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更新日:2019.12.23 / 掲載日:2019.12.23
DAIHATSU ロッキー&TOYOTA ライズ 魅力完全詳報
DAIHATSU ロッキー

今年の東京モーターショーで話題を集めたダイハツ・ロッキーが正式に発売された。ショーの現場では極めて高い評判を集めていただけに、コンパクトSUVを狙っているユーザーならばz気になるはずだ。公道試乗&徹底チェックでその実力を丸裸にしてみたい。
最新設計思想が注がれた新世代SUVとして復活
ダイハツというと軽自動車メーカーのイメージが強いが、SUVの歴史はかなり古く、1974年には本格オフローダーのタフトを発売している。ロッキーは過去に発売していたSUVのモデルネームでもあり、初代モデルはコンパクトなサイズこそ新型と同様だが、こちらはそのタフトの系譜を受け継ぐ、本格オフローダーだった。
令和の世に復活を遂げた新型ロッキー(ライズ)の前身となるモデルは、オフローダーの初代ロッキーではなく、2016年に販売が終了したビーゴ(ラッシュ)だろう。ただビーゴはラダーフレームこそ採用していなかったが、縦置FRベースの車体にリヤリジッドアクスルが組み合わされるなど、佳き時代のダイハツSUVを感じさせてくれるモデルだった。しかし、新型はコンセプトもハード面もまったくの新規で造られた、レジャー&ファミリー用途に最適化したコンパクトSUVである。
エンジンはトールのターボ車と同じ1L直3ターボを搭載している。そのことを考えるとトールよりもSUVの重量ハンデの分だけ動力性能は低くなってしまうと思ってしまうかもしれないが、新技術や新機能が数多く採用されたことにより完全に克服しているのだ。
まずSUVであることがハンデにならない。ほぼ同じ車格のボディと同じエンジンを搭載するトールよりも車両重量が100kg以上軽いのだ。しかも試乗した印象はエンジンのスペック以上である。
1KR-VET型と呼ばれる1L直3ターボユニットは、低回転からの力強いトルクを発生する特性が持ち味のエンジンだが、ロッキーはトールに比べると、スタート時や踏み増しした時のダッシュがやたらいい。この踏み込みダッシュは意図的に味付けされたものだが、いずれにしてもパワフルな印象を強く感じる。さらにCVTの変速フィールも、エンジン回転数が車速と無関係に上下するような、CVT特有のラバーバンド感覚はまったく感じないのだ。


適度に締め込まれたフットワークもポイントのひとつ。ストレート路では程よい硬さで安定感があり、コーナーなど荷重がかかる場面では適度に力を逃がしていく、バランスの良さが光る。
1L直3ターボは98PS/14.3kg・mを発揮。スペックの数字はトール系と同様だが、乗った印象はかなり違う。エンジン自身の改良もさることながらD-CVTの効果の高さを実感させてくれる。
ロッキーのデビューに合わせて、トヨタからも姉妹車「ライズ」が発売される。主な違いはフロントマスクやホイールの意匠程度で、バランスの良い走りの味はこちらでも楽しめる。
アイポイントが高いこともあって運転席からの視界はかなりいい。ボディの4隅の見切りも良好だ。ステアリング操舵にも癖はなく、バランスの良い足回りセッティングも万人に好まれるだろう。
程よい硬さのサスチューンは オンロードで真価を発揮
このあたりの巧みな変速制御は、ダイハツ車が得意としている部分であるが、より幅広い変速制御が可能となったD-CVTが導入されたことで磨きが掛かっている。試乗時には1名から4名乗車まで制御の違いを確認してみたが、急加速や登坂加速以外では、乗車人数の多寡による力感やドライバビリティの変化はかなり少なかった。
さらに意外なのはフットワーク面。予想以上にしっかりとした硬さを感じる乗り味に仕上げられているのだ。操舵初期こそぐらりとロールを開始する。中立で頑張りすぎないのはダイハツらしい味付けだが、すぐに粘りと抑えのストローク制御が効いてきて、大きな横Gがかかるようなコーナリングでもロール量は少なめだ。急激な負荷変動での揺れ返しも少なく、見た目によらずワインディングでも粘りある特性を示してくれる。荒れた路面などでは車軸周りがコトコトと揺動するが、滑らかな初期ストロークや硬めのサスチューンを持つわりには、穏やかな乗り心地に感じる。高速や山岳路での操安性を考慮したセッテイングにもかかわらず、良質の乗り味を維持できることは高く評価できる。
直進を保ちやすい操舵感も印象的。中立から少し舵を入れるとすぐに操保フィールが高まってくる。バネを捻るような感触はちょっと古臭く思えるが、操舵力の変化で直進のブレや路面のうねりを捉えやすく、結果的に直進維持を容易にする。また、この操舵感はLKAの補正操舵とも相性がいい。「早めに少し」という感じで最小限しかアシストしない状況もあるが、運転感覚を過剰に損なわない程よい操作支援は好印象だ。ちなみにこれらの走行特性は、16インチ車や17インチ車、FF車や4WD車でも大きく変わらない。
サスの形式からしても本格的なオフロードをこなすようなモデルではないが、決してオンロードのみに特化したSUVでもない。4名乗車で車両重量が重くなったとしても、気になるほどまでは動力性能も落ちこまない。さらにゆとりのキャビンスペースも備わっている。高速長距離を考慮したサスチューンを持つなど、タウンユース向けのコンパクトサイズながら、レジャー用途向けSUVとしてもかなりの実力を備えている一台と感じられた。
DAIHATSU ロッキー


力強さを主眼に置いてデザインされたエクステリアデザイン。大径タイヤと大型アーチフェンダーやキリリと切れ上がったヘッドライト、ヘキサゴングリルなど、アクティブ感の溢れるスタイリングに仕上げられている。
撮影車のXにはダンロップ・エナセーブの195/65R16が装着されていた(Gとプレミアムは195/60R17)。16インチは5スポーク、17インチは異形6スポークとホイール意匠は異なる。
ロッキーにはシリーズ最上位グレードとしてプレミアムが設定される。
Xに比べると、2トーンカラーが標準装備となり、ドアハンドルのメッキ化や切削仕様の17インチホイールも装着される。
主要諸元(ロッキー X 2WD) ●全長×全幅×全高(mm):3995×1695×1620 ●ホイールベース(mm):2525 ●車両重量(kg):970 ●パワーユニット:996cc直3DOHCターボ(98PS/14.3kg・m) ●トランスミッション:D-CVT ●WLTCモード総合燃費:18.6km/L ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/リーディング・トレーリング(R) ●タイヤ:195/65R16
TOYOTA ライズ
ボディパネルやガラス、ライト類はロッキーと共通だが、フロントマスクとホイールの仕様が異なる。共にRAV4顔だがグリルが下方向に広がるライズの方がアグレッシブな顔つきだ。
主要諸元(ライズ Z 2WD) ●全長×全幅×全高(mm):3995×1695×1620 ●ホイールベース(mm):2525 ●車両重量(kg):980 ●パワーユニット:996cc直3DOHCターボ(98PS/14.3kg・m) ●トランスミッション:D-CVT ●WLTCモード総合燃費:18.6km/L ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/リーディング・トレーリング(R) ●タイヤ:195/60R17
RAV4譲りのデザインを 小型車サイズで再現
凸凹を効かせたデザインと全長を短めにとったプロポーション。フロント周りこそ差別化が図られているが、ロッキーもライズも極端なスペシャリティ志向に振らず、アウトドアテイストを効かせたSUV感とスモールクラスならではの親しみやすさを融合させたスタイルを採用している。RAV4の弟分というのがしっくりとくる。
全長は3995mm、全幅は1695mmと5ナンバーサイズを堅持し、さらに最小回転半径も4.9~5.0mと取り回し性能も優秀。狭い路地が多い都市部でも扱いやすいサイズだ。SUVの要点の一つでもある最低地上高は185mm。短いオーバーハングと切り上がったバンパー形状によりアプローチアングルは20°、デパーチャアングルは32°を確保する。本格的なオフロードを走れる設計ではないが、オンロード専用ともいえない、相応の悪路踏破性も期待できそう。
ロッキーとライズは基本のボディパネルやランプ類は共通仕様になるが、フロントマスクが異なり、その違いはRAV4の標準系とアドベンチャーの関係にも似ている。ロッキーはトヨタクロカン系の流れを汲むアドベンチャー顔、ライズはトヨタらしい乗用車系の雰囲気を強めたデザインだ。