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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.04
四畳半にすっぽりおさまり4人が乗れる ちっちゃなボディにでっかい野望!トヨタiQ正式デビュー!

グレイッシュブルーメタリック:こういうクルマはカラフルなボディがよく似合う。ホワイトパールクリスタルシャインは3万1500円のオプション設定となっている
【本記事は2008年11月にベストカーに掲載された記事となります。】iQのサイズは全長2985×全幅1680mm。つまり、約5.01m2ということ。畳のサイズは地域によって異なるが、910×1820mmが基本。つまり、畳1枚は約1.66m2となり、iQは約3畳の大きさしかないということになる。上の写真は「実際に床の間に置いてみました」というものではもちろんなくCGなのだが、正方形の四畳半の部屋にもこのように収まる小ささであることは確か。「これなら駐車場は部屋でいいや」というのは冗談だが、そんな気分にさせてくれるマイクロコンパクトカーなのである。
価格は140万~160万円

高級車オーナーのセカンド、サードカー需要が期待できそうなiQ。ベンツ、BMWユーザーをトヨタに引きつけるのはレクサスではなくiQだった、ということになったりして
さて、そんなトヨタiQの価格が発表された。ベーシックグレードの100Xが140万円、中間グレードの100Gが150万円、最上級グレードの100Gレザーパッケージが160万円。プレミアム路線を狙うマイクロコンパクトカーといわれていただけに、この価格は予想より安かったといえるのではないだろうか。では、iQのおさらいをしておこう。iQは全長2985×全幅1680×全高1500mm、ホイールベース2000mm、車重890kgの超コンパクトボディで、その点ではスマートと同じコンセプトだが、最大の違いは4名乗車となること。これはまさしくパッケージングマジックといえるものだろう。エンジンは1KR-FE型直3、1LDOHCで68ps/6000rpm、9.2kgm/4800rpmを発生する。駆動方式はFF、トランスミッションはCVT、10・15モード燃費は23.0km/Lだ。
技術と工夫で4名乗車を実現

最大290mmスライドできる助手席で、その後ろには大人も座れる
軽自動車よりも小さいサイズで4名乗車を可能にしたのは技術と工夫のたまものだ。最も話題になったのはエアコンユニットを従来構造に対して20%小型化し、インパネ中央部に配置することで助手席前方に空間を設けたこと。これにより助手席の足もとが飛躍的に広くなり、290mmのスライド量を実現。必要に応じて前方に出すことにより、リアシート乗員のニースペースを確保し、大人が乗れるスペースを作り上げた。運転席側のリアシートは事実上、子供しか乗れないスペースとなるが、大人3名、子供1名の4名乗車は確保しているというわけだ。もちろん、これだけでなくエンジンルームを極力小さくし、また、燃料タンクを薄型化して床下に配置することで前後のオーバーハングを極限まで短縮。さらにシートバックを薄くできるフロントシートを開発するなど、新しい技術が満載なのだ。助手席側の前後席間距離は最小641mmから最大832mmを確保しているが、全長3785mm、ホイールベース2480mmのヴィッツが864mmだということを考えると、これが驚異的な数値であることがわかる。
エコドライブ支援システムも充実
iQの最大の注目点はそのパッケージングにあるだけに、もう少しその話を続けよう。全長は短いが、全幅は1680mmとショート&ワイドボディのiQだけに、室内も横方向は余裕がある。左右乗員の距離を示すカップルディスタンスは710mmとヴィッツの660mmより広く、もちろん、全幅の狭い軽自動車を大きくリードする。また、リアシートは5:5分割可倒式を採用し、シートバックを前倒しする際にはヘッドレストを外さなければならないが、そのヘッドレストは背もたれと座面の間にきれいに収納できるので便利。ラゲッジスペースはリアシートを立てた状態での容量は32Lとさすがに小さいが、倒した状態では232Lを確保し、大型スーツケースも収納可能だという。海中を舞うマンタをイメージしたシルバーのセンタークラスターが印象的なインテリアは、シンプルながら個性的で上質感のあるもの。メーターはスピードメーターとタコメーターを同一面にコンパクトに配置し、モードスイッチにより瞬間燃費/給油後平均燃費/エコドライブインジケーターゾーンなどを表示するマルチインフォメーションディスプレイも全車に装備する。このエコドライブインジケーターは、燃費のいいエコ運転(アクセル操作)の範囲を示すもので、燃費向上に効果あり。また、アクセル操作に対する駆動力や空調制御のエネルギー消費を低減する「エコモードスイッチ」も採用するなど、iQの燃費に対するこだわりは相当なものがある。なお、下端を水平にしたステアリングにはオーディオのスイッチを配置し、ステアリングから手を離すことなく安全に操作できるようになっている。担当の経験上、ステアリングスイッチは一度慣れるとなくてはならないものとなるほど便利です。
安全装備は高級車レベル

全車に9エアバッグが標準装備されるのがiQのセールスポイント。追突時にリアウィンドウ上部から展開するエアバッグは世界初の装備となる!
ボディが小さくても高い安全性を確保しているのもiQのポイントだ。なんとエアバッグはこのクラスでは異例の9個を全車に標準装備。特に、追突された際にリアウィンドウ上部からエアバッグが開き、後席乗員の頭部を守るリアウィンドウカーテンシールドエアバッグは世界初の装備。リアシートがほぼボディ後端に位置するため、後方からの衝撃を心配するユーザーに対するトヨタからの回答であり、軽自動車に対するアドバンテージとなる。また、最新のスタビリティコントロールS-VSCも全車に標準。ブレーキ、駆動力、ステアリングを協調制御することで、危険を未然に回避することができる。サスペンションはフロントがストラットで、リアがトーションビーム。ボディの小ささを感じさせない安定したハンドリングを実現しているというが、そのあたりは次号の試乗で確認したい。それよりもこのクルマの場合、最小回転半径がわずか3.9mしかないのがありがたいだろう。軽自動車でも4.5~4.7mあたりが平均的なのにこの小ささは驚異的(スマートは4.2m)。日本のどんな道でも取り回しで苦労することはないと断言できる。最後にグレード構成を整理しておこう。最もベーシックな100X(140万円)でもマニュアルエアコン、CDプレーヤー付きAM/FMラジオ、9エアバッグ、S-VSCなどは標準装備。中間グレードの100G(150万円)になると、これに本革ステアリング&シフトノブ、スマートエントリー&スタートシステム、オートエアコン、内装メッキ加飾が加わり、そして、最上級の100Gレザーパッケージ(160万円)ではレザー&ファブリックシート、アルミホイール、ハロゲンヘッドランプが加わる。安全装備にグレード間による差がないのがiQのポリシーだ。
トヨタもわからぬ大疑問 iQ売れるか売れないか?
10月15日に発表、11月20日から発売となるiQのメインマーケットはヨーロッパ。ヨーロッパでは来年初頭から発売を開始し、年間8万台の販売を目指すという。いっぽう、日本の月販目標台数は2500台。つまり、年間3万台だからその差は意外と大きい。生産は愛知県の高岡工場であり、海外生産車ではないのだが、iQの日本市場における評価は、トヨタ幹部も「本音を言うと、まったく読めない」というほど複雑だ。なにしろ日本には大人気の軽自動車があり、諸手を上げて「iQ大歓迎!」とはなれない雰囲気がある。iQが軽自動車に対して優っているのは全車に9エアバッグとスタビリティコントロールのS-VSCを標準装備する安全性と、全長3m以下、最小回転半径3.9mという取り回しのよさ。また、ヨーロッパ市場をメインとするため高速性能にはかなり力を入れており、160km/hでの操縦安定性を重視したという走りも注目すべきポイントだ。いっぽう、軽自動車がiQに優っているのは室内の広さと価格、そして維持費の安さだ。iQはこのサイズで4名乗車(大人3名+子供1名)を実現したのは特筆すべきことだが、単純な室内空間の広さではハイトワゴン系の軽自動車にはかなわない。また、最もベーシックなグレードで140万円というiQの価格も予想より安かったとはいえ、やはり軽自動車と比較されると厳しいものがある。維持費に関しては説明するまでもないだろう。iQの自動車税2万9500円に対し軽自動車は7200円。そのほか保険や高速道路料金などにも差があり、この点で軽自動車は圧倒的な優位性を持つ。このように、日本車なのに日本市場で複雑な立場にあるiQは、ズバリ売れるか売れないか? 自動車評論家はどう予想するのか!
渡辺陽一郎
最初の5カ月くらいは話題になって人気も出るでしょうが、その後は厳しいと予想します。iQの価格は装備内容を考えると「よくここまで抑えたな」と思えるものなんですが、ユーザーは「広さを価格に換算する」ものなんですよ。通常2人しか乗らないような人でも広い軽自動車を欲しがりますし、コンパクトカーでもできるだけ広いクルマに魅力を感じるものです。こういうとミもフタもないんですが、iQの最大の長所である超コンパクトサイズというのが日本市場では足を引っ張りそうなんですよね。個人的には、ユーザーはこういう新しい提案に価値を見出してほしいし、そうでなければ今後もクルマ販売に光明は見出せないと思いますが、現実を考えると厳しいといわざるを得ないですね。はじめに最初の5カ月くらいは売れるといったのは、高級車ユーザーのセカンドカー、サードカー需要が見込めると思うからです。軽自動車には乗りたくないけど、アシがわりのクルマが欲しいという人たちが最初に飛びつくんじゃないかなと。今までトヨタ車は買わなかったベンツやBMWのオーナーが欲しがるんじゃないかなという予想をしています。
鈴木直也

主要諸元
国内の月販目標2500台というのはトヨタの本音だと思いますね。トヨタ自身、過大な期待はしていないことを示している台数ですよ。うまくすれば1万台近くは目指せる価格帯、クラスで、ましてやトヨタが売るクルマで2500台の目標というのはかなり控えめですよね。なので、初期受注は目標の何倍かいって、あとは目標台数を1年~1年半くらいはキープすると予想します。価格は「高くもなく安くもなく」という、いかにもトヨタ的な手堅さだと思いますが、見てのとおり、今までなかった市場を開拓しようというクルマなので爆発的なヒットはないでしょう。ユーザー層も、若い人ではなく豊富なクルマ経験を持つ年配の方がセカンドカー、サードカーとして、あるいは「子供も巣立ったし、もうこれで充分」という感覚で買うケースが多いと予想します。僕は多様性こそ重要と思っているので、こういうクルマが登場するのは大歓迎。同じようなクルマばかりでもつまらないですからね。ただ、アイドリングストップや、簡略型でもいいからハイブリッドなど何か新しいデバイスはほしかったように思いますね。そのあたりは今後に期待なんでしょうけどね。iQの日本における月販目標台数2500台に対し、トヨタの渡辺捷昭社長は「誰がこの計画を決めたか知らないが、トヨタの技術力を結集して開発したクルマ。そんな弱気じゃなく、月に最低5000台は売ってほしい」と大ハッパをかけておりました((編)談)。