車の最新技術
更新日:2021.12.24 / 掲載日:2021.12.24

次世代技術「ホンダ・センシング360」で何が変わるか【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●ホンダ

 2021年4月の三部敏宏社長就任会見では、2040年にEV、FCVの販売比率をグローバルで100%を目指す(四輪)という環境への取り組みに注目が集まったが、安全への取り組みでも2050年に全世界でホンダの四輪、二輪が関与する交通事故死亡者ゼロを目指すと野心的な目標を掲げていた。

2021年11月にはその実現に向けた先進の将来安全技術を公開。AI活用による知能化運転支援技術、すべての交通参加者が通信で繋がる安心・安全ネットワーク技術などが交通事故死亡者ゼロへ向けたシナリオだ。

 中間目標としては2030年に全世界でホンダの二輪・四輪が関与する交通事故死者半減が目指されている。今回は、2030年に先進国で販売するすべてのモデルへ展開するというホンダ・センシング360を紹介したい。

ホンダの次世代安全運転支援システム「ホンダ・センシング360」

 ホンダ・センシングは、2014年から使われているホンダの安全運転支援システムの名称で、衝突軽減ブレーキ(CMBS)などを始め現在は13の機能がある。その普及版に新機能を追加したのがホンダ・センシング360だ。

 交通事故死者ゼロに向けた重点領域は、交差点、路外逸脱、歩行者、二輪などで、検知性能を強化する必要がある。

 現在のホンダ・センシングのセンサーは前方を監視する単眼カメラのみだが、ホンダ・センシング360ではフロントにワイドビューカメラと長距離ミリ波レーダー(フロントレーダー)、ボディの四隅に中距離ミリ波レーダー(コーナーレーダー)を搭載して、文字通り360度にわたって周囲の状況を把握する。

 これによって追加される機能は、

  • 衝突軽減ブレーキ(CMBS)に交差点、出会いがしら、歩行者、車両側方/対向対応といった機能を追加。
  • 前方交差車両警報。
  • 車線変更時衝突抑制機能。
  • 車線変更支援機能。
  • カーブ車速調整機能。

などとなっている。

ホンダ・センシング360の実験車両を体験。見通しの悪い交差点での効果を実感

 テストコースで、実験車両によって体験させてもらったが、壁などがあって見通しの悪い交差点でも、二輪・四輪ともに交差車両を検知してくれること、歩行者にも対応していることなどを確認。とくに、けっこうな勢いでオートバイが横切っていくのをドライバーよりも先に検知して警報で教えてくれること、交差点で自転車や歩行者の巻き込み事故を起こしそうなときに衝突軽減ブレーキが介入するシーンなどは有効性が高いように思われた。

 ホンダ・センシングの単眼カメラは、ドライバーの見落としをサポートするようなものだが、ホンダ・センシング360は死角をカバー。さらに、ミリ波レーダーは前走車の先まで検知できるのでポテンシャルが高いというのも、性能向上や機能強化を図れる要因だろう。

 危険が近づいたときに警報でドライバーに知らせるとともに、衝突が避けられないと判断した場合には衝突軽減ブレーキが介入するのは、従来と同様だが、全方位検知によって様々な事故シーンへの対応が拡大されるのがホンダ・センシング360の進化したところだ。

 車線変更時にミラーの死角から近づく車両との接触の危険を警告するとともに、回避のためのステアリング操作支援をする車線変更時衝突抑制機能、ACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKAS(レーンキープアシストシステム)の作動中に車線変更のステアリング操作を支援する車線変更支援機能なども新たな機能。

 世界初のレベル3自動運転となったレジェンドが搭載するホンダ・センシング・エリートでの経験や知見が開発には生かされているという。こちらには高価なLiDARというセンサーが装備されており、車両価格はベースの724万9000円に対して1100万円と跳ね上がっていたが、ホンダ・センシング360ではミリ波レーダーを活用することで現実的な価格で提供されることになる。

 ホンダ・センシング360は2022年からまず中国で発売するモデルから展開が始まるそうなので、日本でもそう遠くない将来に導入されることになるだろう。なるべく早いタイミングで普及することに期待したい。

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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