車の歴史
更新日:2021.04.28 / 掲載日:2021.04.27
国産エンジン歴史絵巻 TOYOTA 1970~1980年代編4
LASREエンジンと名付けられた、新世代の直4ユニット
1981年に最初期の1Sが登場。クランクシャフトやカムシャフトなどの主要パーツを軽量化したほか、より高い圧縮比を可能とするくさび形の燃焼室構造や、新型キャブレター、デュアルマニホールドにより燃焼効率も向上している。また静粛性向上も大きな見どころで、トヨタはこの1S以降、このタイプの構造を持つエンジンにはLASRE(レーザー)と命名している。LASREはライトウエイト(軽量)、アドバンスト(進歩した)、スーパーレスポンス(応答性が良い)の頭文字からの由来だ。
S型(製造開始年:1981年)
初搭載となる3代目セリカではカムシャフトの駆動部にタイミングベルトを採用。エンジンマウントの改良やタイミングベルトの採用により静粛性も強化。
カムロッカー機構には油圧式のラッシュアジャスターを採用。これによりタペットクリアランス調整が不要となり、メンテナンス性が大幅に向上している。
5代目セリカに搭載される3S系は16バルブが基本。ツインカムの3S-GEやターボの3S-GTEなどの高性能エンジンもラインナップ。
S型はセダン系にも搭載モデルが多数存在。3代目カムリには最上級グレードのGTにツインカムの3S-GEが採用されている。
S型は3代目セリカ以降、トヨタスポーツモデルの定番エンジンとして注目を集めたのは記憶に新しい。
苦しい時代に培った技術が 性能向上に大きく貢献
オイルショックの影響がまだ残る1982年、トヨタ自販とトヨタ自工が合併した。この世を騒がせた“工販合併”が実施された理由はいろいろあるが、その一つとして販売の現場から要望されていた、競争力のあるクルマを世に送り出す力、つまり開発体制の強化があったとされる。
そんな流れもあってエンジン開発も変化を遂げる。1970年代後期にかけて送り出されたエンジンは、年々厳しくなる環境基準をクリアするため、苦渋の選択として出力特性が抑えられるケースも多かった。ユーザーの立場からすれば、最新になるほど性能が悪くなるようなもので、これが大きな不満になっていた。
そんな悪い流れがようやく払拭できたのが1980年代半ばごろから。環境基準をクリアしつつも数多の技術革新を行うことで、性能向上も達成できるようになったのだ。例えば、従来は高性能車中心に展開されていたDOHCエンジンは普及グレードまで波及し、さらに高性能車のDOHCエンジンには多数のバルブ構造や電子制御点火、さらにターボやスーパーチャージャーなどが組み込まれるケースも現れた。
また既存エンジンの改良に加えて、軽量コンパクト、高出力を念頭において開発された新世代エンジンが登場したのもこの時代だ。直4のS型や直6のG型、V6のVZ型など、馴染みあるエンジンが続々投入されている。
ちなみにS型は強度の高いエンジンブロックがレース関係者に好まれ、幅広いレースカテゴリーで採用されたことでも有名だ。この時代、トヨタは国内外のレースに積極的に参戦し優れた成績を残しているが、S型が持つ基本性能の高さが、その栄光を下支えした格好。謂わば1980年代はトヨタスポーツの黄金期でもあったのだ。