車の最新技術
更新日:2024.09.23 / 掲載日:2024.09.23
新世代になる1シリーズ、X3の進化したポイントを解説【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●BMW
BMW 1シリーズとX3が相次いでフルモデルチェンジ。前者は2024年10月末頃、後者は2024年11月末頃に日本で発売される予定となっている。
片やFWDベースのコンパクトカー、こなたRWDベースのSUV(BMWはSAV=スポーツ・アクティビティ・ヴィークルと呼ぶ)、とジャンルは違うが両車には共通点が少なくない。どちらも初代モデルは2004年に発売され、20年を迎えた今回のモデルチェンジで4代目となる。比較的に新しい車種でありながら、今では販売台数はBMWのトップ3に数えられるほど人気で屋台骨となっている。そしてテクノロジー的にみれば、プラットフォームはキャリーオーバーでパワートレーンも全面刷新というほどではない。事前に、フルモデルチェンジではなくビッグマイナーチェンジではないかと予想されていたぐらいだ。しかしながら蓋をあけてみればれっきとしたフルモデルチェンジ。ちなみにコードネームは、1シリーズがF40からF70へ、X3がG01からG45へとなった。

1シリーズは、従来モデルではキドニーグリルが縦方向に長くとられ、フロントマスク全体が押しの強い表情となっていたが、新型はキドニーグリルの天地が狭くなり、切れ長のヘッドライトと合わせてシャープな印象になった。ワイド&ローにも見えるのでスポーティだとも言えるだろう。インテリアでは最新BMWの特徴でもあるカーブドディスプレイが目を惹く。オペレーションシステムも最新のOS9になっている。このOS9はX2に初搭載されたもので新たにアンドロイド・ベースとなり、サードパーティ製アプリが使えるようになったのが特徴。日本ではTverやNHKオンデマンドが使用可能になるそうだ。

注目なのはシャシー性能の向上でサスペンションを一新。ボディとシャシーの締結剛性を高め、前輪のキャスターを20%増加して直進安定性とステアリングフィールの改善が図られた。前後サスペンションとも多数のコンポーネントを開発し、フロントはトルクステアの影響を受けづらく、リアは横剛性を高めて高負荷でも正確なホイールガイドを確保。フロントのショックアブソーバーはストロークに応じて減衰力を調整する可変式とされ、リアはショックアブソーバーとスプリングの入力分離式でスペース効率が上がっている。スタビライザーのマウントはプリロードがかかるよう強化したという。

従来モデルでも採用されていたホイールスピンを直接制御するシステムも採用。トラクションコントロールがエンジン制御ユニットに統合されていて、DSC(ダイナミックスタビリティコントロール)のユニットを経由しないため、長い信号経路がなくなり、従来システムに比べると最大10倍の速度で制御・介入が行われる。

一方のX3は、全長は34mm、全幅は29mm拡大され、全高は25mm低くなったことで、よりスポーティなシルエットとなった。こちらもカーブドディスプレイおよびOS9を採用。FWD系はiDriveのダイヤル式コントローラーがなくなっているが、RWD系は残されている。OS9とダイヤル式コントローラーの組み合わせはX3が初。7シリーズから導入されたインタラクション・バー(触覚フィードバック付)も採用されている。

従来からX3は多彩なパワートレーンが用意され“パワーオブチョイス”を謳っているが、今回はガソリン、ディーゼル、PHEV(プラグインハイブリッド)を用意するとともに48Vマイルドハイブリッドの採用で全車電動化を果たした。ただし、BEVはラインアップされないのだが、これは2025年末から展開が始まる新たなBEVシリーズのノイエクラッセとの兼ね合いのようだ。
X3もまたシャシーに多くの手が入れられた。興味深いことに、FWD系とRWD系と異なりながらも改良のアプローチは近似している部分も少なくない。

まずボディとシャシーのマウントの剛性を向上。フロントのダブルジョイント・スプリング・ストラットとリアの5リンク・アクスルは大幅に変更しキャスターオフセットを19%増加して直進安定性を向上し、とくにロングドライブでの疲労軽減が図られた。スタビライザーのマウントが強化されロールの大幅な低減、正確なホイールガイドが図られた。トレッドはフロントが最大16mm、リアが最大45mm拡大され、ハンドリング向上を果たしたという。X3ではFWD系には用意されない電子制御可変のショックアブソーバーが用意されている。快適性と操縦安定性の両立レベルが高くなるのは言うまでもない。
トラクションコントロールの直接制御も採用されている。さらに、状況に応じて内輪と外輪への駆動トルク配分を変化させるパフォーマンスコントロール機能も有している。
よりスポーティなX3 M50 xDriveは電子制御のMスポーツディファレンシャルを採用しているので、俊敏性と安定性がさらに高められている。また、直列6気筒エンジンがマイルドハイブリッド化されたことで、システム総合の最高出力398PS、最大トルク580Nmを達成。これはBMW Mパフォーマンスモデルとしては新記録だという。
プラットフォームはキャリーオーバーながら数々のアップデートを受けた1シリーズとX3。フルモデルチェンジに相応しいパフォーマンスアップと言えるのだ。
