車の最新技術
更新日:2026.08.03 / 掲載日:2026.08.03

シビックe:HEV RSに見るホンダらしさ【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 ホンダ・シビックに新たに「シビックe:HEV RS」が加わった。現行モデルは11代目で2021年に登場。まずはガソリン車から導入され、2022年にはハイブリッドのe:HEVとタイプR、2024年のマイナーチェンジではガソリン車のRSが追加された。

ホンダ シビック e:HEV RS

 RSはロードセーリングの略で、タイプRのようなピュアスポーツではなく、デイリーユースと走る楽しさを両立させたモデル。初代モデル以降、シビックでRSの名は採用されてこなかったがシビック誕生50周年で復活した。しかも、今どきは珍しい6MTが用意されたこともトピックスであり、若者を含め幅広い層のクルマ好きからも支持を得ている。

 そんなシビックRSの思想をe:HEVにも取り入れた背景には、いまや国内で販売されるホンダ車の6割がe:HEVであり今後も比率は増えていくことを踏まえた上での判断。

 多くの人が乗るパワートレーンにこそ楽しめる要素を持たせることで、ホンダ・ファンを増やしていく狙いだ。スポーティさを強調したe:HEVモデルといえば、昨年発売されたプレリュードが先行している。そこで初搭載された「S+シフト」が盛り込まれている。

ホンダ シビック e:HEV RS

 S+シフトは、シリーズ・ハイブリッド(エンジンが発電し、モーターで駆動)をベースとするe:HEVに、仮想の有段トランスミッションを構築した制御技術。加速時はエンジン回転数が上下しながらシフトアップ、減速時はシフトダウンしていく。

 2020年登場のフィットから採用されている「リニアシフトコントロール」も加速時は同じようにシフトアップしていくが、制御はまったく違う。リニアシフトコントロールは、ドライバーがアクセルを踏み込んだ瞬間に必要なトルクを発生できる最低のエンジン回転数を計算し、最高回転数との幅のなかで疑似的なギアレシオを決定する。

 それに対してS+シフトはあらかじめ決めた8速のギア比を持っている。状況に合わせて常に最適なギアレシオを生み出せるリニアシフトコントロールは、小気味のいい加速感を常に味わえるという利点がある一方で、固定ギアレシオのS+シフトは加速時だけではなく減速時にも有段トランスミッションらしいシフトダウンが表現できる。

 シリーズ・ハイブリッドは一定以上の加速をさせると、エンジン回転数が先行して加速が後からついてくるラバーバンドフィールが起こりがちであり、それをリニアな感覚にしたのがリニアシフトコントロール。一方のS+シフトは、e:HEVにDCTやATといった有段ギアの要素を取り入れて本格的なスポーティさを目指したものだ。

ホンダ シビック e:HEV RS

 プレリュードとは基本的には同様なものの、ドライブモードとの組み合わせによる制御が異なる。プレリュードは「SPORT」、「GT」、「ECON」、「INDIVIDUAL」とどのモードでもS+シフトになるが、シビックはS+シフトのボタンを押すと、どのモードであっても自動的に「SPORT」に切り替わる。幅広いシーンで有段トランスミッションを味わえるプレリュードに対して、シビックは熱い走りをするときだけと割り切っている。

 S+シフトでの走行中にもドライバーの操作によって制御がかわるスポーツアダプティブ制御が組み込まれている。アクセル開度や減速Gなどの変化によって判断されるのだが、例えばワインディングロードに入ってから、アクセルやブレーキをアグレッシブに操作し始めるとエンジン回転数が高めに保たれるようになる。シフトダウン時のブリッピングも刺激的だ。

ホンダ シビック e:HEV RS

 シャシー性能はエンジン車のRSと同等かそれ以上だった。サスペンションはデイリーユースを犠牲にしないギリギリの範囲まで引き締まっていて、運動性能の高さは圧倒的だ。

 フロントにデュアルアクシス・ストラットを採用するタイプRやプレリュードのほうがポテンシャルは高いが、一般的なマクファーソン・ストラットのRSでも、操舵に対する反応の良さや、少ないロールでコーナーをクリアしていく感覚はピュアスポーツに近い。乗り心地は、高速道路のジョイントなど大きな凹凸でも突き上げ感は少なくて十分に快適だが、路面によっては硬さを感じることがある。スタビライザーが強く効いているため左右で異なる凹凸が連続すると揺さぶられる感覚が強くなるのだ。フィットやヴェゼル、N-ONEにもRSは用意されているが、シビックのそれはハード寄りだと言える。

ホンダ シビック e:HEV RS

 やや硬さを感じることがある以外は、デイリーユースを快適にこなしてくれる。静粛性の高さは特筆モノと言ってよく、ロードノイズが目立つプレリュードなどに比べると大きな差がある。このタイミングで新開発されたタイヤ(グッドイヤー・イーグルF1 ASYNMETRIC6)は従来タイヤ(同ASYNMETRIC2)に対してロードノイズが8.8%軽減されているからだ。すでに登場から5年が経っているシビックでタイヤを新開発したのは燃費規制への対応で、転がり抵抗は20%低減されている。なお、このタイヤはエンジン車のRSにも採用される。

自動車ジャーナリストの石井昌道氏

 次期モデルはプラットフォームを始め、多くが刷新されてがらりと変わることが予想されているシビック。現行モデルは熟成に熟成を重ねた極めて完成度の高いモデルであり、なかでもe:HEV RSは今のホンダを象徴するモデとル言える。

この記事の画像を見る

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

この人の記事を読む

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ