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更新日:2022.03.16 / 掲載日:2022.01.21
どうして新型レンジローバーがSUVのなかでも特別扱いされるのか【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ランドローバー
レンジローバーがフルモデルチェンジしました。5世代目です。ランドローバーを代表するモデルですから注目は高いと思われます。個人的にも大好きなモデルで、これまでもたくさん取材してきました。歴代モデルの試乗はもちろん、本国の生産ラインやイースナーやソリハルにあるオフロードのテストコースにも足を運んでいます。英国式のオフローダーとはいったいどんなものか、昔は興味津々でしたから。
アメリカンSUVとは違うキャラクター性を持つイギリスのSUV
“英国式”と表現したのは、“アメリカ式”はお手のものだったからです。アメリカで行われるジープのイベント、「ジープジャンボリー」や「ジープサファリ」などに参加していましたし、90年代は何台もジープを所有していました。聖地ルビコントレイルで行われるジープジャンボリーはすごいです。山岳コースはわずか16キロですが、およそ二日間かかりますから。コースといっても道はありませんし。ランチボックスはヘリコプターが運んできます。
レンジローバーを有するランドローバーですが、そもそもこのブランドもジープの影響のもと生まれました。アメリカ軍がヨーロッパに残していったウィリスMBやフォードGPWが基本にあります。それまでヨーロッパにはこの手のクルマはありませんでしたから、無ければつくるしかありませんよね。で、そこに目をつけたのがローバー社の役員だったわけです。ランドローバーの歴代モデルを1948年型のシリーズ1〜3と乗りましたが、ジープに似たところはたくさんありました。
レンジローバーは1970年に生まれました。それまでのオフローダーをもう少し乗りやすいものに仕上げるという目的です。初期モデルは3ドア。今思うとそれほど大きくはありませんし、ラグジュアリーといったイメージもそれほどありません。時として、「レンジローバーは初代からアルミボディで造られるほどラグジュアリーである」、みたいなことが語られますが、それは間違いです。当時の生産ラインは元航空機の工場だったため、鉄板ではなくアルミの加工機器が置かれていたのがその要因です。まぁ、そのくらいの都市伝説が生まれるほどレンジローバーは注目されているんですね。
「電動化」、「3列シート仕様」、「新プラットフォーム」など話題の多い新型レンジローバー

閑話休題。さて、新型ですが、トピックスはたくさんあります。エクステリアデザインもそうですし、電動化となるプラグインハイブリッドモデルの追加や、3列シートのロングホイールベースなどもそうです。まったく新しいアーキテクチャーを採用しているのもそう。MLA-Flexと呼ばれるのがそれで、ねじれ剛性は従来型よりなんと50%も向上しています。しかもあらゆるパワートレインに対応しているのがミソ。内燃機関、プラグインハイブリッド(PHEV)、さらには2024年にリリースされる完全な電気自動車(BEV)にも採用されます。まさに時代に見合った対応力ですね。
また、ホイールベースも長くしたり短くしたりフレキシブルに対応しています。なので、このアーキテクチャーでもっとコンパクトなモデルがつくれます。これ以降各モデルがフルモデルチェンジするたびにMLA-Flexが使われるのは明白です。となると、BEVの広がりも早いかも。
パワーソースは3リッター直6ディーゼルターボと同排気量のガソリンエンジンにモーターを組み合わせたプラグインイブリッド、4.4リッターV8ツインターボからスタートします。プラグインハイブリッドには2種類の出力があります。魅力的なのはやはりV8エンジンの存在です。これまでの5リッターからダウンサイジングされていますが、最高出力は530psと上がっています。電動化が叫ばれていますが、ガソリンエイジの我々にはたまりません。

といった概要ですが、やはり注目なのはこのエクステリアデザインですよね。同ブランドのチーフクリエイティブオフィサーであるデザイナーのジェリー・マクガバンの作品です。ウインドウとボディ接合部のこだわりはすごいです。ほぼフラットというか、シームレスです。それに全体的に彼らしさを強く感じさせます。二枚目ですよね。とてもクールです。モダンデザインが好きで自宅のファニチャーまでデザインしてしまう彼の個性が光ります。とにかく、シンプルながらかっこよさを追求すると言ったところでしょう。ちなみに、スーツはいつもビスポーク。サヴィルローのヘンリープールの顧客だとか。う〜ん、羨ましい〜。
ということで、あとは試乗の機会を待つばかり。できれば本国に渡って英国式のオフロードコースをトライしたいですね。そんな日が来るのを楽しみにしています。