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更新日:2021.06.25 / 掲載日:2021.06.02
ホンダ「新型ヴェゼル」公道試乗レポート
4月22日、ついに正式デビューした新型ヴェゼル。上級感を高めたエクステリア&インテリアの設えも魅力たっぷりだが、やはり一番気になるのは先代から一新された最新パワートレーンによる走りだ。5月18日に開催された公道試乗会の模様を最速レポート!
先代から大幅に進化!懐の深い走りが秀逸

先代同様にハードウェア構成ではフィットの姉妹車と言ってもいいが、先代は車格や動的質感、さらに適応用途面でもSUVとして十分とは言い難かった。しかし、新型は違っていた。エンジン/電動モーターともに最大トルクはフィットのe:HEVと共通だが、どちらも高回転域側にトルクバンドを拡大し、最高出力を向上させている。ちなみにタイヤサイズを含めた総減速比はフィットとの車重比にほぼ等しく、最高出力は高速域の加速性能に余裕をもたらす。
登坂や高速の加速は力強い。試乗車は最も車重がある仕様だが、重さを感じさせない。そこに電動踏み込み直後のトルク立ち上げのよさである。速度や加速度のコントロールがいい。過渡特性を穏やかにしているため、切れ味よりも力強さを意識させる味付けであり、狙い通りの加減速ができる。力強くて優しさも感じさせる。
ちょっと意外だったのはエンジン稼働。頻繁に稼働し、高回転域の使用頻度も高い。最高出力向上のエンジン特性からすれば高回転を使うのも納得できるが、感覚的にはエンジンでの発電をメインにし、駆動バッテリーからの供給をサブに据えた制御に思えた。
中高速巡航ではエンジン直動時もエンジン発電時も回転低く静かに稼働。ドライブフィールの力感を重視した特性なのだが、加速時は正味の加速性能優先の制御。もっともムチを入れて加速させる状況がそうそうあるわけでもなく、観光ドライブモードなら大半は穏やか稼働で力感たっぷりである。
また、エンジンが頑張れば電動感が低下するが、回して速いはパラレル式あるいは内燃機高性能車的でもあり、とくに違和感は覚えない。従来型から乗り換えても馴染みやすく、それでいて日常域から長距離用途まで1ランク以上上の動力性能を実感できるはずだ。
対してガソリン車は生の1.5Lのトルクでさすがに高負荷加速は厳しい。アクセルを踏み増しに対して比較的早いタイミングでダウンシフトを行い、多少元気に加速させる4000回転を超えることも多々。回しているわりに速度のノリは程々である。
ところが巡航や緩加速ではスペック以上の力感。一般走行レベルでも非力感を覚えた従来車と異なる部分。滑らかアクセルコントロールではエンジン回転数を抑えてスロットル大開きで悠々走らせるのは燃費と実用性能両立のセオリーでもあり、好感の持てるドライブフィール。車重の嵩む4WDや積載物や悪路など負荷が大きくなる用途は余裕がないにしても、タウン&ツーリング向けのレジャーワゴンとして使うなら悪くない動力性能である。
新型のもうひとつの美点がフットワークだ。とくにハンドリングはSUVのハンデを一切感じさせない。アジャイルハンドリングアシストを採用した他のホンダ車同様にタイトターンから高速コーナリングまでハンドリング特性の振れ幅が少なく、どこでも弱アンダーステア。ロール等の挙動のオーバーシュートや揺れ返しが少なく、しなやかでいて収束性も良好。必要最小限の回頭で的確なラインコントロール性を発揮する。
硬さ頼りで安定やコントロール性を高めていないので乗り心地も良好。減衰の利きとしっかりした車軸抑制のせいか上位グレードの18インチホイール仕様車では段差乗り越えでは突き上げを意識したが、多少のレベルであり、むしろ軸周りの揺動感の少なさが走りの質感を高めている。また、トルク変動の少なさや収束感はe:HEVのZが優れていたが、パワートレーンの違いよりも駆動方式の差が大きい。全体から見れば多少の違いだが、相対的には4WD車のほうが腰の据わった印象だ。
試乗前からかなり期待値が大きかったのだが、ほぼ予想通り。価格訴求の普及仕様を予想していたガソリン車も意外と練り込まれた出来で、これならもう少しバリエーションを増やしてもと思えたほど。もちろん、本命のe:HEVは従来車から動力性能やフットワークを大きく向上させて、アウトドア趣味や長駆レジャー用途での適性もアップ。PLaYが販売策でFF限定になっているのが惜しまれるが、新型になってもヴェゼルはコンパクトSUV市場の中心的存在であることを確認した。
【ハイブリッドモデル】モーターとエンジンのいいとこ取り!シームレスな走りはとても上質

HONDA ヴェゼル e:HEV Z(4WD)
車両本体価格:311万8500円
●ボディカラー:プレミアムサンライトホワイト・パール(有料色6万500円高)
■主要諸元 (ヴェゼル e:HEV Z <4WD>)
●全長×全幅×全高(mm): 4330×1790×1590 ●ホイールベース(mm):2610 ●最低地上高(mm):180 ●車両重量(kg):1450 ●最小回転半径(m):5.5 ●パワーユニット:1.5L直列4気筒DOHCガソリンエンジン(106PS/13.0kg・m)+モーター(96kW/253N・m) ●動力用主電池:リチウムイオン電池(60個) ●トランスミッション:電気式無段変速機(エンジン直動機構付き2モーター内蔵変速比固定式) ●ブレーキ:フロント/ベンチレーテッドディスク、リヤ/ディスク ●サスペンション:フロント/マクファーソン式、リヤ/ド・ディオン式 ●スタビライザー:フロント/トーション・バー式、リヤ/トーション・バー式 ●燃料:ガソリン<レギュラー> ●タンク容量(L):40 ●燃料消費率WLTCモード:22.0km/L ●タイヤ:225/50R18 ※各数値はオプション等非装着のベース車両
SUVモデル用に最適化されたハイブリッドパワートレーン

現行フィットのe:HEVをベースにしているが、重量の嵩むSUVということもあり、エンジンを高出力化したほか、ギヤレシオもローレシオ化して軽快な走りを実現。先代ヴェゼルでは荷室下にあったPCUをエンジンルームに移動することで、より多くの駆動用バッテリーを搭載すること(48個→60個)に成功している。
エンジンで発電してモーターを駆動するシリーズ式ハイブリッドが基本だが、高速巡航時の効率に優れるエンジン直動機構も備えているのが特徴。電動とエンジンの長所を合わせ持ったシステムだ。
ハイブリッドの4WDモデルは、リヤに小型モーターを配置するのではなく、プロペラシャフトで前後を繋ぐ機械式のリアルタイムAWDを先代に引き続き採用。電動パワートレーンの進化に伴い、リヤデフの応答性やトルク容量などを向上させている。
【ガソリンモデル】タウン&ツーリング用途なら実用性十分のパワートレーン

HONDA ヴェゼル G(FF)
車両本体価格:227万9200円
●ボディカラー:メテオロイドグレー・メタリック(有料色3万8500円高)
■主要諸元 (ヴェゼル G <FF>)
●全長×全幅×全高(mm): 4330×1790×1580 ●ホイールベース(mm):2610 ●最低地上高(mm):185 ●車両重量(kg):1250 ●最小回転半径(m):5.3 ●パワーユニット:1.5L直列4気筒DOHCガソリンエンジン(118PS/14.5kg・m) ●トランスミッション:無段変速オートマチック(CVT) ●ブレーキ:フロント/ベンチレーテッドディスク、リヤ/ディスク ●サスペンション:フロント/マクファーソン式、リヤ/車軸式 ●スタビライザー:フロント/トーション・バー式、リヤ/― ●燃料:ガソリン<レギュラー> ●タンク容量(L):40 ●燃料消費率WLTCモード:17.0km/L ●タイヤ:215/60R16 ※各数値はオプション等非装着のベース車両
過不足なく実利を追求したガソリンモデル。これぞコストパフォーマー!

実践力に対するコスパこそがセールスポイント。例えば燃料供給は従来の直噴からポート噴射に変更。吸排気制御はアトキンソンサイクルではなく、標準制御を採用。最高出力/最大トルク共に従来車から低下しているが、ドライバビリティと実用性能を重視した設計だ。CVTはフィットから採用されたオイルポンプ抵抗の低減を図った高効率の新型を採用。タイヤ外径も含めた総減速比は従来車とほぼ同じ。性能やハードウェアの機能で目立った部分はないのだが、価格は同様装備のe:HEV車よりも40万円近く安いのが何よりの魅力。
新型ヴェゼルの細部をチェック
エクステリア



ノーズからルーフまで流れるように描かれる、スリーク&ロングキャビンと名付けられたクーペライクなプロポーションが印象的。グラスエリアを高めの位置に取られていることも新型の特徴の一つ。
ボディ同色の横格子グリルにフルLEDヘッドライトを装備。水平基調を強く主張するフロントマスクで力強さを巧みに表現。バンパーには近距離の障害物を検知するソナーセンサーが4個ずつ配置されている。
フロントガラス上方には、横方向の視野を多く広げて認識精度も高めたフロントワイドビューカメラを配置。カメラヒーター機能を備えることで曇り対策も施されている。
5本のツインスポークが与えられた18インチアルミホイールを標準装備。タイヤサイズはコンパクトSUVとしてはやや大きめにも思える225/50R18が前後に配置される。
インテリア

ダッシュまわりやドアトリムなど内装の仕立てはプレミアムコンパクトらしい仕上がり。Zに標準のブラックコンビシートの質感も申し分ない。スペース効率に優れるキャビン設計も引き続き踏襲。低いフロア高や頭上空間、膝回りに十分なゆとりをもたせるリヤシートなど、ユーザーから好評だった使い勝手の良さも継承されている。
ステアリングは3本スポークタイプ。左スポークにはカーAVやハンズフリー、右スポークにはACCなどの運転支援機能のコントロールスイッチが配置されている。
フロアコンソールまわりは機能性重視のレイアウト。シフトレバーの前にはスマホ充電に便利なワイヤレス充電器が、後ろには電子パーキングやドライブモードの切り替えスイッチが配置されている。
e:HEV車のスピードメーターの左側には大型液晶ディスプレイを配置。写真のエネルギーメーターのほか、車両が発信する様々な情報を分かりやすく表示するインフォメーション機能も備わっている。
通信連携機能とインターナビ機能を持つHonda CONNECTディスプレーはETC2.0車載器とセットでメーカーOPで用意される。モニターサイズは9インチワイドとなる。
ゴルフバッグなどの長尺物や大きなスーツケース、自転車積載などを考慮して設計した荷室は、縦横の広さに加えて低い床面も魅力。リヤシートアレンジも多彩で6:4分割ダイブダウン格納やチップアップ機構も備えている。
新型ヴェゼルおすすめBEST BUY
e:HEVがベスト!しかしガソリンモデルも侮れない
装備や内外装を簡略化したようなあからさまな廉価グレードを設定していないことが、新型ヴェゼルの特徴の一つ。最もベーシックなG(ガソリン)でも、ホンダセンシングはもちろん、車格相応の利便装備やアルミホイールまでも標準装着されている。ちょっとしたレジャーもこなせる便利な実用SUVを探しているならば、Gの4WD車でまったく問題がない。動力性能に余裕がないことを除けば、高い次元で多くのユーザーのニーズに応えてくれる実力を持つ。
予算にもう少し余裕があるならば、Gと同等装備でパワートレーンがハイブリッドとなるe:HEV Xの4WD車も悪くない選択肢。動力性能が大きく向上するため、さらに快適さが高まる。Xの1つ上となるZは、左右独立温度制御エアコンや雨滴感知ワイパーなどが、最上級グレードのPLaYはパノラマルーフが専用装備として装着される。PLaYは他グレードではOPのナビも標準装着されるため、4WDにこだわらなければコスパも相応に優秀だ。ただヴェゼルの車格からすれば、プレミアムあるいは嗜好面の付加価値を求めるモデルといえよう。先代からのヴェゼルの実用車としての強みを求めるならば、GあるいはXを基準にOP価格も含めて、費用対効果を見定めるのがベストといえるだろう。
●オススメグレード e:HEV X(4WD)

上級装備は省かれるが、走行機能や安全装備は上位グレードと同水準。ヴェゼルが持つ実用車キャラを最も効率的に楽しむことができるグレードだ。