モータースポーツ
更新日:2022.03.22 / 掲載日:2022.03.22
トヨタ スーパー耐久へ水素エンジンカローラ等燃料異なる3車で参戦
トヨタは、3月19日~20日に行われた「ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第1戦 SUZUKA 5時間耐久レース」に参戦、2022年のスーパー耐久シリーズでは水素エンジン車、カーボンニュートラル燃料使用車、ガソリン車の3台体制で参戦することと、同レースでの水素とカーボンニュートラル燃料を「つくる」「はこぶ」「つかう」取り組みについて具体的な方針を明らかにした。
昨年話題の水素エンジンカローラはじめ3車両をレースに投入、カーボンニュートラル社会の実現目指す
同レースでは、それぞれ異なる燃料を使用するパワートレーンを搭載した、3つの参戦車両をスーパー耐久シリーズに投入。これらの車両をモータースポーツの現場でアジャイルに鍛えて課題を解決していくことで、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を進めるとともに、カーボンニュートラル社会の実現を目指していく。参戦車両詳細は下記の通り。
水素エンジンカローラ
水素エンジンカローラは昨年、スーパー耐久シリーズに計4戦参戦し、モータースポーツを通じたアジャイルな開発を進めてきた。昨年5月の初戦から11月の最終戦までの約半年で、出力24%、トルク33%向上、異常燃焼の制御も実現するなど、エンジン性能をガソリンエンジン並みまで鍛え上げてきた。一方で、実用化に向けては、航続距離の改善や水素充填時間の短縮を課題に挙げている。
GR86(カーボンニュートラル燃料)
内燃機関を活用した燃料の選択肢を広げる挑戦として、カーボンニュートラル燃料を使用する、GR86をベースとした新たな車両を今年から投入した。車両には、GRヤリスと水素エンジンカローラのエンジンをベースに開発した1.4Lターボエンジンを搭載する。今回、スバルもカーボンニュートラル燃料使用車両で参戦しており、2車両で得た知見をBRZおよびGR86の開発に繋げていくとしている。
なお、カーボンニュートラル燃料は、燃焼時に二酸化炭素を排出するが、燃料自体に大気中に存在する二酸化炭素を使用しているため、排出量はプラスマイナスゼロになると考えられている。さらに、既存のインフラや車両技術を活用できることから、カーボンニュートラル実現のための手段の一つとして注目されている。
GR86(ガソリン)
今回は第2戦「富士SUPER TEC 24時間レース」より、トムススピリットの参戦車両としてGR86をベースとした車両を投入する。ST-Qクラスで出場するGR86(カーボンニュートラル燃料)と比べ、より市販車に近い車両であることから、このレースで得た知見は、よりダイレクトに市販モデルやパーツの開発に生かせるものとしている。
水素とカーボンニュートラル燃料を「つくる」「はこぶ」「つかう」取り組みについて
一方でトヨタでは同レースを通じ、他業界との連携によって、水素やカーボンニュートラル燃料について「つくる」「はこぶ」「つかう」という3つの取り組みも、引き続き推し進めていく。
つくる
福島県浪江町(FH2R)の太陽光由来水素に加え、今回新たに山梨県、東京電力ホールディングス、東レが連携して製造する太陽光由来水素の供給を受け、水素エンジンカローラに使用する。
3者が連携して製造する水素は、山梨県甲府市の米倉山電力貯蔵技術研究サイト内に建設したP2G(パワー・ツー・ガス)システムにより、太陽光由来の電力で水を電気分解することで1時間あたり最大370Nm3製造され、山梨県内の工場などで利用されている。また、山梨県は、同システムを国内外へ展開して水素エネルギー社会の構築を進めるため、2社とパワー・ツー・ガスを専業とする国内初の企業「株式会社やまなしハイドロジェンカンパニー」を2月に設立。P2Gシステムの技術開発だけでなく、営業活動にも力を入れている。
はこぶ
水素エンジンカローラに使用する水素は、トヨタ輸送のバイオ燃料トレーラーや、Commercial Japan Partnership Technologies(以下、CJPT)のFC小型トラックなどでサーキットまで運送している。
これまではその運搬に金属製タンクを利用していたが、今回から、FCEVのMIRAIの開発で培った、軽量かつ高圧で水素運搬可能な樹脂ライナー製タンクを搭載したカードルを、CJPTのFC小型トラックに使用。従来品に比べ、タンク圧力は20MPaから45MPaまで上げることが可能となり、水素運搬量は前回大会と比べ、約4倍に増量。さらに、今後はタンク圧力を70MPaまで上げ、より多量の水素の効率的な運搬の実現を目指すとしている。
つかう
今回のレースでは、水素エンジンカローラが抱える「航続距離の改善」と「水素重点時間の短縮」という二つの課題解決にも取り組む。
「航続距離の改善」については、燃料噴射を緻密にコントロールすることで異常燃焼を制御し、効率的にタンク内の水素を使えるようにした結果、1回の水素充填で走行可能な距離を、前回大会から約20%向上。また、さらなる航続距離の改善を目指し、今回使用している気体水素から液体水素に変更する新技術への挑戦を開始。今後実現すれば、体積当たりのエネルギー密度向上により、航続距離を大きく伸ばせることに加え、使用できる水素状態の選択肢も広がるという。
「水素充填時間の短縮」については、車両の両側から充填が出来るようにするなどの改良を昨年行い、レースを重ねるごとに水素充填時間を短縮してきた。今回は、将来の水素利用拡大を見据え、充填時の昇圧率をさらに高くする「大流量充填」に挑戦。通常、一気に充填を行うとタンク内の温度が急上昇するが、上限温度に倒達しないよう安全を担保するとともに、大流量に対応できるよう充填口と配管を変更した。その結果、水素充填時間は前回大会の2分弱から、1分半まで短縮したという。
マツダ、スバルと“共闘”
今回、トヨタがGR86(カーボンニュートラル燃料)で参戦するST-Qクラスでは、マツダ「MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO」、そしてスバル「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」もカーボンニュートラル燃料を使用して参戦。3社は協調領域で情報交換を行い、技術開発のスピード向上を図っていくとしている。
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