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更新日:2024.12.07 / 掲載日:2024.12.07
今年のカー・オブ・ザ・イヤーを振り返って【九島辰也】

文●九島辰也 写真●日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会、ジープ、メルセデス・ベンツ
12月5日、日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025が発表されました。大賞はホンダ フリード、インポートカー・オブ・ザ・イヤーはMINI クーパーがそれぞれ受賞しました。全体で言うと、MINIが3位で、1位と2位が僅差でした。フリードのお相手はマツダ CX-80。ミニバンvs SUVなんて図式になったわけです。


日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考方法はまずは10台を決め、そこから大賞を絞り込みます。先日10ベストに残ったモデルをいっせいに集め、最終確認となる試乗会が行われました。場所は千葉県にある袖ヶ浦フォレストウェイ。ショートサーキットです。

もちろん、そこでは確認作業なので、長くは乗りません。一回(台)の試乗につきサーキット二周と制限されます。でも、これは効果的です。春先に乗って以来触れていないクルマもたまにありますから。それに10ベストに残ったモデルがすべて自分が選んだものとは限りませんからね。印象の薄かった車両が入ったりすると、ちょっと焦ります。
今回個人的に選考した10台で10ベストに残らなかったのは、メルセデス・ベンツEクラスとジープ・アベンジャーでした。アベンジャーは同じステランティスグループのフィアット600eやプジョーe-208、それと来年あたり日本でも姿を現すであろうアルファロメオ・ジュニアとBEV専用プラットフォームを共有します。ですから、オリジナリティの面で百歩譲って10台から漏れてしまうのもわからなくありませんが、Eクラスが選ばれなかったのには少し驚きました。Eクラスはすべてのセダンのベンチマークなんですけどね。あまり高く評価されなかったようです。ガソリンはもちろんディーゼルエンジンとの組み合わせ(ともにマイルドハイブリッド)は良い仕上がりだと思ったんですが。


それはともかく、私の投票を記すると、第一位MINI、第二位ランクル250、第三位スズキ・フロンクスとなりました。一位に10点、二位に4点、三位に2点の配分となります。
MINIはそもそもその生い立ちから敬意を持っているクルマなので、気持ち的には早くから決まっていました。新型の出来の良さはこれまで以上で、進化の幅に驚かされます。BEVもそう。床下にバッテリーを積んでいるとは思えない軽快さです。それにインターフェイスのこともきちんとロジカルに考え抜かれている。クルマ進化の一つの方向性を打ち出していると思いました。

選考が難しかったのは二位です。実は前述した袖ヶ浦での10ベスト試乗会までランクル250をそれほど高く評価していませんでした。私自身がよりヘビーデューティーなランクル70派ですから、250は軟弱に見えてしょうがありません。
ですが、さらに遡ることその一週間前に街中と高速道路を走り、その後袖ヶ浦で動かして考えがガラリ変わりました。結論から言うと「このクルマは正真正銘のランクルなんだ」と感じたんです。
要するに、見た目はモダンでプラドを現代的な解釈で生まれ変わらせたように見えますが、中身は良くも悪くもランクルそのもの。ロールは深く高速でのコーナリングを得意としません。ですが、発進時のトルクの出方やフレームのガッチリ感はオフローダーのDNAを感じさせます。
この辺の味付けは個人的に大好きで、世界中のオフロードコースを走り回っていた昔を思い出しました。この“タフガイ”なフィーリングがたまりませんね。春頃、猿投アドベンチャーフィールドで走らせた時のことも蘇ります。モーグルやヒルクライムもいい走りでした。今はランクル70よりも興味が強くなってしまったかも……。

三位に選んだスズキ・フロンクスもいいクルマです。特筆ポイントは走り。軽快なハンドリングと身のこなし、それとアクセルに反応するパワーの出方はさすがスズキ!と言いたくなります。スイフトスポーツを持つ会社ですからね。このサイズのこの走りは得意領域でしょう。
しかもそれが200万円台中盤から手に入るのは驚異的。昨今自動車価格が高いと嘆かれますが、それを鑑みるとこのプライスは異次元かと。インドで生産されているとかなにやら言っても、すごいことはすごいんです。
なんて感じの今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーでした。私を含め選考委員の方々はだいぶ悩まれたと思われます。でもみなさんクルマを考察するプロですからね。結果腹落ちする順位になったのではないでしょうか。