車の最新技術
更新日:2026.01.19 / 掲載日:2026.01.19
SBWはパッケージ革命へのワンピース【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●レクサス
2023年3月に発売されたレクサスRZは、レクサスとして初めてBEV専用プラットフォームを採用したモデルだ。ハイブリッドカーとプラットフォームを共有していたUX300eとは異なり、RZはレクサスが電動化へ本腰を入れ始めたことを象徴するモデルでもあった。
そのRZで、もう一つ大きなトピックスとして注目されたのが、SBW(ステアバイワイヤシステム)の搭載を予定していたことだ。

ステアリングとタイヤが物理的に繋がってはおらず、操作は電気信号で伝えるSBWは、2014年に日産がスカイラインで実用化している。ただし、冗長性(故障しても機能を維持するためのバックアップ)を確保するために物理的なシャフトも残されていた。
一方でRZのSBWは、2系統のシステムによって冗長性を確保し、シャフトを持たない本格的なシステムとなっている。
BEVはエンジン車やハイブリッドカーに比べて構成部品が少なく、各ユニットのレイアウトの自由度が高い。SBWと組み合わせれば、クルマのパッケージそのものを変えてしまう可能性を秘めている。

RZ発売当初の2023年の試乗会では、SBWのプロトタイプに試乗する機会があった。広場にパイロンを並べたコースで走り始めると、思っている以上にクルマが曲がりパイロンに接触してしまう場面もあった。慣れてくると自在に操れるようになるものの、市販化にはまだ時間がかかりそうだ、という印象を持ったものだ。
あれから2年10ヶ月。 2025年12月のマイナーチェンジで、ついにSBW搭載車が追加された。以前と同じくパイロンを並べたコースで走ってみると、違和感は大幅に減少していた。ノーマルステアリングのモデルに比べればかなりクイックではあるものの、イメージ以上に曲がりすぎることはない。ノーマルステアリングのロック・トゥ・ロックは3回転、角度として1080度ということになるが、SBWは左右に200度ずつの計400度。プロトタイプの300度からあえて少しスローにして、細部の制御を徹底的に煮詰めたことで、自然な操舵感を実現したのだという。それでもまったく違和感がないとまでは言えないが、わずかな慣れで十分に乗りこなせるレベルだ。

とくに車庫入れなどの低速シーンでは恩恵が大きく、ステアリングを持ち替えることなくスムーズに操作ができる。SWBからノーマルステアリングに乗り換えると、操作量の多さが煩わしく感じられるほどだ。
短時間の慣熟走行を経て一般道に出たが、戸惑いはほとんどなかった。SBWの大きなメリットはキックバックがないことで、荒れた路面でも深いな振動がステアリングに伝わってこない。物理的に繋がっていないとステアリングフィールが希薄になるかと思いきや、好印象だった。フィードバックをしっかりと作り込めば、ノーマルステアリングよりも良くできるのだ。
高速道路では細かな修正舵が減り、無意識のうちにクルマがまっすぐ走る。これならロングドライブでの疲労低減も期待できそうだ。
ブレーキもバイワイヤ化の動きがあり、ブースターやマスターバックが不要になれば、パッケージの自由度はさらに高まる。SBWとの組み合わせで本格的なパッケージの革命が起きたとき、BEVのクルマづくりは次のフェーズに進むのだろう。今回のRZは、その入り口にたった存在なのだ。