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更新日:2020.04.03 / 掲載日:2020.04.03

日産雪上試乗会レポート

この記事の目次

きめ細かい電動駆動ならではの安定の走り!

Nissan Intelligent Snow Drive

LEAF e+ G<2WD> リーフのeペダルは、滑りやすい路面においてモーターとブレーキを併用することで、四輪でより安定した減速が可能になっている。●文:川島 茂夫 ●写真:日産自動車株式会社

リーフやe-POWER車など100%モーター駆動車やスカイラインやフェアレディZ、GT-Rなどイッキ乗りできる雪上試乗会が1月下旬に北海道モータースポーツパーク札幌で開催された。暖冬による雪不足ということだったが、よりリアルなシチュエーションで、雪上でのきめ細かい挙動を確かめることができた。

SERENA e-POWER<2WD>

e-POWERのワンペダルドライブはモーターによる回生のみになるが、ミニバンボディとの組み合わせでも安心して雪道を走行できる。

  • リーフやe-POWERなどの100%モーター駆動車は、アクセル操作に対し1/10,000秒単位でトルク制御をすることで、さまざまな路面状況でスムーズな発進と加速を実現する。

  • 軽自動車から電気自動車に100%モーター駆動のミニバンにスポーツカー、そして1BOXまで実に多彩な車種の雪上での実力を確かめることができた。

スムーズな発進と加速を見せる 100%モーター駆動車



 昨年は強風。時として地吹雪でホワイトアウト状態。今年は気温高く降雪量少なく、路面コンディションは至って不安定。無風低温かつ綺麗な圧雪路で走らせれば印象もよくなるのだが、ニッサンにとっては2年連続の不運となった。

 ただ、考えてみればそういう不安定な条件下でこそ走りの信頼性が試される。圧雪でも氷上でもバーンコンディションが安定していれば事前に予想して走りを組み立てられるし、大きく踏み外すようなこともない。補正の必要はあっても手の内でコントロールできる。ところが前方の様子が分からず、路面は引き締まっているのかザクザクなのかも踏んでから分かるというような状況だと、現場合わせと言うかその場凌ぎと言うか、精神的にも肉体的にもストレスが蓄積されやすい。

 ESCまたは横滑り防止装置と総称されるが、スリップにより姿勢や走行ラインを大きく乱さない、または正常な走行状態に回復させるシステム。ニッサンはVDCの名称で展開。もちろん、装着が義務化されているので、全車標準装着である。

 降雨時も含めて、余程の事がなければ一般路でESCのお世話になることもないが、氷雪上路では話が別。頻繁とは言わないが、雪や氷でスリップするのも珍しくない。そんな状況でもESCがあればスピンやコースアウトの危険は大きく低下する。

 ここまではESC装着車すべてに共通するが、VDCは一味違うと思わせるのがシステムの介入の仕方。安定を取り戻すだけでなく、どんな経緯で戻るかが、VDCの注目のポイントである。

 まずはリーフを筆頭にした実用系FF車。FFは元々滑りやすい路面での安定性が高く、いきなりスピンという状況には陥りにくい。半面、前輪を滑らせてコースアウトの可能性が高い。アンダーステアを抑制してラインを引き戻すのもVDCの大切な役割のひとつだ。

 試乗印象では軽量モデルほど上手に前後輪のグリップバランスをコントロールしている。デイズは前輪を引き込むのと同時に後輪をちょっと滑らせて、いい感じに操舵どおりのラインに戻ってくる。

 車重が重く、重心高も高いセレナe-POWERは前輪のグリップ回復優先の印象も強くなるが、回り込みと同時に前後のグリップバランスが回復する感覚はよく似ている。また、オーバーパワーでの前輪の滑り出しの抑制の素早さとその後のトラクションの掛け方が絶妙なのは完全電動駆動の賜だ。

 ならば電気自動車のリーフはさぞかし、と期待値は高まるわけだ。

NOTE e-POWER<4WD>

2018年7月に追加されたノートe-POWERの4WD車。モーターアシスト方式の4WDを採用している。

急勾配路において4WDのONとOFFでテスト。OFFの場合はアクセルを踏むとタイヤが空転してしまうが、ONの場合は坂の途中からでもしっかりと路面を掴んで登り切った。

  • FFのe-POWER車に後輪用モーターを追加。この後輪モーターもe-POWERのバッテリーで駆動する。4WD/2WDの切り替えスイッチを用意し、2WD走行を可能にして燃費向上に寄与する。

  • アクセルON時に2WDからスタートする機械式の4WDに対し、e-POWERモーターアシスト4WDは後輪が最初から駆動。前輪がスリップした時は瞬時に出力を上げて安定した発進を実現。

登録車レベルのシャシー性能を磨き込んでいるデイズ。パワーステアリングのブラシレスモーターの適切チューニングや流体エンジンマウントの採用で雪道などの低μ路でも安心して走行できる性能を確保している。

急勾配でも何事も無く走り出す e-POWER・4WD



 ノートe-POWERと車重を比べるとリーフは標準系でも300kgも重い。バッテリー容量を増加したe+系は500kg近い差になる。車体サイズの違いは一回り程度。ふつうに走らせていると車重を意識しない。この「ふつう」はVDCの助けも含めてである。前輪滑りだしも含めて、かなりパワーも速度も絞り込む。ただし、VDCがラインと速度を的確に制御しているので、グリップ限界で走らせていても運転そのものはふつう。神経質なコントロールや特殊なドラテクを用いる必要もない。

 だったらVDCオフでもう少し、と欲をかいてはならない。VDCをオフでは1.7tに迫る車重に翻弄される。滑り始めれば止まらない。加減速や舵の入れ抜き等々をしても、速度が落ちてこなければどうにもならない。VDCオンの走行は過保護でも何でもなく、限界性能を引き出していたのだ。

 なお、同じく実用系のノートではe-POWERの4WD仕様もチェック。発進時に前輪のグリップ力に応じて後輪を駆動する、いわゆる生活四駆だが、後輪駆動系は独立した電動系なのでツインモーター4WDでもある。

 スラロームでもいい感じにリヤを出すような操縦性を示したが、やはり持ち味は圧雪坂道発進。2段勾配の急勾配側で試したが、何事もなく走り出す。的確に駆動力が制御された結果だ。試しに2WDを選択してみると、ホイールスピンをきっかけに下がり始めてしまう。知らないところでシステム大活躍なのだ。

 一方、「ふつう」の感覚がちょっと違うFR系スポーツのほうはGT-R、スカイライン400R、フェアレディZ。ちょっと深いスリップアングルでラインに乗せるのも「ふつう」の範疇。VDCオンでもテールスライドまで持ち込むのは難しくなく、スポーツドライビングのセオリーどおりに反応してくれる。で、VDCオフにするとさらに深いスリップアングルまで持ち込めるが、アクセル操作もステア操作も神経質かつ忙しい。

 付け加えるなら、VDCと二人三脚で走らせている時のほうが、効率良くラインを維持できる。「最速」少し手前を危なげなくコントロールできた。

 一通り試乗して思ったのは、ニッサンのVDCは単に安全確保のため最後の砦としてだけでなく、ハンドリングの一部なのでは、ということ。慣れ親しんだ運転感覚や好ましい運転感覚で楽しく雪上を走れるのも、それぞれのクルマの走りのキャラに合ったVDC制御のお陰。それはドライバーのスキルアップにも重要である。

SKYLINE 400R<2WD>

アクセル操作やハンドル操作の信号を「ドライバーの意図」として制御に取り込み、ブレーキとエンジントルクの制御を行うことで、ドライバーの意に沿った走りと滑らかな制御感を両立。走行モードでSPORT+※を選ぶとドライバーとVDCシステム間のコントロール領域を広げ、さらなるスポーツドライビングが可能に。

※インテリジェントダイナミックサスペンション装着車に設定。400Rは標準装備。

GT-R Premium edition<4WD>

重量バランスに優れるトランスアクスル4WDと、さまざまなセンサー情報を元に最適な駆動力を制御するATTESA E-TSを採用するGT-R。雪上ではVDCがONであれば、エンジン出力を絞りながら安定性の高い走りを披露する。

FAIRLADY Z NISMO<2WD>

6速MTのNISMOを試乗。シンクロレブコントールの採用でシフトダウン時に低μ路でも車両挙動を安定させる。2018年モデルから高効率クラッチを採用し、半クラッチ時の操作性を向上。雪上でもスムーズな発進を実現。

NV350 CARAVAN Transporter <4WD>

大荷重に耐えるタフなサスは粗野に思えて頼もしくもあり、FRベースの4WDとVDCはドライビングのアレンジ能力も高い。

提供元:月刊自家用車

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グーネットマガジン編集部

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