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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.30
日本のスポーツカーは『名門』を超えたか? PART3 HONDA CR-Z VS ALFAROMEOジュリエッタ
夢のスポーツクーペ

【本記事は2012年9月にベストカーに掲載された記事となります。】ホンダCR-Zは、世界的にレベルの高い日本のハイブリッド車として、初めてスポーツの要素を取り入れたクルマである。モード切り替えによって、低燃費走行から、モーターを積極的に使ったスポーツ走行をこなすことができる、夢のスポーツクーペである。いっぽう、アルファジュリエッタは、1.4Lのダウンサイジングターボとアイドリングストップ機能を搭載し、アルファらしいスポーツ走行と、低燃費を両立させる。こちらもモード切り替えによって、エンジントルクを向上させることが可能。日本と欧州のエコスポーツ2台をここでは対決させる!
エンジン性能

ENGINE-エンジンフィール CR-Z 90点:ジュリエッタは1.4Lターボ、CR-Zは1.5L HV採用
■エンジン性能ハイブリッド化に熱心な日本車と対照的に、欧州勢は内燃機関の改良に集中。結果として、市街地が多い日本ならハイブリッドだが、平均速度の速い欧州ではダウンサイズターボの方が優勢といった感じで、以前ほど日本車の燃費アドバンテージはなくなりつつある。ただ、こういうエコなトレンドに乗っかってもイタ車はイタ車。ファン・トゥ・ドライブを忘れていないところが面白い。たとえば、今回持ってきたジュリエッタなんか、直噴ターボのみならず、油圧作動可変バルタイの“マルチエア”なんていうハイテクまで装備。ダウンサイズの本家ドイツ勢より上をいくくらいの先進技術を投入してきている。ところが、乗ってみるとエンジンフィールやドライバビリティはどこか懐かしい昔のアルファを彷彿させるキャラクター。VWのTSIほどトルク曲線が四角くなくて、まろやかにパワーが盛り上がりトップエンドまでスムーズに吹き上がってゆく。燃費走りを考慮するなら四角いトルク曲線のエンジンを早め早めに上のギアにつないでゆくのが有利だが、各ギアをもうちょっと高回転まで引っ張って加速感を楽しむならジュリエッタの1.4ターボ・マルチエアの方が心地よい。この辺がイタリア人らしいこだわりなのかもしれない。いっぽう、対抗馬として持ってきたCR-Zは基本的にホンダのNAエンジンらしいスムーズな吹き上がりが持ち味。燃費性能はVTECによる吸気1バルブ停止と大量EGRでポンピングロスを減らし、不足するトルクをモーターが補うことで達成するというコンセプトだ。こちらも、モーターアシストが効いたときのグッと前に出るトルク感や、ホンダエンジンらしくトップエンドまで回りきるスムーズさは好ましいのだが、CVTと組み合わせるとそういう美点がちょっとボケるのが惜しい。
ミッション性能

TRANSMISSION-シフトフィール ジュリエッタ 95点:ジュリエッタには6速のデュアルクラッチATの「アルファTCT」が装着される
■ミッション性能もちろん、だったら6MTを選べばいいとはいえるのだが、イタ車ですらDCTを用意してきているのにいまさらMTというのはちと遅れてる。じっさい、ジュリエッタのDCTはファン・トゥ・ドライブという点でCVTよりうわ手。CR-ZのCVTもパドルシフトと組み合わせた7速MTモードでステップシフトを楽しむことはできるのだが、アップシフトにせよダウンシフトにせよ、そのダイレクト感が微妙にDCTにはかなわない。また、パワートレーンにトルコンが介在することで生じる微かなスリップ感も気になる人には無視できない。走りにこだわるなら、CR-Zはやっぱり6MTを持ってこないと満足できないという気持ちになってしまうのだ。結局、最近の日本車はエンジンだけではなくミッションも含めたパワートレーン全体がエコに最適化されすぎていて、エンジンのパワーやレスポンスをダイレクトに体感できるドライバビリティのチューニングにまで手が回っていないということなのだが、ハイテクとは縁遠かったイタ車までが直噴ターボやDCTをじゃんじゃん投入しているのが口惜しいわけですよ。
走りの楽しさ

FUN to DRIVE-走りの楽しさ CR-Z 90点:日欧の個性的なエコスポーツの完成度は?
■走りの楽しさハンドリングについても、CR-Zはそこそこ好ましいバランスに仕上げられていて、それはそれで充分評価できるのだけど、もしこのクルマをアルファが作ったらと想像すると、「たぶん、アイツらだったらもっともっと官能的なスポーツカーにしてくるだろうなぁ」なんて思ってしまう。ジュリエッタの足はスポーツカーとしてはちょと軟弱だけど、乗り心地とのバランスや挙動変化のわかりやすさなど、日本車の同クラスにはない美点を備えている。そういうクルマを仕上げた連中がCR-Zみたいなクルマを作ったとしたら、やっぱりハンドリングもひと味違う面白さを出してくるんじゃなかろうか……。欧州車コンプレックスかもしれないけど、日本車の足はまだまだ課題が多いと思うのですよ。
デザイン比較

DESIGN-デザイン ジュリエッタ 90点:日欧の個性的なエコスポーツの完成度は?
■デザイン比較アルファロメオはブランドとして強烈な個性を持っている。そしてその象徴が、フロントマスクにある盾形グリルなわけだが、逆にこのフロントマスクさえあれば、どんなボディもアルファになるというくらい、強いブランド力を持っている。いっぽう、CR-Zはモダンなクーペスタイルをうまくまとめ上げている。2車を比較すると、スポーツクーペと実用的な5ドアHBという性格の違いはあるものの、フロントマスク以外がわりと無難なアルファよりもCR-Zを上位に評価した。
総合評価

■総合評価まぁ、厳しい経済環境のなかでCR-Zみたいなスポーツクーペを市販化まで持っていったホンダの熱意は高く評価したいんだけど、「ここまでやったんならもうちょっと……」という思いが残るんだよねぇ。総合採点では、ジュリエッタを100点とした時、ホンダCR-Zは105点ということにさせてもらった。