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更新日:2019.01.27 / 掲載日:2017.12.01

トヨタのプリウスαは売れるのか?

プリウスよりワンランク上のワゴンタイプ

全長4615mm(+155mm)、全幅1775mm(+30mm)、全高1575mm(+85mm)ホイールベース2780mm(+80mm)という大きさで、最小回転半径は5.5m(+0.3m)だ。

全長4615mm(+155mm)、全幅1775mm(+30mm)、全高1575mm(+85mm)ホイールベース2780mm(+80mm)という大きさで、最小回転半径は5.5m(+0.3m)だ。

【本記事は2011年4月にベストカーに掲載された記事となります。】プリウスのワゴンボディは、今年初めに開催されたデトロイトショーでは『プリウスV』というネーミングだった。ジュネーブでデビューした欧州仕様だと『プリウス+』。そして今回試乗したモデルを見たら『プリウス・スペースコンセプトプロトタイプ』だという。いまだ日本名を公表していないものの、どうやら以前からウワサされていたとおり『プリウスα』になるもよう。ややこしいぞ! クルマの概要はベストカー3月26日売り号で紹介したとおりで、プリウスをベースに前後左右大きくしたと思えばよい。開発担当者に聞くと「ボディサイズだけでなくホイールベースまで延ばしたのでキャビンスペースがまったく違います」。実際、全長4615×全幅1775×全高1575mmと、プリウスよりふた回りくらい大きい。トヨタは車格もプリウスよりワンランク上だと考えているようだ。初公開された日本仕様を見たら、輸出仕様と同じ2列シート5人乗りのほか、新しいリチウム電池を採用した3列シート7人乗りモデルもラインアップされている。果たしてどんな乗り味なのか? 興味津々で試乗会に向かった。

重たさを感じない加速フィール

5人乗り(ニッケル水素)と7人乗り(リチウムイオン)で走りは違うのか?

5人乗り(ニッケル水素)と7人乗り(リチウムイオン)で走りは違うのか?

まずプリウスと同じニッケル水素電池を搭載する5人乗り仕様からいきましょう。エンジンやモーターのスペックもプリウスと変わらず。今回車重は5人乗りで、100kg重くなっている。それなら加速感が鈍くなったかと思いきや、そんなことなし。このあたり、プリウスより140kg重いプラグインプリウスを開発した時に得たノウハウを使ったらしい。例えばギアレシオ(最終減速比)を低くしているという。自転車でいえば軽いギアに替えたワケ。100km/h巡航時のエンジン回転数は高くなっているだろうけど、プリウスに乗ったことのある人ならわかるとおり、そもそもエンジンの存在感薄い。短くて速度の乗らない試乗コースだということもあるのだろう、巡航時にエンジン回転が高くなっている感覚なし。ごく普通に走ってくれます。参考までに書いておくと10・15モード燃費は31km/L。プリウスが35.5km/Lなので、13%ほどのダウンか? プリウスの実用燃費を22km/Lとするなら、20km/Lを少し割り込む感じでしょう。興味深かったのが、途方もなく乗り心地が悪いプリウスより向上している乗り心地。ショックアブソーバーはプリウスと違い日立製。しかぁし! これまた試乗コースが限られていたこともあり(悪い路面なし)、16インチタイヤを履く5人乗りの場合「いわれてみれば乗り心地いいかな?」といった程度。トヨタ最上の乗り心地(FF車では)を実現したCT200hと比べ、相変わらず路面のデコボコを車体に伝えてしまう。最終的には一般道でチェックして評価したい。続いて新型のリチウム電池を搭載する7人乗り。ニッケル水素電池仕様より性能アップしているかと思いきや「出力や回生能力などは5人乗りとまったく同じです」。プリウスVを紹介した際「日本仕様はリチウム電池を採用しているので性能も燃費もいいらしい」と書いたのは大間違いでした。じゃなんで高価なリチウム電池を使うのかと聞いてみたら「電池のサイズがひと回りコンパクトになったので搭載場所を変更できました。リチウム電池でなければ3列シートは難しいです」。つまり性能よりスペースを重視したらしい。動力性能は5人乗りと変わらず。そらそうだ。「同じ性能です」とトヨタもいっている。ニッケル水素電池より出力も回生性能も高めることができたなら、速くて燃費のいいクルマに仕上がったろうに……。残念ながらパナソニック製のリチウム電池、開発途上にあるということでしょう。次回作に期待しておく。

「高価だけれどひと回りコンパクト」

プリウスよりも乗り心地がよくなっているのがわかる。16インチよりも17インチがいい

プリウスよりも乗り心地がよくなっているのがわかる。16インチよりも17インチがいい

意外だったのは『G』グレードに採用されている16インチ仕様より、ツーリング系の17インチ仕様のほうが乗り心地がよかったこと。そういえばプリウスも15インチ仕様と比べ、17インチ仕様のほうが乗り心地がいい。「高価だけれどひと回りコンパクト」というリチウム電池のメリットを使って確保した3列目シートの居住性をチェックしてみたところ「う~ん」。同じトヨタのウィッシュにまったく届いておらず。ウィッシュの3列目シートなら座れる私も(運転席と2列目シートに私が座った状態で3列目のレッグスペースがわずかながら残る)、こっちだと膝が2列目シートの背もたれにメリ込む。加えて床面の形状は複雑で高い。体育館座り風になるだけでなく足の置き場所に苦労します(ただし身長170cm以下なら普通に座れるそうな)。試乗レポートは以上! 5人乗りは235万円からでリチウム電池の7人乗りは同じグレードのニッケル水素電池の5人乗りより20万円高の300万円だという。同じ7人乗りのウィッシュなら184万円。正直なトコロ、少しばかり高いかな、と思う。最近のユーザーを見ていると価格にシビア。果たして売れるか? このあたりを問うてみたら「プリウスより車格が上なので妥当だと考えます」との答えだった。

このクラスは軒並み苦戦中 プリウスαは逆境を打ち破れるか?

ウィッシュ:このクラスで唯一コンスタントに売れているモデル。コストパフォーマンスがとにかく高い

ウィッシュ:このクラスで唯一コンスタントに売れているモデル。コストパフォーマンスがとにかく高い

さてさて! プリウスαは伸び悩んでしまっている乗用車型ミニバンの救世主になるだろうか? なんせこのジャンルでこの2月の販売ランクベスト30位入りしているの、ウィッシュ(17位)とプレマシー(27位)のみ。爆発的な売れゆきをみせたオデッセイやストリームなどは超低迷といっていい。日産なんか撤退しちゃいましたから(編集部注/プレマシーの日産へのOEMでラフェスタは販売中止と噂される)。以下、堅調に売れているウィッシュと比較しながらプリウスαのバイヤーズガイドなどをしよう。ウィッシュが売れている最大の要因は価格だと考える。とにかく安い! 1.8Lのバルブマチックエンジン+CVTを採用。サイドエアバッグや横滑り防止装置VSCまで標準装備して184万円ときた。182万円で普通の1.8Lエンジン+5速ATなうえ、安全装備はABSとエアバッグだけしか付かないストリームを売っているホンダのマイペース度たるや感心するばかり。売れなくてしかたない、といい換えてもよろしい。今や価格はスペック以上に重要。いや、正確に表現するなら絶対的な価格の安さというより「割安感」であります。逆に「いいけれど割高ですね」と思えるクルマで成功したモデルなどなし。もっとシビアにいえば、割安感あっても売れないケースが増えてきた。いいクルマであり、さらに割安感がないと厳しい戦いになってしまう。

ウィッシュと比べた損得勘定

といった観点でプリウスαを評価するとどうか? 3列シートのモデルは300万円! 同じ装備内容のウィッシュなら184万円。試乗レポートで書いたとおりキャビンスペースという点じゃウィッシュ圧勝! 身長170cm以下であればプリウスαも実用となるけれど、やはりミニバンの場合、広さがイノチ。プリウスαの開発担当者いわく「ウィッシュより上級です」私は同じくらいの質感にしか感じないですけど。価格は116万円差! こりゃもうどんなにプリウスαの燃費がよくてもカバーしきれない。試算してみよう。プリウスαの実用燃費をプリウスの10%落ちの18km/L。ウィッシュの燃費は16.2km/Lというカタログモードの約60%の10km/Lで計算してみた。すると1万km走るのに必要なガソリン代はプリウスα7万8000円/ウィッシュ14万円。その差6万2000円。10万km走って62万円ぶんしかモトが取れないワケです。プリウス大ヒットの要因は「燃料コストの低さを考えれば150万円級のクルマより安い」だと考える。この法則はプリウスαにゃ当てはまらない。というかウィッシュを買っているユーザーからすれば、プリウスαなんか高くて購入の対象にならないだろう。かといって235万円のプリウスαだと3列目シートが付かず。プレマシーも同じようなイメージ。ウィッシュよりパワフルな2Lエンジンだし、子どもがいる家庭だと大いに使い勝手のいいスライドドア仕様ときた。加えて値引きゼロだと思われるプリウスαに対し、ウィッシュやプレマシーは最低で20万円引きからスタートという商談になる。今までの例を見ると「ボランティアしてまでECOを選ぶ」みたいな人って案外少ないです。ストリームもいちおう競合車になるも、購入しているのはホンダ好き。トヨタ車を買うと思えない。オデッセイやMPV、マークXシリーズのマークXジオになると、それこそ車格が違ってきてしまう。といったことを分析していくと、プリウスα最大のライバルはプリウスということになる。「プリウスを買おうと考えているんだけど少しばかり狭い」といったユーザーなら、プリウスαに魅力を感じてくれることだろう。けれど「30万円高い金額を出して燃費も落ちるプリウスαが欲しい」というユーザーはそれほど多くないと予想しておく。もし売れればトヨタの狙いはバッチリ! マークXジオのごとく思ったとおりの売れゆきを下回れば、今や絶版車になってしまった2列シートミニバンである『ナディア』やホンダの『アヴァンシア』と同じ展開になってしまうと考えます。もしプリウスより10万円高いくらいなら大成功すると思います。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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