故障・修理
更新日:2018.10.15 / 掲載日:2018.10.15
絶対やっちゃダメ!禁断のクルマ実験室07 回転中のエンジンを水没させる!
ウォーターハンマー現象を起こしてみたい!
三菱重工業製 メイキ GM181L
4ストローク単気筒OHV強制空冷式ガソリン
ボア・ストローク:68×50mm
排気量:181cc
燃焼室容積:23.4cc
潤滑方式:飛沫潤滑
燃料供給:キャブレター
回転制御:遠心ガバナー式
点火方式:無接点フライホイールマグネット(MTI)定格出力:3.3kW[4.5PS]/3600rpm
最高出力:4.4kW[6.0PS]/4000rpm
最大トルク:11.57N・m/2800rpm
乾燥重量:15.8kg
※スペックは海外汎用モデルから記載。
クルマごと沈めるプランを何度か検討するも、スタッフの安全性確保や環境面への対策が難しいため、小型エンジンで実験。これは、農機のMMR60から降ろしたエンジンで、圧縮比は8.3~8.5:1程度と推測。ラベルのエンジン回転数は1/2に減速された動力取り出し軸もの。
近年は毎年異常な気候が続き、酷暑や猛暑が続いたかと思えば、長雨や暴風雨が襲ってくるなどして、様々な被害が目立ってきている。クルマにとっても、水害は駐車中でも走行中でも致命傷になることがある。今回は、水深の深い場所を通過した時に起こりやすいウォーターハンマー現象を再現すべく、エンジンの水没にチャレンジした。
ウォーターハンマー現象とは、エンジンの吸気系に水を吸い込んで、燃焼室で圧縮しようとした結果、非圧縮の水によってピストンが上昇できなくなり、それまでの回転慣性や他のシリンダーの燃焼でムリに回された結果、エンジンが破壊されるトラブルをいう。
これは、車両の吸気系のデザインによっても変わるが、一般的に吸気口が上にある方が水を吸い込みにくい。渡河走行も考慮したクロカン系では、エンジンルームに浸水しても、吸気は最後まで影響を受けないよう考慮している。
例えば、新型ジムニーなどは、テストを通じて吸気口の位置を検討するのはもちろん、後方へ向けて直撃を受けないように配慮している。
水没試験はさすがにプリウスではやりづらいので、小型の汎用エンジンで実験。エンジンを掛けたまま水槽に落とすのだが、最初は吸気口に水面が少し触れる程度にセット。水分が入ったとたんにエンジンは不調になり、引き上げないままだと停止してしまう。チェックすると、キャブレターはもちろん、シリンダーにも水が吸い込まれ、スパークプラグの電極にも水滴が挟まっていた。
吸気系に少し水が触れた程度のエンジン停止だと、吸気系やスパークプラグから水分を飛ばすだけで、再始動ができた。そこで、次は一気に水中へ沈めてみた。
今回使ったような汎用エンジンは、ガバナーという回転調整器があって、負荷が変わっても設定回転を維持するようになっている。3600rpmを保ったまま(空吹かしなのでスロットル開度は小さい)、ドボンと沈めると、キュっと鳴いたような音を立ててサッと停止。
ここまでやると、再始動の準備に手を焼くことになる。スパークプラグを外して何度もリコイルスターターを引っ張ってシリンダーの水分を飛ばすのだが、少し時間を置くとなぜかシリンダーに水が溜まってしまう。幸い、点火系は無接点式(ポイントレス)で、イグニッションキーなどはないのでスパークプラグの電極を乾かすとスパークが出るようになった。再始動後でも異音もなく、想定した致命傷は与えられなかった。
実際の車両は、吸気系も複雑なのでマニホールドやレゾネーター等にも水分が貯まるだろうから、より影響を受けるだろうし、多気筒なので水を吸い込んだシリンダーのピストンが無理やり押される可能性も高い。水を吸引した時、運が良ければ掃除程度で済むと考えておいたほうがいいだろう。
今回は水道水に沈めたので、水没事例では好条件。簡易清掃で復活できた(ただアイドリングがちょっと苦しそう)。泥水や塩水だと悲惨だろう。単気筒のためか、エンジン回転数が低かったためか、コンロッドが曲がるような強烈なウォーターハンマー現象は起こらなかった。