車の最新技術
更新日:2023.05.08 / 掲載日:2023.05.08
【プリウスPHEV】進化した最新プラグインハイブリッドシステムを解説する【石井昌道】

文●石井昌道 写真●トヨタ、石井昌道
以前にプロトタイプ試乗でも紹介したプリウスPHEVだが、改めて公道試乗するとともにパッケージングの進化などがわかりやすいカットモデルを見ることができた。

ハイブリッドカーのプリウスの駆動用バッテリーを大容量化し、外部から充電できるようにするプラグイン・ハイブリッドは、2代目プリウスで実験車両が開発され、3代目プリウスPHVとして市販化。当初は乗用車の平均的な一日あたりの走行距離は20km程度ということから、EV走行距離は26.4km(JC08モード)だった。バッテリー容量はハイブリッドのプリウスの約4倍の4.4kWh。車両価格はプリウスの217円~334万円に対して320円~420万円だった。
売れ行きはあまり芳しくはなかったようで、4代目プリウスのプラグイン・ハイブリッドは差別化のために独自のスタイリングを身に纏う。とくにリアウインドーが波打ったダブルバブルとなり、リアゲートはカーボンファイバー製だという気合いの入れよう。また、アクセルを強く踏み込むと発電用モーターも一時的に駆動に加わるデュアルモータードライブという凝ったシステムも導入。PHVの人気が上がらないのはEV走行距離の短さだと言われていたので、バッテリーは倍増の8.8kWhとして走行距離68.2km(JC08モード)まで伸長した。車両価格はプリウスの242万9018円~339万4145円に対して、326万1600円~422万2800円だった。
5代目プリウスのプラグイン・ハイブリッドはPHVではなくPHEVと名乗るようになり、さらなる進化を遂げている。

バッテリー容量は50%以上増の13.6kWhでEV走行距離は87km(WLTCモード)。バッテリーの体積や重量は先代並に抑えられているという。JC08モードよりも辛くでるWLTCモードなので、実質的にはやはり1.5倍程度になっているようだ。
実際にプラグイン・ハイブリッドのユーザーに聞くと、帰宅してコンセントを繋いで充電するのは意外と億劫なもので、それなりのEV走行距離がないと、次第に充電しなくなるらしい。電気がなくてもガソリンで走れてしまうプラグイン・ハイブリッドならではの悩ましさだが、EV走行距離は100kmレベルが望ましいようで、新型プリウスPHEVはギリ合格といったところか。
それにしても、バッテリー容量は3代目プリウスベースのPHVのじつに3倍。そのわりには車両価格はプリウスの275万円~392万円(275万円のXは法人向けゆえかホームページに載っていない)に対して460万円というのは抑え気味といったところだろうか。
先代のようにベースのプリウスに対してスタイリングやカーボンファイバー使用での差別化はないものの、走行性能の進化ぶりは凄まじい。
ベースのプリウス自体が走りにこだわっていて、先代までは1.8Lエンジンのみだったが、新型は2.0Lも用意。2.0Lのシステム出力は196PSと先代1.8Lの1.6倍で0-100km/h加速は7.5秒。さらに、PHEVでは223PSで6.7秒となっている。モーターの出力が強化されているのだ。
そのダッシュ力はプリウスという名が信じられないほどで、タイトコーナー立ち上がりでアクセルを踏みつけるとホイールスピンするほど。レスポンスもTHSIIとしては最上級の部類で、トヨタのハイブリッドカーは燃費はいいけれどつまらない、なんてイメージは完全に過去のものとなった。
プリウスではリアモーターが強化された4WDも用意され、それならホイールスピンとも無縁なのだが、PHEVはスペースがキッチキチでリアモーターを搭載できないのが惜しいところではある。

とはいえ、重量物の駆動用バッテリーを従来のラゲッジから後席下へ移設し低重心化を図ったゆえに4WD化ができないというのだから、それはそれで納得だ。
駆動用バッテリーの後方、ラゲッジ下には燃料タンクがあってリアモーターを搭載するスペースがないのはカットモデルからもわかる。走らせてみれば低重心化の恩恵がすぐさまわかり、ハンドリングも素晴らしくいいからだ。

そのほか、充電と給電のユニットの一体化やPCUのパワー半導体にSiC(シリコンカーバイド)を使うなど(プリウスでは未使用)、システム、パッケージともに造り込まれているプリウスPHEV。
絶対的には価格は安くはないものの、今度こそプラグイン・ハイブリッドが市民権を得るのではないかと思える出来映えなのだ。