車の最新技術
更新日:2026.09.26 / 掲載日:2026.09.26

軽自動車向けハイブリッドを含む3つの新エンジンを初公開! スズキ技術説明会

 スズキはここ3年程、自社の技術開発についての現状と10年後に向けた見通しについての戦略を発表している。今回も主要メディアを中心に説明会が開催されたので、主だった内容についてレポートする。

「チームスズキ」として新型車開発期間を半分にしながら

プレゼンテーションを行なったスズキ 鈴木俊宏社長

 この技術説明会は2024年に10年ぶりに開催。そのときは、地球環境、資源課題を解決する“エネルギー極少化”という技術哲学を掲げ、マルチパスウェイの考えを示した。続いて2025年は、コーポレートスローガンの“By Your Side”のもと、地球に寄り添う“エネルギー極少化”、人に寄り添う“本質価値極大化”について議論を重ね、その実現手段として生み出される技術を“Right ×Light Mobile Tech”として発表した。

 今回は、自動車を取り巻く環境は大きく変化し続けている現状を受け、スズキとして改めて本当に必要な価値は何か、本当に必要な機能は何か、お客様にとっての“丁度いい”とは何かという本質価値をこれまで以上に問い続けると同時に、環境の変化に応じたマルチパスウェイでエネルギー極少化を達成していく必要があると考えた。

 そこでその変化のスピードに負けない会社になるための挑戦として、「新型車開発期間を半分にしながら、開発効率を30%向上、生産効率を50%向上させる」と発表したのは鈴木俊宏社長だ。

 そして、「これは単なる効率改善やコスト削減の話ではない。開発と生産が一体となり、マルチパスウェイでエネルギー極少化を実現するために重要な経営基盤強化を推進する」と述べ、「開発の進め方そのものを変える」という。「前の工程が終わってから次の工程へ進むのではなく、企画、設計、生産、品質、調達が最初から同じ目標を見ながら動き出す、同時進行・並行開発へ進化させる。また、長年培ってきた設計基準や評価ノウハウ、実車で得られた知見をデジタル空間で活用、深化させ、開発そのものの効率も高めていく。さらに、共用モジュールを広げながら、モジュール化をさらに進化させることで、開発から生産までを一体で最適化していく。それぞれが自分の仕事だけで完結するのではなく、全員が全体最適を考えて動く」とコメントした。

質疑応答には鈴木社長以下全セクションの担当者が登壇。ここでも「チームスズキ」で取り組む姿勢を見せた

 その目標を達成するためにスズキはあえて全社一丸となるべくチームスズキを結成。鈴木社長は、「自分の担当範囲だけでなく、その先のお客様まで考える。部分最適ではなく全体最適を追求する文化だ。営業、企画、設計、生産、さらにインド等のグローバルの仲間も含めたグローバルチームスズキで、地域に合わせた最適な商品をつくり上げている。技術を磨き、チームスズキでお客様価値へ仕上げる。これが私たちの強みだ」と語った。

e SKYが実現した丁度いいEV

「エネルギー極小化」と「本質価値極大化」の両立がスズキのモットー

 チームスズキの一例が間もなく発表される軽BEVのe SKYだ。鈴木社長は、「軽自動車を作り続け、磨き続けてきたスズキだからこそ分かる日々の使い方や困りごとに向き合い、たどり着くことができた“丁度いい”EV」と紹介。「高効率な電動技術、必要十分な電池、強くて軽くて安全な車体。それが、お客様に本当に必要な価値に繋がる。国内EV最小の電費値であることで、少ないバッテリーで丁度よく、強靭なボディ構造で車両重量を軽く、充電時間が短く美しい航続距離に達する、小・少・軽・短・美を表した、スズキが考える軽自動車にふさわしい“丁度いいEV”の一つの答えだ」と述べる。

 鈴木社長は、チームスズキを象徴する取り組みとして、e SKYの開発秘話を紹介。それは、一充電走行距離310kmにある。「開発初期の一充電走行距離の試算は230km程度だった。しかし、ICEの軽自動車を使われてきたお客様が軽BEVへ乗り換えるにあたり、本当に230kmで安心頂けるのか」と疑問に思ったそうだ。そこで掲げた合言葉が、「1アイテムで1km延ばす×100個」というものだった。まさに、チームスズキの全員が取り組んだ。例えば、「タイヤの転がり抵抗を下げながら、背反する性能も向上させるためにサスペンションの特性を見直す。LEDの個数を減らして消費電力を下げる一方で、導光板の工夫で見え方、見栄えは変えないようにする。小型モーターでも気持ちよく走れるよう、ギヤ比を最適化するなど、一つひとつは小さな改善だが、設計、生産、品質、調達など、部門の壁を越えて知恵を出し合いながら積み重ねた」という。その結果、「一充電走行距離は230kmから310kmまで延ばすことがでた」とその成果を強調。これらは一つの画期的な技術によるものでも、自分の担当範囲だけで完結するのでもなく、「部門を超えて全体最適を追求した結果だ」とし、これこそがチームスズキだと語った。

「チームスズキ」を象徴する活動のひとつとして紹介された2輪レース活動。ドライバー以外は全てスズキ社員がスタッフとして参加。車両はブドウの搾りかすから作ったバイオエタノールを燃料とするもの

地産地消の考え

スズキ取締役副社⻑技術統括の加藤勝弘氏

 さて、そのほかにも様々な技術戦略について説明があったが、特徴的なものを挙げたい。

 ひとつはパワートレインに関してだ。国や地域によって発電効率、再生可能エネルギーの比率、充電インフラの整備状況、災害リスクやエネルギー供給の安定性は大きく異なることから、同じシステムを一律に展開するのではなく、それぞれの地域やインフラの実情に合ったモビリティを提供する必要がある。

 スズキでも例えば、「再生可能エネルギーや充電インフラを十分に活用できる地域ではBEVを展開。地域によってはエネルギー事情に加え、大気汚染への対応や各国政府が掲げる環境政策なども重要な要素となるなど地域ごとの課題に応じて、BEV、HEV、CN燃料車を適切に組み合わせ、最大の環境貢献を目指していく。これは、必要とされるモビリティをその地域でつくり、その地域で使ってもらうことで、輸送に伴うエネルギーやコスト、供給リスクを低減する“地産地消”も重要だと考えている」と発言するのは、同社取締役副社⻑技術統括の加藤勝弘氏だ。

 電動車技術についてだが、「電池パックや熱マネジメント、充放電制御などの電池システムは自社開発し、共通化する。その上で、日本、インド、欧州など地域や用途に最適な電池を選び、最適な調達先から入手できるようにする」とし、スズキは軽いクルマづくりを得意としていることから、「必要な性能を小さな電池で実現し、お客様の使い方に合わせて必要十分な電池容量を追求し、資源使用量や車両重量を抑えるバッテリーリーンを進めていく」とコメント。そして、「電池システムは共通化しながら、地域ごとに最適な電池を選択できる柔軟性も確保する」という。

小型車と中型車をターゲットに開発中のシリーズハイブリッドエンジン。エンジンを発電機として使いモーターへ電気を供給する。将来的にはPHEVへの展開も想定している

 また、電動車のパワートレインについてe SKYを例に、「搭載するe Axleは、3 in1で、最小サイズ(スズキ調べ)だ。ここで培った技術を基に、次世代の軽Aセグメント向けは、3in1と同じサイズで6in1に進化。さらに、BCセグメント向けには軽Aセグメント用に対して体積増をわずか約10%に抑え、小さく、軽く、安く、効率の良いe Axleを実現する」。また、「基本構想を同じにした大小2つの仕様により、軽からDセグメントまでカバーする」。さらに、「地政学リスクの回避と将来のリサイクル性向上に向け、モーターの重希土類フリーに取り組み、また、降雪地域などで利便性の高い四駆システムe 4WDは、BEVとHEV共用として開発を進めており、こちらも大小2つの仕様を軽からDセグメントまでカバーする」という。

軽自動車への搭載を想定している次世代ハイブリッド。48Vシステムを搭載することで高性能と低燃費を両立

 さらに、「BEVとHEVで、基本設計や部品を共通化し、双方に効率よく展開するとともに、生産設備を共用することで、新たな投資を抑え、設計思想や基盤技術は世界で共有しながら、調達と生産は地域の市場規模や生産台数に合わせて最適化。次世代HEVは、車両セグメントに応じて電動化システムを最適化し、軽自動車には、燃費・動力性能・コストを高次元で両立する新型ハイブリッドを採用し、ICEに対してCO2を15%低減する」という。同時に、「小型車向けに燃料で発電し、モーターで走るシリーズHEVを準備しているが、さらにこのシリーズHEVをベースに外部充電機能を追加し、丁度いいサイズのバッテリーとして、ライトなレンジエクステンダーへ進化させていく」とし、これらを個別に開発するのではなく、中核となるプラットフォームや基本設計を共通基盤化で一括して企画し、ファミリーとして開発していくことを明言した。

新開発の直噴ターボエンジンは小型車から中型車までをカバー

 そして、「使うエネルギーそのものを減らす、内燃機関の徹底した高効率化が重要だ」と加藤氏。そこで最新のZ12E型エンジンで培った技術をベースに、「現在の熱効率40%領域をさらに拡大するとともに、その先の熱効率50に挑戦。冷却損失、排気損失、機械損失、ポンピング損失を一つずつ徹底的に改善し、性能と燃費を両立することで、究極の高効率エンジンを目指す」。さらに、インドをはじめとする成長市場に向けて、「高効率と力強い走りを両立する次世代の直噴ターボエンジン(DITC)の開発も進めている」とのことだった。

軽さを突き詰める

開発中の技術を紹介するためのカットモデル。軽量かつ安全性の高いボディ構造や機能集約型車載コンピューターシステムなどが紹介されている

 どれだけ効率の良い電動化技術や内燃機関技術を開発しても、車両そのものが重くなってしまっては、エネルギー消費は増えてしまう。その一方で、安全要求は年々厳しくなり、従来の考え方で安全性能を高めようとすると、車体骨格の強化によって、重量やコストが増加してしまう。そこでスズキは2030年以降を見据え、安全性能を高めながら、クルマを重くしない方法を追求。

 「車体、パワートレイン、電装、生産技術に加え、二輪、四輪、船外機の部門を越えて議論し、過去のモデルや先人の知恵にも学びながら、車両全体の最適解を考えた」と加藤氏。それが「衝突エネルギーのコントロール」だ。単純に車体を強くするのではなく、「エンジンと乗員の間に十分な変形スペースを確保する“衝突ストロークの最適化”によって衝撃をコントロールし、安全基準を満たしながら重量増を抑える」と話す。そのために、「エンジンを前方に配置するなど、各部門が互いに知恵を出し合い、構造やレイアウトを車両全体で最適化。さらに、材料や一つひとつの部品、仕様まで見直すことで、2030年に向けた100kgの軽量化に目途をつけた。将来のアイデアまで含め、最大120kgの軽量化も検討しており、強度が必要な部分は、変形の限界が高い高張力鋼板を使用して板厚が薄くてもより高い強度を確保」する。

ボルトの頭を小さくすることで機能性は損なわずに軽量化を目指す「軽量化ボルト」

 その軽量化ではもう一つ地道な努力もあった。それはボルトの見直しだ。「もともとは二輪車、船外機ですでに採用していた技術」だという。具体的には、「M8ボルトの頭を小さくすることで、約1gの軽量化を実現」。クルマは2,000本以上のボルトを使っているのでその成果は計り知れない。

死亡事故の低減に効果的な自動ブレーキを世界中の多くの車両で採用できるよう低コストながらも画質にこだわったADASユニット

 これら以外にもちょうどいいADASを普及価格帯を含むすべてのクルマに展開するほか、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みや、カーボンニュートラルのその先を見据えた、“カーボンネガティブ”の取り組みなどが説明された。

「CARBON CAPTURE CARRY」は荷台にCO2を集める機材を搭載。集めたCO2はたとえばビニールハウス農家などで消費する

 最後に加藤氏は、「スズキが一貫して大切にしているもの。それは、背伸びをした過剰な技術ではなく、お客様の暮らしや地域の実情に寄り添い、本質価値を極大化させながら地球の資源とエネルギーを極限まで小さく、効率よく使い切るという姿勢だ。私たちが掲げる“Right ×Light Mobile Tech」”とは、地球環境と資源の制約という大きな課題に対し、ものづくりの原点である“小・少・軽・短・美”の思想を磨き上げ、世界中のお客様に“丁度よく、本当に価値のある移動手段”を届け続けるという、私たちの強い決意そのもの」とコメントした。

文●内田俊一 写真●ユニット・コンパス

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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