車の最新技術
掲載日:2022.08.08 / 更新日:2022.08.08

アイドリングストップ進化論【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●トヨタ

 前回はメディア対抗ロードスター4時間耐久レースで、サーキットにおける燃費の話題に触れたが、今回は一般道での燃費、エコドライブについて振り返りたい。そのなかで、アイドリングストップについて触れてみたい。
 いまもガソリン価格は高止まりしたままだが、2008年にもレギュラーガソリンが180円/Lに達したことがあった。ちょうどその頃、財団法人・省エネルギーセンターの依頼でエコドライブのインストラクターを務めていて、一般道やテストコースで運転方法によって燃費はどのようにかわるかをテストしていた。
 そもそも自動車の燃費が注目され始めたのは1997年の京都議定書でCO2排出を抑える必要があるという意識が一般的になっていったあたり。奇しくも同年にはトヨタ・プリウスが誕生している。2001年に登場したホンダ・フィットは、当時としては画期的な23km/L(10・15モード)という燃費を謳い、これが販売上での武器にもなった。自動車ユーザーも購入のときには燃費性能を重要視するようになったのだ。だから、メーカーも燃費性能に力を入れ始め、さながら燃費レースのようになっていったのだった。
 一般道での燃費テストでは、アイドリングストップの有効性にも注目していた。様々な日本の都市部を走ったが、昼間の平均速度はおおむね20km/hで、なんと25分前後も信号や踏切で停止しているというのが平均データだった。割合にして40%以上。平均よりもちょっと混雑していれば半分の時間はクルマが動いていないということになる。
 停止中にもアイドリングで燃料を使い続けるのはいかにももったいないということで、アイドリングストップの効果を測ったのだが、トヨタ・ヴィッツの1.0Lエンジン車で0.1〜0.2cc/sec。エアコンをかけると0.1cc程度増量していた。0.2cc/secとして計算すると25分間の停止で300㏄を消費していることになる。1時間、20kmの都市部の走行全体で使用する燃料は当時のヴィッツで1.5L程度だから、1/5ほどにあたる。実際に、アイドリングストップをする場合としない場合で走行してみると、燃費は20%前後の差が出ることがわかった。取り分は想像以上に大きかったのだ。

ヴィッツ(2007年モデル)


 エンジンを始動する際には、少し多めに燃料を使うのだが、計測してみると約1cc増える。これはアイドリング5秒分だから、5秒以上の停止ではアイドリングストップしたほうが燃料消費は少なくなる。
 当時はヴィッツとダイハツ・ミラにアイドリングストップ・システムを搭載したモデルが用意されていたが、専用バッテリーを採用していたやや高価だった。ベース車+10数万円といったところだったが、差額の半額は補助金が用意されていた。
 アイドリングストップ・システム非搭載車でも、手動でアイドリングストップをすることで都市部なら20%程度の燃費改善が果たせるので推奨はしていたが、バッテリーやスターターの負担が心配だったので、30秒とか1分とか、長めに停止するであろうときに心がけるぐらいで十分という感じで表現していた。アイドリングストップをした後でも、数百メートルも走れば電力的に問題はないという確認などもしていたが、長期的な影響は測れなかった。その後はアイドリングストップ・システム搭載車が当たり前になっていったが、バッテリーは高価なディープサイクルバッテリーを採用。低価格帯のモデルでは少なくない負担にもなるので、考えものでもある。現行のトヨタ・ヤリスのエンジン車にはアイドリングストップ・システムが用意されていないのは、トータルでのコストやCO2排出量を考えてのことだ。
 とはいえ、今後は純粋なエンジン車は減少し、最低でもマイルドハイブリッドを搭載するモデルが増えるはず。そうすれば、アイドリングストップの負担も減らせるので、停止時はエンジンをとめるのは当たり前とうことにはなるだろう。BEVはエンジン車に比べると都市部でのエネルギー効率が高いことが秀逸でシティコミューター向きと言われるが、アイドリングそのものがないことも貢献している。そもそもアイドルとは何もしていない状態であり、できればないほうがない無駄という意味でもあるのだ。

石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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