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更新日:2023.10.23 / 掲載日:2023.10.23
ホンダ・GM・クルーズがはじめる自動運転タクシーサービスを解説【石井昌道】

文●石井昌道 写真●ホンダ
ホンダが、2026年初頭から自動運転タクシーサービスを開始することを発表した。
このサービス提供は、GM(ゼネラルモーターズ)、クルーズ(クルーズホールディングスLLC)と3社で2024年前半に合弁会社を設立して行うもので、あえて交通環境が過酷な東京からはじめるという。
クルーズは2013年に創業した自動運転システムのスタートアップで、2016年にはGMが買収して電動車による自動運転タクシーサービスの実現へ向けて取り組みはじめた。2022年にはサンフランシスコで22時~5時半の夜間のみ、登録ユーザーのみという、限定的な一般向け自動運転タクシーサービスを、GMボルト(BEV)をベースとした自動運転車両のクルーズAVで開始。2023年8月10日はカリフォルニア州が24時間の営業の商用運行を承認している。

ホンダは2018年にGM、クルーズと無人ライドシェアサービス事業の協業を行うことで合意。2022年には、クルーズAVで本田技術研究所がある栃木県宇都宮市・芳賀町で技術実証を開始。同じくクルーズAVの地図製作車両で高精度地図を作成し、自動運転車両を走らせて日本の交通環境での検証や開発を行ってきた。
クルーズAVはGMボルトをベースとしているため、一般的な乗用車のカタチとなっていたが、日本の自動運転タクシーサービスで用いられるのは、新たに3社合同で開発したクルーズ・オリジンで自動運転モビリティサービス専用車両となる。
クルーズ・オリジンは運転席がなく、ステアリングやペダル類といった運転操作系もない。両開きのスライドドアで対面6人乗り。低床でアシストグリップを設けるなど乗降性も考えられている。

自動運転タクシーサービスは完全無人のサービスで、スマートフォン一つで配車から降車、決済まで完結する。2026年初頭から東京都心部で開始し、当初は数十台ではじめ、500台規模にまで拡大する予定となっている。
あえて交通難易度が高い東京ではじめるのは、ここで上手くいけば他の都市、地域への水平展開も可能だということを示している。クルーズはアメリカでも交通難易度の高いサンフランシスコではじめることで、スピーディな規模の拡大を果たしている。クルーズによるとすでに800万kmの走行実績があり、ユーザーレビューでは10万件以上の5つ星を獲得しているという。安全性への懸念もあるが、3社が共通して掲げているのは、事故ゼロ、CO2排出量ゼロ。またクルーズAVの100マイルあたりの走行では有人配車サービスに比べて衝突事故が54%少なかったそうで、人間のドライバーよりも事故率を下げるポテンシャルはすでにあるようだ。

自動運転タクシーサービスの車両は、自動運転レベル4に相当するが、日本では2023年4月から改正道路交通法で特定自動運行として解禁されている。特定自動走行は、特定条件下での完全自動運転であり、非常時には自動車を安全に停止できる機能を備えているもので、公安委員会の許可制となっている。福井県永平寺での実証実験は初の特定自動走行の許可を取得している。
東京のどこに拠点を置くのか、タクシー業界などとの連携はするのか、など具体的な内容については、これから決めていくとのこと。ただし、ホンダは2022年に帝都自動車交通、国際自動車といったタクシー会社と、自動運転モビリティサービスに向けて、関連法令やサービス設計、事業者間の役割、責任分担のあり方などを検討する基本合意書を締結をしている。
自動運転タクシーサービスなどのニーズはむしろ公共交通機関の利便性が低く、高齢化やドライバー不足などの課題を抱える地方だ。東京ではじめて事業状況を踏まえてサービスエリアを拡大していくとのことで、時間的なロードマップは示されていないが、安全かつスピーディに進めていくことが望まれる。