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更新日:2023.05.09 / 掲載日:2023.03.01

【アウディ Q4 e-tron】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 欧州や中国ではクルマを取り巻く環境や政府の補助金政策なども追い風となり、近年、EV(電気自動車)のセールスが急進。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も多いのでは?

 とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか見分けるのが難しい。

 本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。

 今回テストするモデルは、アウディの「Q4 e-tron」。世界市場で積極的なEV化を推進するアウディの最新モデルは、果たしてどんな実力の持ち主なのだろうか?

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アウディ Q4 e-tronのプロフィール

Q4 e-tron

 2026年以降、世界市場に導入するニューモデルはEVのみとする方針を明らかにしているアウディ。前年比44.3%増となる11万8196台のEVセールスを記録した2022年のグローバル市場での販売データは、EVシフトを推進するアウディにとってポジティブなニュースといえるだろう。

 なかでも、アウディのEVに対するニーズがかつてないほど高まったのが北米マーケットで、前年比47.3%増となる1万6177台のEVセールスを記録した。そうした躍進の原動力となったひとつの要因が、新たに北米マーケット投入されたプレミアムコンパクトSUV「Q4 e-tron」と「Q4スポーツバック e-tron」だったという。

 存在感あるフォルムを採用したピュアSUVのQ4 e-tronと、スタイリッシュなクーペSUVのQ4スポーツバック e-tronという2種類のボディを設定するQ4 e-tronシリーズは、2022年1月に日本で発表。同年秋にデリバリーがスタートした。

 プラットフォームには、VW(フォルクスワーゲン)グループが開発したEV専用のアーキテクチャー“MEB(モジュラー エレクトリックドライブ マトリックス)”を採用。バッテリーの搭載方法や駆動用モーターのトルクを余すところなくトラクションに変換する後輪駆動レイアウトなど、同じくMEBを採用するVW「ID.4」とは多くの共通点がある。

 現在、日本で展開される「Q4 40 e-tron」、「Q4スポーツバック 40 e-tron」が搭載するバッテリーの容量は82kWh(実容量77kWh)。最高出力150kW(204ps)、最大トルク310Nmのモーターとの組み合わせで、1充電当たり最長594km(WLTCモード)の航続距離をマークする。ちなみに0-100km/h加速は8.5秒(欧州仕様)でクリアする。

 アウディ ジャパンは2022年、EVを展開するディーラー網“アウディe-tron店”に150kWの急速充電器を52基設置したが、充電ネットワークをさらに強化すべく、2023年はアウディe-tron店にすでに設置済みの50~90kWの急速充電器50基を150kW急速充電器へとシフトするという。

 また、アウディ、VW、ポルシェの3ブランドによる独自の充電ネットワーク“PCA(プレミアム チャージング アライアンス)”を進展させ、合計約210拠点、222基の90~150kW急速充電器を段階的に使用可能にするほか、ドイツのニュルンベルクやスイスのチューリッヒに設置されているアウディの都市型充電コンセプト“アウディ チャージング ハブ”を、東京にも設置する計画を発表済みだ。

 EVのハードウェアだけでなく、普及と利便性向上を見据えたインフラ整備にも着手しているアウディ。ここ日本でどのような花を咲かせるのか進展に注目したい。

■グレード構成&価格

・「Q4 40 e-tron」(620万円)

・「Q4 40 e-tron アドバンスド」(683万円)

・「Q4 40 e-tron Sライン」(710万円)

・「Q4スポーツバック 40 e-tron アドバンスド」(709万円)

・「Q4スポーツバック 40 e-tron Sライン」(737万円)

■電費データ

◎交流電力量消費率

・WLTCモード:145Wh/km

 >>>市街地モード:127Wh/km

 >>>郊外モード:137Wh/km

 >>>高速道路モード:160Wh/km

◎一充電走行距離

・WLTCモード:594km

【高速道路】速度や気温の影響は感じられるが、リアルといえるデータが取得できた

 東名高速の東京・厚木JCT間は以前にも増して交通量が増えてきていて、朝6:00に東京ICをスタートしても、渋滞とは言わないまでも20~30km/h程度のノロノロ運転になることが多く、電費が良く出てしまう傾向にあったので、ここ数回は朝5:30スタートに変更。撮影の都合などを考慮するとこれ以上早い時間はたいへんに非効率になるのでギリギリだが、その30分で交通量および流れる速度はだいぶ違う。ド早朝なのが信じられないぐらいの交通量はあるものの、70~80km/h程度まで速度が下がることが短時間発生するぐらいであとは制限速度付近で走行できて、その1はほぼリアルと思われる電費がとれた。

制限速度100km/h区間のその1は4.6km/kWh、その4は5.8km/kWh。

制限速度70km/kWh区間のその2は5.4km/kWh、その3は5.4km/kWh。

 その1は前述の通り順調なペースで走行できたが、その4は交通量が多くペースが落ちて、順調に走れた制限速度70km/h区間よりもいい電費になってしまった。また、その1は外気温が1~2℃だったので不利だったことは否めない。この日は6:40頃が日の出で快晴。その3を走った9時ぐらいには8℃まで外気温が上昇した。外気温の変化による影響も少なくなかったと思われる。

【ワインディング】車重2000kg級SUVとして標準的な数値を記録

 いつもの箱根ターンパイクが凍結のため走れず、並行しているがこちらはサマータイヤでも通行可能な箱根新道を通ることにした。以前にもこういうことはあったのだが、スタート・ゴール地点の高低差はほぼ同じ、走行距離や走行ペースは違うものの、意外と電費的には似通っている。ただし、箱根ターンパイクは交通量が少ないためペースが安定しているのに対して、箱根新道は交通量が多い上にコーナーがタイトなので大型車などがいると一気にペースダウンするなど、バラツキが多いことは否めない。

 そんななかで計測した電費は登りが1.9km/kWh。これまでのテストのデータと照らし合わせると、車両重量2000kg前後のモデルとして標準的といえるものだ。下りでは、電費計で計算すると回生で1.9kWhほど取り戻せたことになる。これも標準的だ。多少はコースやペースが違っても、標高差が同じならば電費は似通うものだということも見て取れるテストとなった。

いつもテストする箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)が利用できなかったため、並走する箱根新道を使ってテストを実施した

【一般道】コンディションにも助けられたのかすぐれた電費を記録。

 

 ゼロ回転から最大トルクが発生し、たいていは1ギアで済むモーター駆動のモデルは、基本的には速度が低いほうが電費が良く、高くなればなるほど悪化していく。だから高速道路よりも一般道のほうが電費が良いことが多いが、一般道は信号でのストップ&ゴーがあり交通量によっては悪くなることもある。バラツキは高速道路や郊外路よりも多いのだ。これまでのテストのデータを見ても、一般道が意外と伸びないということは少なくない。

 そんななか、今回は70km/h制限区間の自動車専用道よりもいい電費の6.0km/kWhを記録。特別に交通量が多かったわけではないが、外気温が10℃まであがったうえに、陽射しは強く、車内温度は自然と温まってヒーターの負荷が少なかったようだ。

東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した

【充電】車両の充電効率はよかった。だが一方で、高速道路の充電設備には改良を期待

海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

 スタート時はバッテリー残量95%、走行可能距離352km。そこから139km走って復路・海老名サービスエリアに到着したときにはバッテリー残量53%、走行可能距離226kmだった。

 出力40kWの急速充電器を30分間使用して18.0kWhが充電され、バッテリー残量73%、走行可能距離309kmまで回復。出力は平均で36kWと効率は良く、充電開始から終了まで安定していた。

 バッテリー容量が大きな最新のEVに対して40kWの急速充電器では少々物足りないのはたしかで、順調に30分充電してもで走行可能距離が83kmしか増えない。運転によるドライバーの疲労の蓄積よりも、電力の減りのほうがペースが早い。せめて100km超え、できれば150km≒2時間の高速道路走行分ぐらいは30分で充電できて欲しいところだ。

前席とのゆとりはかなりあり、足元もフラット

Q4 e-tronはどんなEVだった?

テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏

 同日にテストしたフォルクスワーゲンID.4プロとスペックはほとんど同一で、パフォーマンスもかわりないが、回生の強度を任意でかえられるステアリングのパドルスイッチが備わるなどドライバーズカー的な要素はQ4 e-tronのほうが強い。Sラインはスポーツサスペンションで20インチタイヤを装着するため、乗り心地はやや硬め。EVは低重心なことがシャシー性能に有利に働くが、絶対的には重く、背高でもあるので、操縦安定性とのバランスをとろうとすれば硬い方向にいくのは仕方がないところ。硬さを感じるのは、路面がけっこう荒れているところでのことなので、トータルではそれほど不快ではないだろう。それ以外ではアウディらしい上質感と頼もしい走行フィールがある。

Q4 40 e-tron Sライン

■全長×全幅×全高:4590×1865×1615mm

■ホイールベース:2765mm

■車両重量:2100kg

■バッテリー総電力量:82.0kWh(実容量77kWh)

■定格出力:70kW

■最高出力:150kW(204ps)

■最大トルク:310Nm(31.6kgm)

■サスペンション前/後:ストラット/マルチリンク

■ブレーキ前/後:Vディスク/ドラム

■タイヤ前/後:235/50R20/255/45R20

取材車オプション

ボディカラー(ナバーラブルーM)、Sラインインテリアプラスパッケージ(パーシャルレザー、ドアアームレストアーティフィシャルレザー、3分割可倒式シート リアセンターアームレスト付)

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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