カーライフ
更新日:2020.04.23 / 掲載日:2018.08.06

日々のお財布を直撃する「燃費」はやっぱり気になる【燃費まるごと。】後半

燃費テストのイメージ画像

テスターは日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員でもある岡本幸一郎さん。

大人気のハイブリッドコンパクトカー3台を比較 実走燃費をテスト!

多くのハイブリッド車で賑わっている自動車市場。各社とも燃費性能に磨きをかけるなか、実際の燃費はどのくらいなのか? は気になるところ。そんな声に応えるべく、人気のコンパクトカー3台で実走燃費テストを敢行した!

比較したのはこの3台!

ホンダ フィットハイブリッドの画像

ホンダ フィットハイブリッド(JC08モード燃費:31.8km/L)

HYBRID・S Honda SENSING
●全長×全幅×全高:3,990×1,695×1,525mm●ホイールベース:2,530mm ●エンジン種類:水冷直列4気筒●総排気量:1,496cc●最大出力:97kW(132ps)/6,600rpm●最大トルク:155N(15.8kg・m)/4,600rpm●モーター最高出力:22kW(29.5ps)●モーター最大トルク:160N(16.3kg・m)●価格:220.536万円

トヨタ アクアの画像

トヨタ アクア(JC08モード燃費:34.4km/L)

Gソフトレザーセレクション
●全長×全幅×全高:4,050×1,695×1,455mm●ホイールベース:2,550mm ●エンジン種類:直列4気筒●総排気量:1,496cc●最大出力:54kW(74ps)/4,800rpm●最大トルク:111N(11.3kg・m)/3,600-4,400rpm●モーター最高出力:45kW(61ps)●モーター最大トルク:169N(17.2kg・m)●価格:205.2万円

スズキ スイフトハイブリッドの画像

スズキ スイフトハイブリッド(JC08モード燃費:32.0km/L)

HYBRID SL
●全長×全幅×全高:3,840×1,695×1,500mm●ホイールベース:2,450mm●エンジン種類:水冷4サイクル直列4気筒●総排気量:1,242cc●最大出力:67kW(91ps)/6,000rpm ●最大トルク:118N(12.0kg・m)/4,400rpm●モーター最高出力:10kW(13.6ps)●モーター最大トルク:30N(3.1kg・m)●価格:194.94万円

【高速道路編】確実に進化を遂げている各車の魅力をピックアップ

高速道路の走行イメージ画像

高速道路では一定の速度で走行するため滑らかな加速が燃費向上のポイントとなる。周囲の交通状況をしっかりと観察し、ゆとりある運転を心掛けよう。

高速道路ではフィットの走りの良さが光る!
 ハイブリッド車は、バッテリーやモーターを積んで重くなっているため、高速道路を巡行するとそれらが重りとなり、燃費はそれほど伸びないというのが通説となっている。果たして、今回テストする3台の場合はどうだろうか?
 首都高速から東京湾アクアラインを通って房総半島にわたり、高速道路での燃費を計測した。テスト条件としてはエコモードを選択し、少しだけ燃費を意識した走り方とした。天候は快晴で外気温が30度を超える中、エアコンを25度のオートに設定し、オーディオはOFF、制限速度(走行した区間は60から100km/h)を目安に走行した。
 まずフィットについて、i-DCDはエネルギーフローを見ると、本当に目まぐるしく制御することに驚かされる。ほぼ平坦に見える道でも、すきあらば回生しようという感じ。
巡航していると、バッテリーは6目盛りあるうちの4目盛り目をメドにキープする感じで、モーターのほうが効率がよさそうな状況では積極的にエンジンを止める。
 ところで、出て間もない初期のECONモードというのは、あたかもエコを強調するかのごとく加速があまりに鈍い上、夏場はエアコンがなかなか冷えずに扱いづらいものだったが、今ではそういったこともなくなり十分に使える。
 また、ACC(アダプティブクルーズコントロール)の制御の仕方も、速度維持が上手くてストレスを感じない。レーンキープアシストも、クルマが軽くて重心が低いこともあり、とても自然な感じに仕上がっている。先進安全運転支援装置の設定が充実しているのもフィットの強みだ。
 加えてフィットは、改良を重ねて走りがずいぶん上質になった。静粛性、乗り心地や直進安定性は、今回の3台の中でベストだと感じた。
 上質さといえばアクアも、従来は少し安っぽい印象が強かったが、マイナーチェンジを経て、大幅に洗練された印象だ。見た目からしてもリフレッシュされ、車格が上がったように見える。乗り味も以前は乗り心地がかなり硬かったが、別のクルマかと思うほど快適になった。
 速度があがるとラバーバンドフィールが気になるといわれがちなトヨタのハイブリッドシステムだが、こうして普通に走る分にはトルクもあり、クラッチが嵌合して駆動力を伝達する他の2台と違って、ギクシャクする印象もまったくなく、とても乗りやすくて印象は悪くない。
 一方、スイフトはハイブリッド感があまりなく、加速力も控えめだが、車両重量の軽さを感じるところは良い。独自のマイルドなシステムながら、条件が整えばそれなりにEV走行もするところは燃費にも好影響だ。
 ただし、今回の3台の中では現行型になってから最も日が浅く、これから成熟していくのもあり、クルマの基本的な部分で多少の粗さが見受けられた。タイヤの発するロードノイズが大きいため、それが車内でこもって結構気になった。走りも乗り心地がやや硬く、路面の悪いところでは跳ねるような感覚があり、直進安定性もビシッとしない。そのあたりは今後の改良に期待したい。
 結果はご覧のとおり。唯一アクアが30km/Lの大台を超えた。

  • 高速道路の走行イメージ画像

    今回はエコ運転を支援するモード(ホンダ=ECON・アクア&スイフト=エコモード)を使用しているため、加速がゆったりとしている。高速ではこの機能がポイントになる。

  • 高速道路の走行イメージ画像

    高速走行での燃費を稼ぐ手段としてACC(アダプティブクルーズコントロール)を使うのも有効な手段。車種によっては無理に追いつこうとして燃費が悪くなることも。

icon テスト結果【高速道路編】

車名  実燃費  達成率※
フィット  25.9km/L  81.44%
アクア  31.5km/L  91.56%
スイフト  27.7km/L  86.56%
※達成率は各車カタログのJC08モード燃費数値(フィット:31.8km/L、アクア:34.4km/L、スイフト:32.0km/L)を元に算出。

高速道路では各車とも達成率80%を超えたが、唯一アクアだけが90%を超えるという結果に。フィットに関してはスポーツグレードということもあり、多少燃費が落ちたが大健闘。スイフトも86%とアクアに次ぐ優秀な結果となった。

新しいカタログ燃費表示『WLTCモード』って何?

 これまで国ごとに異なった燃費公称値の測定基準を世界的に統一することを目的とした、新しい燃費計測の試験サイクルおよび方法。
想定される走行条件に応じて、「Low:市街地モード」、「Medium:郊外路モード」、「High:高速道路モード」、「Extra-High※」の4つに区分する。これにより実燃費に近い燃費データが得られるようになる。
 また、JC08モードに対し車両重量が重くなり、燃費の悪いコールドスタート(エンジンが冷えた状態)で走行する割合が増えたり、計測を行うシャシーダイナモメーターがより実際の走行性能に近い負荷をかけられるようになるなどといった変更があった。


【一般道編】HV車の真価が問われる 一般道での実力やいかに

一般道の走行イメージ画像

一般道では、アクアの秀逸な走りが好印象!
 一般道の燃費は、房総半島にわたり、同じルートを3台つらなって走行して計測した。
 走行したルートの制限速度は上限で50km/h、市街地というよりは郊外のほうがイメージに近い。ハイブリッド車がもっとも得意とする条件といえそうだ。
 走り方は高速道路と同じく極端に燃費を意識するわけではなく、少しだけエコドライブを心がける感じ。その他の条件も高速道路と同じだ。
 ここでもフィットは好印象。走りにダイレクト感があり、加速フィールが気持ちよい。それでいて、かつては気になったギクシャク感も払拭されている。今回の条件下では、1番EV走行の時間が長いように感じられた。また、アクセルオフにしても回生やエンブレが小さく、もっともそのまま転がっていく感じがした。ホンダとしては、そのほうが効率が高いと判断しているのだろう。キビキビとした軽快なドライブフィールは好印象だ。
 そしてフィットと同じ位良かったのがアクア。一般道で、最も乗りやすく感じられた。何も不満に感じることがないという意味では、THS(トヨタハイブリッドシステム)は本当に秀逸だと思う。普通に大人しく流す分には、加速性能に対する物足りなさやアクセルレスポンスの鈍さも気になることはない。ただしTHSはマニュアルシフトができないところはやむを得ない。強いて挙げるなら、ブレーキフィールについて。ある程度、車速が高い時には気にならないのだが、低速では少しだけ違和感を覚える。
 その点ではスイフトもブレーキの効き始めの感覚が分かりづらいため減速感がやや掴みにくい。
 またエコモードでは、敢えてそうしているのかもしれないが、動力性能はいまひとつで、加速の立ち上がりが鈍くなり、流れに乗るまで車速を上げるのに時間がかかる。
 さらには、アイドリングストップでけっこう頻繁にエンジンが止まるのは良いが、エアコンの冷風が生暖かくなってしまうところも気になった。ただし、それはエコモードでの話。ノーマルモードにすると、なんら問題はない。スズキはエコモードでは、いかにも「エコ」であることをユーザーが感じられるよう意図的にこうしているものと思われる。
 ところで、同距離、同ルートを3台で同じように走ったのに、トリップメーターの距離がもっとも多いクルマと少ないクルマで0・7kmも差がついたことに驚いた。ちょっと違いすぎるような気がしたのだが…。
 燃費結果は、またしてもアクアがトップ。マイナーチェンジで燃費も向上したアクアの実力は本当に侮れないが、フィットとスイフトの今後の進化にも十分期待したい。

  • フィットハイブリッドの走行画像

    最上級グレードのハイブリッドSは、コンパクトとは思えないほどの静粛性。一般道でもフラットでトルクフルな乗り味がストレスを感じさせず、トップクラスの快適さを誇る。

  • アクアの走行画像

    わりとルーズなアクセルワークでも安定した高燃費を記録したアクア。1.5Lのエンジンとモーターで、エコモードであってもスムーズに走ることができた。

  • スイフトハイブリッド走行画像

    エコモードでは多少もっさりとした印象が強かったスイフト。ただノーマルモードではスイフト本来の持ち味であるキビキビとした走りがしっかりと味わえた。

ハイブリッドでも3台の仕組みは異なる

  • フィットハイブリッドのエンジンルームの画像

    ホンダの中で主に小型車向けの「i-DCD」は、奇数段と偶数段の2軸のシャフトを持つ7速DCTをベースに、遊星歯車を用いた1速ギアとモーターを組み合わせている。

  • アクアのエンジンルームの画像

    駆動用と発電用のモーターを動力分割機構により状況に応じて最適に使うという「THS」の基本構成は、大きく変わっていないが、リダクション機構や昇圧機能を備えるなど進化を遂げている。

  • スイフトハイブリッドのエンジンルームの画像

    「AGS」と呼ぶ自動変速機能を持つMTに、「MGU」という駆動用モーター兼発電機を組み合わせ、クリープ走行をはじめ低負荷状態でのEV走行を可能とした点が特徴。

icon テスト結果【一般道編】

車名  実燃費  達成率※
フィット  22.3km/L  70.12%
アクア  24.1km/L  70.05%
スイフト  21.5km/L  67.18%

icon テスト結果【総合】

実燃費(総合)達成率
24.1km/L  75.78%
27.8km/L  80.81%
24.6km/L  76.87%
※達成率は各車カタログのJC08モード燃費数値(フィット:31.8km/L、アクア:34.4km/L、スイフト:32.0km/L)を元に算出。

一般道でトップに輝いたのはアクア。次点で安定した数字をキープしたフィット。スイフトはエコモードによる鈍い加速のせいか、流れに乗ろうとしてアクセルを踏み込みすぎたのが響いた。総合でもアクアがトップの燃費で、残り2台は僅差でスイフトに軍配が上がった。

総合評価

3車のボンネットを開けたイメージ画像

 正直、意外な結果になったと思う。アクアとフィットがもっと拮抗するのではと予想したのだが、結果は以下のとおり。どちらのステージもアクアの圧勝となったことに驚いた。おそらく、マイナーチェンジでアクアは燃費についてもだいぶ頑張ったのではないだろうか。そうでなければ、ここまで差はつかないと思う。
 一方で、スイフトが大健闘したことにも驚いた。カタログ燃費でおよんでいないことはもとより、ハイブリッド車としてはミニマムといえる内容ゆえ、もっと引き離されるような気がしていたが、全然そんなことはなく、むしろ高速の燃費ではフィットを上回ったのはたいしたもの。これにはボディの軽さが生きたのではないかと思う。

(掲載されている内容はグー本誌2018年9月号の内容です)

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

グーネットマガジン編集部

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ