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更新日:2022.03.16 / 掲載日:2022.01.28
70周年を迎えるコルベットが抱える期待と不安【九島辰也】
文●九島辰也 写真●シボレー
8世代目となる現行コルベットが高い評価を得ています。コルベット史上最高のスペックというだけあり、そのパフォーマンスは世のスポーツカー好きを魅了しました。なんたって最高出力は502ps、最大トルクは637Nmを発揮し、最高速度は時速312キロに達します。もはやレーシングカーですね。公道を走っていいんでしょうか?なんて思っちゃいます。
でも実際は乗り心地が良く扱いやすいのがミソ。少しばかり腕に自信のある方でしたら、かなり楽しく走れます。もちろん、ドライブモードの切り替えでキャラ変しますが、アメリカ車らしく万人がステアリングを握れる仕様になっていると思います。
そんなコルベットが来年70周年を迎えます。1953年リリースのC1デビューからもうそんなに月日が経ったんですね。驚きです。物心ついた時はC3が現役でしたから、あれから5世代進化したことになります。
世界的にコメモラティブなモデルは1963年のスプリットウィンドウでしょう。なんたって一年しかつくられなかったのだから希少です。デトロイトにあるGMのミュージアムを訪れた時もかなり目立つところに展示してありました。シルバーのボディが一際輝いていたのを記憶しています。GMが所有するすべてのブランドの中でもコルベットは特別なのです。
それを知らしめるのはケンタッキー州ボーリンググリーンにあるコルベットミュージアム。よく考えてください。コルベットはブランド名でもないし一つの会社でもありません。シボレーミュージアムならまだしもコルベットだけなのですからすごい。フェラーリミュージアムはあっても250GTミュージアムとか365BBミュージアムってないですよね。そういうことです。
そんなことができるのは、そもそもこのミュージアムはオーナーズクラブが運営しているから。つまり、切符切りのオジサンも清掃スタッフもみんなボランティアなんです。もちろん、メーカーからのサポートはあると聞きますが、それを超えたファンの熱い情熱から生まれました。
なぜ、そんな話をするかというと、シボレーがコルベット70周年に向けての記念モデル、70thアニバーサリーエディションをアメリカで発表したからです。
専用のボディカラーをまとったそれは、スタンダードモデルとZ06に用意されます。シートやステアリング、ブレーキキャリパーなどは特別で、70周年記念エンブレムが各所に付くようです。後に価値がつきそうですね。
でも、個人的に興味を持ったのはZ06。みなさん、これを「ゼットゼロロク」なんて呼ばないでください。日本でもちゃんと「ジーオーシックス」と発音してください。歴史的にも意味のあるネーミングですから。で、その中身がすごい。5.5リッターV8の出力は670ps。なんとノンターボの自然吸気でそれを発揮するんです。資料を読むと、アルミ製ピストンやらチタン製コンロッドやらお祭り騒ぎです。しかもツインカム。思わず、ロータスが手がけたC4 ZR-1を思い出しました。LT1ユニットを。好みはLT4を積んだグランスポーツでしたけど。あのブルーのボディの左フェンダーに入った赤いラインがたまりません。
いずれにせよ、最強のコルベットがすぐそこに控えているのは確かです。2000年のル・マン24時間レース参戦以降、コルベットは本気でレーシーな道を歩んできました。それにしても疑問が残ります。ミッドシップになったコルベットを熱狂的なコルベットファンたちはどう見ているんでしょう。やはり、コルベットは、リトラクタブルヘッドライト、ロングノーズ+ショートデッキのコークボトルボディ、大排気量V8 OHV自然吸気、リア横置きリーフスプリングが基本であってほしい気がします。それが安全規制からリトラクタブルヘッドライトが廃止され、パフォーマンス向上のためミッドシップになり、と変化(進化?)したのだからオールドファンは気が気でないのでは。いずれモーターを積むことだって想像できますし……。
それはともかく、アメリカ最古のスポーツカーが70周年を迎えさらに元気になることは喜ばしいことです。この先、80年、90年、そして100年と続いてほしいですね。それでも好きなのは63年から67年までのC2と96年のC4グランクーペなのは変わりませんが。前後アイアンバンパーのC3もかな。なんて感じで、これ以上コルベットに関して多くを語ると変人と思われそうなので、今回はこのくらいにしたいと思います。