを搭載して650kmもの航続距離(WLTCモード)を誇るiX。スタート地点ではバッテリー残量83%、走行可能距離423kmで走行を重ねていっても余裕があった。復路の海老名サービスエリアでは58%、302kmまで減った状態で、出力90kWの急速充電器を使用し30分で33.1kWhが充電された。これはEVテスト史上で、最大の充電量。車両側の受け入れ能力は150kWまで対応しており、実際に70kW以上で充電される時間が長かった。急速充電時に受け入れ能力が高いのは、大容量バッテリーの強みでもある。小さなバケツよりも大きなバケツのほうが、水を勢いよく注ぎ込めるイメージだ。一般的に80%を超えると充電量は絞られていくが、同じ80%でも容量が大きければそれだけ余裕があって、絞られ具合も緩い。もともと航続距離に余裕があるうえ、急速充電の受け入れ能力が高いことは、利便性という意味では心強い。高速道路を頻繁に利用するのならば、こういったモデルはベストチョイスだろう。いまのところ、出力の高い急速充電器は少ないが、じょじょに増えてくるはず。また、トヨタbZ4X/スバル・ソルテラなども受け入れ能力は150kWとなっており、今後は高速道路利用にも向いたモデルが続々と登場する予定だ。

後席足元チェック! フロアはフラットで後席の空間にはかなりゆとりがあった

BMW iXはどんなEVだった?

テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏

 ワインディングロードを走れなかったのが残念だったが、それでもiXは次世代型EVとして高い実力を存分に見せつけてくれた。バッテリーをたくさん積めば、それだけ車両重量が重くなって電費は悪くなるのがハイパフォーマンス/大容量バッテリー型EVのジレンマでもあるが、カーボン等の軽量素材を用いながら仕立てたEV専用プラットフォームや磨き抜かれた空力性能などで、バッテリー容量のわりには軽量で電費も良好なのだ。これだけ走ってくれればエンジン車やハイブリッドカーから乗り換えても、さほど不便を感じないだろう。また、乗り味もさすがは次世代型EVで、静粛性や滑らかさといったEVのメリットを徹底的に追求している。エンジン車をベースとしてEVにコンバートしたようなモデルとは次元が違う。今後はそういったモデルも増えてくるだろうが、まずはiXがベンチマークの座をとったと言えるだろう。

iX xDrive50

  • ■全長×全幅×全高:4955×1965×1695mm
  • ■ホイールベース:3000mm
  • ■車両重量:2530kg
  • ■バッテリー総電力量:111.5kWh
  • ■モーター定格出力:95kW
  • ■フロントモーター最高出力:258ps(190kW)/8000rpm
  • ■フロントモーター最大トルク:37.2kgf(365Nm)/0~5000rpm
  • ■リアモーター最高出力:313ps(230kW)/8000rpm
  • ■リアモーター最大トルク:40.8kgf(400Nm)/0~5000rpm
  • ■システム最高出力:523ps(385kW)
  • ■システム最大トルク:78.0kgf(765Nm)
  • ■サスペンション前/後:ウイッシュボーン/マルチリンク
  • ■ブレーキ前後:Vディスク
  • ■タイヤ前後:255/50R21
  • 取材車オプション
  • ■ボディカラー(アヴァンチュリン・レッド)、ナチュラル・レザーカスタネア(ブラック/カスタネア)、ファースト・クラス・パッケージ、ラウンジ・パッケージ、テクノロジー・パッケージ、エアロダイナミック・ホイール、スポーツ・パッケージ
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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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