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更新日:2019.06.07 / 掲載日:2018.12.10

日産 GT-R【ONE MAKE MARKET RESEARCH】

文●工藤貴宏
(掲載されている内容はグー本誌 2018年12月掲載の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2018年11月調べ。


その凄さは、なんといっても世界のスーパーカーと互角に戦える走行性能。日産の技術の結晶ともいえるリアルスポーツカーは、度重なる改良で常に進化し続けている。

全長×全幅×全高:4710×1895×1370mm ●ホイールベース:2780mm ●トレッド前/後:1590/1600mm ●車両重量:1760kg ●総排気量:3799cc ●エンジン:V6DOHCツインターボ ●最高出力:570ps/6800rpm ●最大トルク:65.0kgm/3300-5800rpm ●サスペンション前:ダブルウィッシュボーン/後:マルチリンク ●ブレーキ前後:Vディスク ●タイヤ前:255/40ZRF20/後:285/35ZRF20 ●中古車参考価格帯:430万円~1220万円(07年~18年 ※NISMOを除く)

きわめて高い走行性能は今なお世界第一線級

 GT-Rは日産を代表する、というよりも日本を代表するリアルスポーツカー。その凄さは卓越した走行性能にある。
 デビューは2007年とすでに11年が経過しているが、改良を重ねることで、世界第一線レベルの速さを常にキープ。たとえばスポーツカーの速さの指針となるドイツの過酷なサーキット「ニュルブルクリンク」のラップタイムは、2013年に市販可能な車両におけるアタックで7分8秒169を記録。これは当時の量産市販車最速であり、現在においても価格3000万円以下、かつ一般の人でも購入可能な量産市販車としてはもっとも速い記録なのだ。走行性能は数千万円級のスーパーカーと肩を並べるレベルである。
 もうひとつの特徴は、いわゆるスーパーカーといわれる類の車両と大きく違う扱いやすさと利便性だ。視界がよくて車庫入れや狭い道も含めて運転しやすいことに加えて、だれでも、それこそ免許取り立てのひとでも簡単に運転できる懐の広さがあり、雨や雪など悪天候でもナーバスにならず安心して操れるのが特徴的である。後席やトランクもあって実用的なので、スーパーカーオーナーのなかには、日常的な移動用の車としてGT-Rを選ぶ人も少なくないという。

[EVOLUTION OF GT-R]絶え間なく続いたGT-Rの進化の過程

 「R35」という型式で呼ばれる現行のGT-Rは、進化を繰り返して熟成されてきた。進化を簡単に言うと、デビュー当初は480馬力だったエンジンパワーは最新仕様では570馬力までアップ。90馬力も増えているのだ。そして突然変異的な「GT-R NISMO」ではなんと600馬力に到達。デザインも変化している。

2007年10月:GT-Rを発表
第三世代のGT-Rとしてデビュー。かつては「スカイラインGT-R」としてスカイラインをベースにした超高性能モデルだったが、この世代からは「日産GT-R」としてスカイラインから独立。

2008年12月:一部改良
エンジンの精度向上とコンピューター制御プログラムの変更により、出力を従来比5馬力アップの485馬力とした。サスセッティングもさらに煮詰めて進化。

2009年1月:スペックVを追加
高性能な「スペックV」を追加。カーボンセラミックブレーキ、専用サス、ハイグリップタイヤ、レイズ製鍛造ホイール、レカロ製カーボンバケットシート、チタン製排気管などを装着。

2009年10月:一部改良
触媒を変更して低中速域のレスポンスを向上したほか、標準車と「スペックV」どちらもサスペンションをリセッティング。標準車はリヤフロアの冷却性も向上。

2010年10月:2011年モデルを発表
前部の開口部を増やすなど、デビュー以来はじめて外観を変更。530馬力まで出力を高めたエンジン、精度と剛性を高めた車体、そしてサスの煮詰めやブレーキ性能向上など内容は多岐に及ぶ。

2011年11月:2012年モデルを発表
12年モデルとしてエンジン出力を550馬力に向上。操作感と静粛性を高めたトランスミッション、強化したボディ、進化したサスなどを採用。

2012年11月:2013年モデルを発表
レスポンスと高回転域の伸び感を改良したエンジンや剛性をアップした車体を採用。サスもさらなる熟成がはかられて13年モデルへと進化した。バックビューモニターも標準装備化。

2013年11月:2014年モデルを発表 NISMOを発表
LEDポジションランプを組み込むなど二度目の外観リファインを実施。よりリニアな挙動を実現したシャシーやボディ剛性の最適化など中身も進化した。究極の走りを求めた「NISMO」も登場。

2014年11月:2015年モデルを発表
さらなる高度な次元を目指したサスペンションをはじめ、タイヤ、ブレーキ、ステアリング、そしてドライブトレーンなど広範囲に改良を施して進化。

2016年7月:2017年モデルを発表
外観、内装ともにデザインを大幅変更。デビュー以来はじめてインパネの意匠も改められた。570馬力まで出力を高めたエンジンや加速をスムーズにしたトランスミッションなど性能も強化。

2016年8月:NISMOをマイナーチェンジ
●フロントバンパーを新デザインとし、空力性能と冷却性能を向上。インテリアも標準車同様に新意匠を採用した。ボディ剛性向上、サスペンション改良も実施。

2017年11月:2018年モデルを発表
盗難防止システムの全車標準化、インフォテイメントシステムにおけるApple CarPlay対応などが施された。この進化では、走行性能面の変更はない。

凝った構造とつくり込みが高い運動性能の理由

 世界のスーパーカーやスーパースポーツカーとも互角に戦えるGT-Rの凄さの秘密は、そのつくり込みや進化にある。たとえばクルマにとって心臓ともいえるエンジンは一般的に製造ラインで流れ作業によって大量製造されるが、GT-Rではつくり方がまったく異なる。エンジンの生産現場である日産横浜工場で働くスタッフ約1900人のうち、わずか5人しかいない選ばれた熟練技能工が、クリーンルームと呼ばれる専用の部屋においてすべての工程をひとりで手作業で組み立てていく。
 クリーンルームとはチリやホコリがエンジン内に混入しないように空気まで管理された病院の手術室のような環境の作業室。そこで1基のエンジンを構成する375個の部品を、まるで魂を込めるかのように5~6時間かけて組み付けていくのだ。そんなレーシングカーのような方法でGT-Rのエンジンはつくられる。そしてエンジン以外でも普通の市販車では考えられない構造やつくり方が多いのである。
 また、年表を見ればわかるようにGT-Rは毎年、何らかの改良が行われている。サスペンションや車体設計などにも細かく手が入り、性能をアップデート。だから今なお一流の性能を保ち続けている。

【INTERIOR】上質な仕立てからスパルタンまで選べる

※写真は2017年モデル

 日常生活にも使える快適性の高さも自慢のGT-R。室内は後席を備えて実用性が高く、長時間移動でも疲れにくいシートが組み込まれている。シートは仕様により上質なレザーも選べ、最上級のインテリアをコーディネートした「エゴイスト」も2010年から2013年まで設定された。対照的に「GT-R NISMO」は速さを追求した武骨なインテリア仕上げだ。

※写真は2017年モデル

  • ※写真は2017年モデル

メーターやセンターコンソールにはカーボン柄があしらわれ、レーシングカーのような雰囲気を感じさせる。340km/hまで刻まれる速度計は、150km/h以上の高速域での見やすさを重視したデザインだ。

イタルデザインとのコラボ仕様はお値段1億円以上!?

 GT-Rのデビュー50周年を記念して企画された「GT-R 50byイタルデザイン」。「NISMO」をベースに専用デザインを施した特別仕様で、50台以下が実際に販売される予定となっている。

【MECHANISM】世界最高峰の速さを目指すための専用設計

 GT-Rに搭載されるメカニズムは基本的に専用設計。車体の構造をはじめ、エンジンやトランスミッションといったパワートレイン、サスペンションもGT-Rのために特別に開発されたものだ。これは日本の量産車としては異例なことで、コストを度外視して走りのために妥協のないクルマづくりが行われていることの証ともいえる。

前後重量配分を整えるため、トランスミッションは車両後方(後席下付近)に配置。

ひとりが手作業で組み上げる匠のエンジニアたち

 エンジン組付けは、すべてをひとりの匠が担当し手作業で行う。1000分の1ミリというクリアランスまで調整し、エンジンには組付けを担当した職人の名前が刻まれたプレートが装着される。

【先代モデル】スカイライン GT-R

 中古車市場において、GT-Rはすべての世代で人気車種。新しい個体でも25年前の生産となる「R32」型でも、驚くほど高い値段で取引される。

BNR32

GT-Rの復活を果たした人気モデル
第2世代として復活を果たしたGT-Rの最初のモデル。R34型まで使われる排気量2.6Lのターボエンジンと高度な4WDシステムを初搭載する。 ●中古車参考価格帯:290万円~1000万円(89年~93年 ※全グレード)

BNR33

超高速領域の走行性能を高めた
ベースとなるスカイラインのフルモデルチェンジによりGT-Rも新型へ進化。ホイールベースが伸びたことで超高速領域の安定性が大幅に増した。 ●中古車参考価格帯:220万円~560万円(93年~98年 ※全グレード)

BNR34

スカイラインGT-Rの頂点に立つ
第2世代GT-Rの最終型がR34。空力性能が大幅に強化され、「Vスペック」では車体全体が下向きの翼として機能し車体を下に押し付ける力を発生。 ●中古車参考価格帯:510万円~1500万円(99年~02年 ※全グレード)

【MARKET DATA】基本的に相場は高水準を維持ねらうなら10年落ち

 デビューから10年以上が経過するも、相場は相変わらず高値をキープ。高年式は新車価格とあまり変わらない相場だが、初期型は500万円台の物件も見られる。とくに08年式が多く、リーズナブルな車両を探しやすい。改造車も流通するが、割合はそれほど多くないようだ。

  • 年式
    デビュー翌年の2008年式がもっとも豊富で、全体の3割以上を占める。それを除けばどの年式も均等に流通し、高年式も数が豊富だ。

  • 走行距離
    デビューから10年以上経つわりに、低走行な個体が揃う。1万km未満は3割ほど流通するが、これらの多くは高年式物件となっている。

  • グレード
    中古車市場には大きくわけて4つのグレードが存在する。その大部分を占めるのが、最上級の「プレミアムエディション」。ニスモは少なめ。

自動車ジャーナリスト工藤貴宏の「日産 GT-RのGOODとBAD」

【GOOD】世界最高峰の性能を手に入れられる

 GT-Rを所有するということは、世界最高峰の走行性能を手に入れるということ。走りは素晴らしく、運転する歓びと世界屈指の高性能車を所有する歓びを味わえるのはクルマ好きにとって最高の幸せである。同等の走行性能を備えるライバルたちに比べると価格が割安なだけでなく、信頼性も高く高性能を維持しやすいという事実も美点だ。


【BAD】ランニングコストは一般車より高い

 性能的には文句の付け所のないGT-Rだが、10年間基本設計が変わらないのは残念である。また、これから買って所有するのならば気にするべきポイントがある。維持費の高さだ。同等の性能を持つ輸入車に比べると部品代も作業工賃も安いが、とはいえ使われている部品が一般的なクルマに比べてクオリティが高いので高価であり、タイヤなど消耗品も安くない。

編集部イチオシ!

買いのグレードは「プレミアムエディション」

ニスモを除くすべてのグレードは、基本的にメカは共通。グレードは内外装や足まわりなどの違いになるが、専用の内装が与えられた「プレミアムエディション」が探しやすい。

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グーネットマガジン編集部

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