輸入車
更新日:2022.03.22 / 掲載日:2021.10.04
BMW 3シリーズ セダン/気になる中古車【試乗判定】
文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2021年11月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2021年9月調べ。
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
member Profile
自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌でも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
BWMの魅力を凝縮したスポーツセダン
先代3シリーズはアナログ時代の集大成
編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、BMWのコンパクトセダンである3シリーズが登場です。お借りした車両は2018年モデルで、グレードは「318i」、走行距離は1万6000kmとなっています。
九島●これは先代3シリーズの後期モデルか。まさに中古車の王道できたねえ(笑)。
竹岡●マニアから輸入車ビギナーまで、みなさん大好きなBMW3シリーズでございます。
編集部●おっしゃるとおり3シリーズは、BMWだけでなく輸入車全体を象徴するような人気モデルで、グーネットの人気中古車ランキングでも、つねに上位です。
竹岡●メルセデスのCクラスもそうなんだけど、3シリーズに乗るとBMWらしさというか、ブランドの魅力がわかりやすく感じられるね。もう「老舗の卵焼き」みたいな。
九島●まさに保守王道だ。「BMWといえば3シリーズ」というマーケットがまずあって、BMWはそういう人たちが求めるものをきっちり提供している。一方で流行りのパンケーキが食べたい人向けにも1シリーズや2シリーズが用意されているでしょ。現行モデルの変身ぶりから考えても、先代F30は初代E21から脈々と受け継がれてきた価値観の集大成だと思うよ。
竹岡●今どき型式でクルマの話をする人もだいぶ少なくなってきたもんね。「サンマル」とか「ヨンロク」とか、今は言わないよ(笑)。
九島●マジかー(笑)。
竹岡●でも確かに現行モデル(G20)はデジタル世代になって、インテリアもガラッと変わったじゃない。メーターも液晶だし、先進安全装備もてんこ盛りで、ハンズオフ機能まで採用した。それに比べると先代モデルはメーターもアナログだし、コックピットも昔ながらのBMW流。
九島●確かに古いんだけど嫌じゃないよね。ステアリングの太さも現行型に比べると細くて握りやすいし。
編集部●さて、改めて本日試乗していただく先代3シリーズについて、非常にバリエーションが多いのでセダンに絞って紹介します。6代目となる先代モデルがデビューしたのは2012年。基幹車種だけあってパワートレインは豊富で、ガソリンが1.5L直3ターボ(「318i」136馬力)、2L直4ターボ(「320i」184馬力、「328i」245馬力、「330i」252馬力)、3L直6ターボ(「340i」326馬力)。他にも2L直4ディーゼルターボ(「320d」184馬力、190馬力)や2L直4+モーター(「330e」184馬力)、3L直6ターボ+モーター(「アクティブハイブリッド3」306馬力)と多彩です。さらに、「xDrive」という4WDモデルも用意されています。
九島●マイナーチェンジは2015年で、ライトがLEDになってエンジンが新型になった。それと安全装備も充実している。
竹岡●今日試乗する「318i」は、2016年に追加されたエントリーグレード。3気筒だというのもクルマ好きでは話題になったね。
竹岡「型落ちを感じさせない完成度の高さがあります」
九島「保守王道の集大成 BMWらしさが楽しめる」
DETAIL CHECK
今の視点で見ても不満のないスポーツセダンの完成形
編集部●試乗から戻ってきましたので、お二人から感想を伺います。
竹岡●やっぱり3シリーズは実力が高いよね。乗るとしっかりしてる。個人的にはもう少し座面が高く調整できればうれしいけど。現行型はデジタルで、先代はアナログだって話があったけど、これはこれで完成されているから今乗っても不満なし。
九島●わかる。1.5L3気筒ターボのエンジンも、アクセルを深く踏み込まない限り不満なし。よくできているよ。それと、全幅が1800mmにおさまっているのは運転しやすい。ショッピングモールの駐車場なんかにいくと実感するよね。
竹岡●8速ATとのマッチングがいい。さすがBMW、お上手。それでこれは中古車だといくらくらい?
編集部●エンジンと装備で新車価格にも大きな幅があるので、全体だと下は90万円から上は500万円と幅広い状況で、物件も700台以上存在します。「318i」に限ると、200万円くらいが相場です。
九島●ディーゼルエンジンの印象がよかった記憶があるんだけど、それはどのくらいなの?
編集部●物件が多いこともあって逆転現象が起きていて、100万円後半から。ディーラーの保証付きでも総額250万円以下でねらえます。
竹岡●4WDは? 安定していて個人的には評価が高かった記憶。
編集部●とにかく物件が少ないです。FRと価格差は少ないので、いい物件と出会えたら買いですね。
九島●新車は高かったのに。でも、そういうところが中古車の醍醐味。いずれにしても3シリーズは中古輸入車の大本命ってことだね。
いい意味でタイトでドライバー優先のコックピット
操作パネルがドライバーに向いて角度が付けられた伝統のコックピットデザインを採用。マイナーチェンジで先進安全装備が充実し、自動ブレーキ機能や車線逸脱警告などが備わった。2014年以降はACCが一部グレードを除き標準。
大人でも後席でくつろげるゆとりあるインテリア
サイドサポートの充実したスポーティなフロントシートを採用。室内は大人4人乗車であれば十分に広く、走行時の静粛性にも優れている。人気グレードのMスポーツになると、シートやルーフの生地がスポーティな仕立てになる。
小排気量ターボからディーゼルそしてハイブリッドまで豊富
歴代3シリーズで初めて3気筒エンジンを搭載。排気量は1.5Lで最高出力は136馬力。主力は2L直4ターボで、定評あるガソリン版に加えて、新たに日本導入されたクリーンディーゼル仕様の評価も高かった。
後席をたたむことで長い物を積める荷室
ラゲッジ容量は標準状態で480Lで、さらに後席を倒すことで多彩な用途に対応する。またこのリアシートは4対2対4の3分割タイプでアレンジ豊富。手前部分は横方向の幅もありキャディバッグを真横に積むことができる。
試乗判定レビュー
竹岡 圭
ポジショニング[10点]
ステレオタイプな言い方をすれば、昔ながらのBMWっぽさをきちんと持っているのは、やっぱり3シリーズ以上の感じがします。その分、斬新さやユニークさは薄いけれど、クルマという乗り物として文句つけるところがないと思わせるのは流石だと思います。ハンドルを握っていても、乗せてもらっていても、独特の心地よさがあるんですよね。
装備[9点]
最新の3シリーズからインターフェースがガラリと変わったので、少々古さを感じてしまうのは事実。常に目に入るところだからというのもそうですが、タッチパネルかiDriveかという、使い勝手の差も感じてしまうのは事実。好みもありますけどね。でも逆に昔ながらのBMWっぽさが残る、ベーシックなタイプが好きという方には打ってつけともいえます。
走り[9点]
ほぼ最終モデルだけにこなれ感バッチリ。素直なハンドリングは、BMWってコレだよね!という感じ。16インチタイヤだからこそのガツガツしていない乗り心地も、助手席からすれば好感度抜群。安全装備は最新モデルからかなり変わったので、物足りなさはあるけれど、必要レベルは装備されているので安心です。個人的にはドラポジが合わないのが残念。
九島辰也
ポジショニング[10点]
時代に合わせて価値観は変化するもので、それはBMWも同じ。だが、個人の嗜好についてはオールドスタイルを愛するのもひとつのやり方。そういう意味では、こちらの先代3シリーズは、旧来からのBMWらしさ、スポーツセダンとしての完成系にあり、十分に愛用する価値がある。アナログの2連メーターや細いステアリングリムは好ましかった。
装備[9点]
現行型は「ヘイ!BMW」のコマンドで操作するインフォテインメントシステムなどハイテク満載。先代はそれと比べてしまうと見劣りするかもしれないが、じつは運転しているとそんなに気にならないのも本当だ。後期モデルであればACCや自動ブレーキも備わるし、十分といえば十分。なにより1800mmに抑えた全幅が扱いやすさ抜群でいい。
走り[9点]
アクセル操作に対するターボラグの少なさ、トランスミッションのスムーズかつ適切な変速によって1.5L3気筒ターボであっても不満はない。アクセルを大きく踏み込むシーンでは上のグレードとの違いは明確にあるが、音や振動の洗練はさすが。個人的に選ぶなら2Lのディーゼルだろう。これならトルクも十分以上で経済性にも優れる。
グーワールド 編集部
ポジショニング[10点]
誰もが知っているプレミアムブランドの定番商品。3シリーズは、昔も今も輸入車界のメインストリームです。世間的には人気に陰りのあるセダンですが、それが3シリーズになると気にならないどころか、カッコよく見えてしまうのもさすが。先代モデルは中古車物件も非常に豊富で価格も手頃。ビギナーからマニアまでおススメです。
装備[9点]
インフォテインメントシステムや先進安全装備についてはお二人のコメントのとおり。でも、高級感や快適さという部分での装備類は、この世代であってもまったく見劣りしません。Mスポーツが人気ですが、「ラグジュアリー」も大人のスポーツセダンといったセンスで見逃せません。ボディやシートの色にこだわることができるのも中古車の醍醐味です。
走り[10点]
運転していて気になるところが何もないのが3シリーズの素晴らしいところ。視界、操作系、ドライビングポジション、ドライブトレーンの洗練度など、すべてが高い次元でバランスしています。中古車になると新車時の価格差が圧縮されるので、パッケージオプションが装着された上級グレードを探したいところ。うーん、欲しくなります!