車のニュース
更新日:2022.02.14 / 掲載日:2022.02.14

続・毎日BEVに乗るとどうなるか?【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

文●池田直渡 写真●日産

 1月7日の記事(毎日BEVに乗るとどうなるか?)で、マツダMX-30 EVモデルを使って、現在のインフラを前提に、毎日使うクルマとして、そして多くの人がそうであるように1台持ち生活の中で、BEVにどの程度の実用性があるのかを検証した。

35.5kWhと、搭載バッテリーが限られたMX-30では、この厳寒期にリスクを犯さない航続距離は170km程度。確かにアシが長いとは言い難い。しかしそれは、自分が毎日走行する距離に依拠する問題なので、自分の使い方で足りるならば本質的に問題ない。自宅充電の航続距離内で運用する使い方はBEVに向いているし、MX-30はかなり顕著にそれが想定されているクルマだ。航続距離が短いのはマツダも承知の上で、他の要素と航続距離のバランスを取ったバッテリー容量選択だ。

 従って、充電100%からのスタートを原則としており、他のBEV以上に自宅充電器が必須であることと、他にも、BEVの一般論でもあるが、急速充電での充電上限は事実上80%であることなど、オーナードライバーとしてEVを使う上での基本的な制約は当該記事に書いてあるので、是非確認して欲しい。この記事はその続編なので、前回の前提条件を頭にいれていないと、誤解を生むかも知れない。

 さて、この記事に対してSNS上で「それはMX-30 EVモデル固有の問題だ」と指摘するコメントが散見され、「日産リーフの60kWhモデルで検証すべき」という声があったので検証してみた。最初に断っておくが、バッテリー容量の増大は直接的には何の解決にもならない。なぜならば、前回、今回と取り上げているのは、イレギュラーな長距離を走るケースだからだ。「航続距離内でしか絶対に使わない」というユーザーには全く問題ない旨は先にも書いたし、前回の記事でも明確に記している。

 いざ航続距離を超えて使おうとすると、問題のポイントになるのは「1充電航続距離」である。そこで、バッテリー残量が20〜30%程度まで減った後に「車種を選ばず誰でも使える」「特定メーカー専用ではない」CHAdeMOの50kW急速充電器で、1充電(30分)当たり何キロ走行できるのかを実験した。

 実用上の問題を探りながら、10日かけて色々と試して、少しずつ問題点がわかっていったMX-30のケースと異なり、今回のリーフは最初から確認すべきポイントはハッキリしているので、3日しか借りていないが、よりデータがしっかり取れている。

 ひとつ断っておかねばならないのは、焦点となる1充電航続距離性能をMX-30とリーフで直接比較することは、本記事の目的とはしていない。バッテリー性能は、気温(厳密にはセルの温度)によって変わるという問題がある。MX-30のテスト時、目黒近辺の最低気温はマイナス1℃から0.6℃(MX-30は主に夜間テストした)。対するリーフはスタートした横浜の気温が18℃、主に走行と充電をした13日昼間から夕方の宇都宮、羽生、世田谷の気温は偶然にもメーターの掲示で同一の7℃だった。バッテリーの負担が違う上、同じ温度設定でもエアコンもより稼働することになる。夜間なのでヘッドライトの点灯でも負荷がかかるし、そもそも走ったコースも全然違う。

 今回は、横浜の日産本社をスタートして、藤沢を経由して目黒の事務所に移動。別の仕事のために1日リーフを放置。13日に東北自動車道で岩槻まで。別件の写真撮影を済ませて、距離を稼ぐために東北道を北上。バッテリー残量とにらめっこしながら走り、横浜をスタート時100%だったバッテリーが、走行距離220kmほどで残量20%に近づいたので、宇都宮インターで降りて、日産のディーラーに立ち寄った。高速充電器に到着時の走行距離は237km、バッテリー残量は18%だった。日産で50kW急速充電器を借りて、30分充電。53%まで回復した。

 60kWhのバッテリーを搭載するリーフの場合、余裕をみても、満充電で250km程度は走れることがわかった。後述する検証データを当てはめれば、ギリギリまで使う気なら物理的には270km辺りまで可能だ。ただし、そこで充電器が使えない事態が発生したらお終いなので、普通に考えれば何らかのトラブルによるリカバーの意味も含めて250km程度に留めておいた方が賢明だろう。

 さて、BEVの使い勝手が怪しくなるのは、例えば帰省で、東京から神戸まで約520kmの旅程を、高速を使って帰るような場合だ。時速100kmの巡航を想定して、MX-30の場合は、170kmほどで最初の充電分を使い切ると、あとは概ね30分に一度30分の充電が必要になる。ので、それはかなり厳しい話になるだろうという結論になったわけだ。

 ではリーフはどうだったのか。宇都宮で18%まで減った所が、このテストの実質的スタートだ。バッテリーは30分の急速充電で53%に回復した。

 帰路について再度高速に乗り、宇都宮での充電から60km走行した羽生PAで、バッテリー残量が32%になった。まだ走れるが、次に充電器のある場所を熟知しているわけではないので、怖じ気づいて、充電器の看板が出ていた羽生で充電した。

 ここでも30分の急速充電を行い、65%に回復。これで、東京世田谷の日産ディーラーまで残り86kmを走り、到着時のバッテリー残量は39%を表示していた。テストそのものはこれで終了だが、翌日車両返却のために、日産本社まで辿り着かないと嫌なので30分充電して75%まで回復した。

 ちなみにバッテリー10%あたりの走行距離は、単純な割り算で、横浜-宇都宮間が29km、宇都宮-羽生間が29km、羽生ー世田谷間が33kmで、標高差などの影響を受けるものの、ざっくり30km程度は走れることになる。

 では1充電で何ポイント入るかを見ると、充電後のパーセンテージから充電前のパーセンテージを引いた差分は、33ポイントから36ポイントとなる。ちなみに気温差約7度がどの程度バッテリーの充電性能に影響を与えるかはよくわからないので、同条件比較とは言えないが、参考までにMX-30ではこれが約25ポイントだった。

 さて、リーフの10%あたり走行距離は条件による多少のデコボコはあるにせよ。1充電の走行距離は概ね100kmと言うことになり、要するに時速100km巡航だと計算上、1時間に1回、30分の充電が必要になる。

 あとは、運用次第ではある。仮に東京神戸間だとすると、安全運転のためスタートから2時間のタイミング、200km地点で33%を残して一度目の休憩を取って充電。充電後の残量は70%弱となる。次はバッテリー残量30%に合わせて、1時間20分後330km地点で30分の休憩。その後は1時後に、430kmでもう一度充電すれば神戸まで辿り着けることになる。この休憩タイミングが多いか少ないかは各人が決めることだと思う。

 ただし、ひとつ付記しておかないといけないのは、この条件を満たすには、発着地はどちらもインターの側ということになる。発着地が遠ければ、充電はもう1回増える。それから当然距離的に都合の良い場所に高速充電器が無いと話にならない。

 あるいは、事故や渋滞を避けるためにルートを予定変更したり、「久しぶりに帰省したついでに母校の側の懐かしの定食屋に寄り道しよう」みたいなことを思いついても、その度に、距離が足りるか足りないかの判断が必要で、充電スケジュールが足かせになって、柔軟性が欠けるのはBEVの資質である。

 すでに述べた通り、化学反応で働くバッテリーの能力は、気温によって大きく変わる。7度という気温は、関東地方のこの時期としては高いので、本来の気温なら能力が下がるかもしれないが、そもそもこんな真冬の時期でさえなければ、もっとバッテリーに好条件な場合もあろう。その場合、1充電航続距離はもっと伸びるはずだ。逆に真夏の酷暑期には、厳冬期より悪くなるかもしれない。だから「真夏と真冬は乗らない」という人なら、BEVはおそらくもっと便利に使える。

 この辺は言い出すと、多岐に及ぶ。50kW充電器で行う30分充電の理論値は25kWh。仮に電費が7km/kWhだったら1充電で175km走れてしまうことになるが、当然そんなことは起きない。充電関係のプログラムでどの程度充電できるかが変わってくる。先に挙げたように気温(というか気温に影響を受けるセルの温度)や、バッテリーの充電残量だけでなく、厳密に言えば、クルマと充電器のプログラムの相性もあるだろう。

 BEVのひとつの特徴は、色々な条件がベストの場合とワーストの場合で、結果が大きく異なることだ。なので今回の実験はあくまでも「たまたまやってみたらこうだった」ということであり、これが全てではない。いつもこんなに厳しいことには絶対にならないし、同じくBEVを褒めちぎる人が良い条件設定で出した結果を、常に享受することもまた不可能である。リーフがデビューして10年が経過した今、そろそろそういう振れ幅の大きさがあることを丁寧に伝えた方が良いと思う。

 最後にくどいかもしれないが念のためにまとめる。BEVは自宅に普通充電器を完備して、満充電からスタートし、航続距離の中だけで使える人にはメリットが大きい。そういう理想形を外れると、急に不便なことが起きる。この記事に対しても「テスラをスーパーチャージャーで充電すれば、1充電航続距離の問題は解決」という人が出て来ることは予想されるが、スーパーチャージャーを使うにはスーパーチャージャーのある場所でインターを出て、設置場所まで行って充電しなければならない。

 それが苦でなければ良いが「できれば、高速をいちいち降りずにSAやPAの充電で済ませたい」となったら、テスラと言えども50kW充電器で充電しなければならなくなる。その時、1充電航続距離に問題はないと言えるかどうか? 理想的ケースを外れると大きく結果が変わるというのはこういうところでも効いてくると思う。

日産 リーフの中古車を探す
  • 支払総額:34.8万円
  • 車両本体価格:24.9万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2016後
  • 走行距離 : 6.6万km
  • 車検: 検7.12
  • 支払総額:39.5万円
  • 車両本体価格:25.8万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2014年
  • 走行距離 : 5.2万km
  • 車検: 車検整備付
  • 支払総額:47.3万円
  • 車両本体価格:34.9万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2017後
  • 走行距離 : 4.4万km
  • 車検: 車検整備付
  • 支払総額:119.4万円
  • 車両本体価格:105.5万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2020年
  • 走行距離 : 0.4万km
  • 車検: 車検整備付
  • 支払総額:190万円
  • 車両本体価格:181.5万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2021年
  • 走行距離 : 3.0万km
  • 車検: 検8.9
  • 支払総額:89.4万円
  • 車両本体価格:79万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2020年
  • 走行距離 : 12.0万km
  • 車検: 検9.3
  • 支払総額:101.4万円
  • 車両本体価格:89万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2018年
  • 走行距離 : 7.3万km
  • 車検: なし
  • 支払総額:30.8万円
  • 車両本体価格:19.9万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2011年
  • 走行距離 : 4.1万km
  • 車検: 検8.6
  • 支払総額:125万円
  • 車両本体価格:119.9万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2021年
  • 走行距離 : 5.5万km
  • 車検: 検8.9
  • 支払総額:422.3万円
  • 車両本体価格:415.1万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2025年
  • 走行距離 : 265km
  • 車検: 検10.1
  • 支払総額:138万円
  • 車両本体価格:129万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2021年
  • 走行距離 : 2.5万km
  • 車検: 検8.10
  • 支払総額:24.9万円
  • 車両本体価格:17.9万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2014年
  • 走行距離 : 4.9万km
  • 車検: 検9.8
  • 支払総額:145万円
  • 車両本体価格:134.8万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2019年
  • 走行距離 : 5.9万km
  • 車検: 車検整備付
  • 支払総額:158万円
  • 車両本体価格:147.8万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2019年
  • 走行距離 : 2.0万km
  • 車検: 車検整備付
  • 支払総額:149.8万円
  • 車両本体価格:134.8万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2020年
  • 走行距離 : 1.7万km
  • 車検: 車検整備付
  • 支払総額:33万円
  • 車両本体価格:23万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2015年
  • 走行距離 : 10.6万km
  • 車検: 検8.2
  • 支払総額:59.9万円
  • 車両本体価格:49.5万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2017年
  • 走行距離 : 0.5万km
  • 車検: 検8.7
  • 支払総額:39万円
  • 車両本体価格:32万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2017年
  • 走行距離 : 11.1万km
  • 車検: 検9.8
  • 支払総額:231.1万円
  • 車両本体価格:222.2万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2025年
  • 走行距離 : 7km
  • 車検: 車検整備付
  • 支払総額:141万円
  • 車両本体価格:125万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2018年
  • 走行距離 : 1.7万km
  • 車検: 車検整備付
  • 支払総額:169.9万円
  • 車両本体価格:154.9万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2020年
  • 走行距離 : 2.0万km
  • 車検: 検7.12
  • 支払総額:189.9万円
  • 車両本体価格:174.9万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2022年
  • 走行距離 : 3.0万km
  • 車検: 車検整備付
  • 支払総額:179.8万円
  • 車両本体価格:176.3万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2023年
  • 走行距離 : 1.5万km
  • 車検: 検8.3
  • 支払総額:219万円
  • 車両本体価格:207.7万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2020年
  • 走行距離 : 3.3万km
  • 車検: 車検整備付
  • 支払総額:139.9万円
  • 車両本体価格:124.9万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2020年
  • 走行距離 : 2.1万km
  • 車検: 車検整備付
  • 支払総額:32万円
  • 車両本体価格:26万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2016年
  • 走行距離 : 7.9万km
  • 車検: 検9.8
  • 支払総額:418.4万円
  • 車両本体価格:409.6万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2025年
  • 走行距離 : 0.2万km
  • 車検: 検10.1
  • 支払総額:142.6万円
  • 車両本体価格:128万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2021年
  • 走行距離 : 6.1万km
  • 車検: 車検整備付
  • 支払総額:89.8万円
  • 車両本体価格:81万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2018年
  • 走行距離 : 4.0万km
  • 車検: 検9.1
  • 支払総額:29.9万円
  • 車両本体価格:23.9万円
  • 車種 : リーフ
  • 年式 : 2015年
  • 走行距離 : 10.4万km
  • 車検: 検9.8
この記事の画像を見る

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

池田直渡(いけだ なおと)

ライタープロフィール

池田直渡(いけだ なおと)

1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

この人の記事を読む

1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ