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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.27
熟成極まる2代目BRZ tS
第2弾が登場

マットブラックのトランクスポイラーはオプション(4万8600円)
【本記事は2015年8月にベストカーに掲載された記事となります。】13年10月に500台限定で作られたSTI製コンプリートカー“BRZ tS”。その第2弾が登場した。価格は6MTが399万円、6ATが407万1000円。ノーマルのBRZのSグレードに比べ、約100万円高となる。限定300台で、受注期間は今年10月12日まで。ボディカラーはWRブルーパール、クリスタルホワイトパール、クリスタルブラックシリカに加えて、専用色のサンライズイエローは100台限定となる。今年4月のニューヨークショーにターボエンジン搭載のコンセプトモデルを出品したSTIだけに、「第2弾はついにターボか?」という淡い期待があったが、現実は初代モデルの正常進化。夢の実現はまだしばらくおあずけのようだ。ただし、シャシーの熟成度についてはさすが職人集団STI、マニアックな仕事ぶりに妥協はない。
キメの細かさに感心

フロントは新たに倒立式のビルシュタインサスペンションを採用(10mmローダウン)
前モデルでも、バネ/ショックなどの大物のみならず、スティフナーやブッシュ、ボルトにいたるトータルチューニングのキメの細かさに感心させられたが、今モデルではさらに、バルクヘッドとストラット頂部を結ぶ“フレキシブルVバー”、ビルシュタイン製ショック(フロント倒立)、ドリルドローター化されたブレンボ製ブレーキなどを追加。メーカー直系とはいえ、ここまで凝ったモデファイを施すブランドはちょっとほかに例がない。
前モデル以上に「シャシーが勝っている」印象

ノーマルのフォグランプは丸型だが横長タイプのLEDデイライナー&カバーエクステンションに変更され、フロントグリルにはチェリーレッドのモールが入る
そのほか、エアロパーツの色換えでSTIらしさを鮮明に打ち出したエクステリアや、サイドエアバッグ付きレカロシートの装備など価格に対する満足度は極めて高い。前回は366万4500円~437万3250円。限定500台のうち、半数がGTウイングを装着したGTパッケージで、それが賛否両論を呼んで、少し売れ残ったとのことだが、今回の300台は完売必至なんじゃないかと思う。走りについては、前モデル以上に「シャシーが勝っている」印象が強い。ノーマルではやや荒削りな印象の残るBRZに、キュッと筋肉の引き締まったソリッドなハンドリング/乗り心地フィールを与えたのがBRZtSの基本キャラクターだが、今回はそれを全域で持ち上げたイメージ。
ケイマン並みの走りのパフォーマンスで満足度は高い!!

ブラック塗装のSTI製7.5J×18インチアルミホイール、225/40ZR18タイヤ(ミシュランパイロットスポーツ)を装着。ブレンボ製ブレーキシステム(フロント:対向4ピストン、リア:2ピストン)では、このtSから新たにドリルドディスクが採用されている
■ケイマン並みの走りのパフォーマンスで満足度は高い!!とりわけ強烈なのが操舵フィール。新装備のフレキシブルVバーは、操舵応答性を30%もアップする効果があるそうだが、実際に乗ってみると「マジですね!」と実感できるレベル。ヨーレスポンスの速さや追従遅れの少なさはケイマン並みを目指したとのことだが、目標は充分に達成されたといっていい。ただし、操舵感はいまどき珍しくズシッと重め。乗り心地も低速/市街地ではけっこうハード。グリップ限界が高くキリッとエッジの立ったミシュランパイロットスーパースポーツの特性とあいまって、サスペンションのスイートスポットはサーキットを含むかなりアタック速度の高い領域に合わせられている。ここがBRZ tSにジレンマを感じる部分だ。公道ではシャシー性能が圧倒的で、エンジンがノーマルだとアマチュアドライバーには手も足も出ない感じ。いわゆる“やんちゃな走り”を好む人には向いていない。

フロントストラットとバルクヘッドの距離がある車体構造に合わせ、ピロボールを組み込んだフレキシブルバーを新開発。曲げやねじりを逃がしつつ、軸方向に高い剛性を確保することでボディ剛性のバランスを最適化。また操舵で発生するタイヤコーナリングフォースを車体に伝えるタイミングを早め、操舵に対する車両のヨー、横G応答性を30%以上向上させているという
いっぽう、超ソリッドなシャシー性能は他車では得難い魅力なのだが、日常の足としては乗り心地がハード。とりわけ、荒れた路面では洗練度が足りない。個人的な好みを言わせていただければ、現状のシャシーセッティング(それ自体はものすごく魅力的)を活かすなら300ps/30kgmは欲しいし、エンジンをノーマルでいくなら、足はもう少し、しなやか系の味付けのほうがいいのではないだろうか。現状の400万円という価格設定でこれ以上を求めるのは難しいだろうが、これ以上何を望むのかというほどシャシー性能を極めているので、欲をいえばさらに一歩踏み込んだ商品企画にチャレンジしてほしい。たとえ価格が500万円超えになったとしても、“BRZターボSTI”なら、さらに魅力的なクルマになる。それがSTIファンの究極の夢だと思うんですけど、いかがでしょう?