車の歴史
更新日:2020.10.20 / 掲載日:2020.10.20
軽さは速さだ! SUZUKI FRONTE SS(LC10) インテリア

60年代のスポーツカー定番 黒基調のスパルタンなコクピット
メーターは右がスピード、中央が燃料。左のタコメーターは10000回転フルスケールで、7500~8500回転の高回転側イエローゾーンと共に0~3500回転までの低回転側イエローゾン表示もあり。
メーター右側、インパネの右端にはプル式のヘッドライトスイッチとメインキースイッチがレイアウトされる。キーシリンダーはOFF / ON / スタートの3ポジション。ハンドルロックはなし。
インパネセンター部には、右上からワイパー、シガーソケット、チョークのプルレバーが配置される。その下には5つのプリセットボタンが備わるAMラジオがレイアウトされる。
ハンドルコラムの右側に備わるプルスイッチ(レバー)は、左がハザード、右がボンネットオープナー。その右に後付けされたスイッチは、右側はホーンスイッチ、左がバッテリー直結配線のライトのスイッチとなる。
ハンドルコラムの左側には、機械式(?)となるウォッシャーポンプがレイアウトされる。その左側には後付けされた電圧計をセット。ちなみに電圧計はホンダの純正部品流用だ。
シフトレバーの右側前方のフロア部には、ヒーター用のノブが配置される。その運転席側レバーは、強制空冷用のシュラウドに付くフラップに接続され、エンジン熱の流れを切り替える。
灰皿はダッシュボードの上面中央部に配置されている。シガーライターソケットに付く提灯は当時モノの社外品シガーライターで、提灯上部にタバコを刺すと火がつくというもの。
シフトレバー、サイドブレーキレバー共にセンタートンネルに配置されるフロアタイプを採用。木製のシフトノブは純正のオリジナル。シフトパターンは右手前がバック、左奥が1速のH型4速。
シートはスポーツグレードらしく、ハイバックのバケットタイプシートを採用。運転席側は表革の傷みが激しかったため社外品に交換されているが、助手席側は破れもなくいい状態を保つ。ちなみにシートレールはサイドシルとセンタートンネルに付く。
大人二人が最低限ながら座ることができるリヤシート。座面部下とフロアの間のスペースに小物入れが設けてある。そのためなのかクッションはとても薄い。ヘッドレストやシートベルトの設定はない。
リヤシートのバックレストを外すと、その中央部にメンテナンスホールのカバーが設置されていて、それを開くとエンジン前側にアプローチできる。キャブのメンテなどはここから行える。
ドア内張りは非常にシンプル。取っ手やドアハンドル、ウインドウレギュレーターがドア前方上部に集められるレイアウトとなる。50年以上前のビニールカバーがまだ残っているのもすごい。
室内灯は一般的な天井中央部に設置されているわけではなく、運転席側のBピラー上部に配置されていた。ドア連動などはなく、オンオフだけのシンプルな装備となっている。
リヤクォーターウインドウは、Bピラー側が軸となりCピラー側が跳ね上がるフラップ式を採用している。そのロックレバーは、メッキが施された金属製となっていて見栄えも高級感あり。
可能な限りオリジナルを保ちつつ、 部品がなければ自分なりに工夫して、 走りもいじりも楽しむ
写真左:切れてしまっていたアクセルワイヤーは、3気筒のバイク用アクセルワイヤーを流用したもの。当然長さが合わず、自作ステーなどを作りアウター受けの位置を変更し機能するように仕上げたそうだ。写真中:ウインカーの視認性を高めるため、リヤバンパーにウインカーレンズを増設したそうだ。写真右:純正のままではどうしてもホーンが鳴らず、独立させた回路を増設。フロントフード内にはそれ用のリレーが設置される。
ホームコースの奥多摩を
気持ちよく走る状態へ
最後となってしまったが、このフロンテSSとオーナーの田中さんについて記しておこう。
数年前にご親戚のガレージで不動状態で保管されていた、このフロンテSSを譲ってもらい、車検が取れるようにコツコツとご自分の手で再生。1年前に晴れてナンバーを取得したという。
ちなみに田中さんで3代目オーナーとなるこのフロンテSS。2代目オーナーのご親戚も、その前の所有者も、ガレージ保管だったようで、紫外線などによる劣化や錆が極めて少ない状態であったそうだ。ちなみにボディペイントは補修部もあるようだが、基本的にはオリジナルのまま。再生時にこつこつと磨き上げ、この状態にしたそうだ。凹みや傷、塗装の傷みもなくはないが、オリジナルペイントを残すべく、あえてそのままにしているそうだ。
程度はかなりよかったとはいえ、もちろん苦労もなく再生できたわけではない。ご親戚のガレージで長期間、不動のまま放置されていたので、各部を正常な状態に整備するのはかなりのご苦労があったはず。また旧車の部品供給が今や日本の中では最もよいスズキの車両とはいえ、やはり50年前の車両ともなると製造中止となった部品ばかりで、車検を通せる状態に整備するのに、さまざまな試行錯誤をされたそうだ。
しかしそういったことも楽しみに変え、昨年春に車検を取得。公道復帰後もトラブルが出れば修理するということを繰り返し、今の好調な状態にまで仕上げ、田中さんのホームコースである奥多摩周辺のワインディングや、旧車イベントへの参加の道中でのドライブを楽しんでいるそうだ。