故障・修理
更新日:2025.08.07 / 掲載日:2019.06.25
ロータリーエンジンの仕組み|特徴や再度注目されている理由を紹介

ロータリーエンジンは、一般的なピストンエンジン(レシプロエンジン)とは異なり、ローターの回転運動で直接動力を生み出す独自構造が特徴です。コンパクトで高出力、滑らかな高回転域の伸びなど魅力がある一方、燃費性能や耐久性、整備費用といった課題も抱えています。
しかし近年、水素燃料との相性の良さや発電用エンジンとしての活用により再び注目され、2023年にはMX-30 Rotary-EVに採用されました。
この記事では、ロータリーエンジンの仕組みやピストンエンジンとの違い、メリット・デメリット、そして再び注目される理由までくわしく解説します。
1. ロータリーエンジンとは

ロータリーエンジンとは、ピストンを使わず三角形(おむすび型)のローターが回転することで動力を得られるエンジンのことです。
ロータリーエンジン搭載車は、2012年6月「RX-8」で生産が終了しましたが、2023年には発電用エンジンとして「MX-30 Rotary-EV」にも採用されています。
ここでは、ロータリーエンジンの具体的な仕組みと、従来のピストンエンジンとの違いについて解説します。
(1) ロータリーエンジンの仕組み
ロータリーエンジンは、おむすび型ローターがまゆ型のハウジング内を偏心しながら回転し、その動きで動力を生み出すエンジンです。ハウジングとローターの間にできる3つの部屋(作動室)が吸気・圧縮・燃焼・排気の役割を連続して担います。
ローターが1回転する間に、各作動室が順番に燃焼するため、4ストロークエンジンよりも燃焼回数が多く、スムーズに高回転域まで伸びるのが特徴です。また、ローターの回転はエキセントリックシャフト(ピストンエンジンのクランクシャフトにあたる部品)に直接伝わり、そのまま駆動力として活用されます。
(2) ピストンエンジンとの違い
ロータリーエンジンとピストンエンジン(レシプロエンジン)では、動力を得る仕組みに大きな違いがあります。
ピストンエンジンはシリンダー内をピストンが往復運動し、その動きをクランクシャフトで回転運動に変換して駆動力を得る構造です。
一方ロータリーエンジンは、ローターの回転運動からそのまま駆動力を得るため、振動が少なく回転フィール(回転時の感触や乗り味)が滑らかです。
2. ロータリーエンジンのメリット
ロータリーエンジンには、ピストンエンジンでは得られない魅力があります。
具体的には、軽量コンパクトで高出力を発揮できる点や、滑らかに高回転まで伸びる特性、さらに低振動で静かな動作音などが挙げられます。
ここでは、ロータリーエンジンの主なメリットを3つ解説しましょう。
(1) コンパクトで高出力
構造がシンプルで部品点数が少なく、小型で軽量です。
結果として、車両の低重心化や搭載時の重量配分が良くなり、走行性能の向上につながります。さらに、ピストンエンジンより小さな排気量でも同等以上の出力を発揮できるため、スポーツカーなどの高出力エンジンとして採用されてきました。
(2) スムーズな高回転域の伸び
ロータリーエンジンは、ピストンエンジンと違い往復運動を回転運動に変換するためのエネルギーロスがありません。最初からローターの回転運動を動力として得るので、高回転まで滑らかに吹け上がります。
さらに、エンジン音も独特で、高回転域でも不快な振動が少なく、ドライバーは一体感を感じながら心地よい加速を楽しめます。この伸びやかさは、ロータリーエンジンならではの魅力といえるでしょう。
(3) 低振動で静粛性に優れる
ロータリーエンジンは回転バランスに優れ、振動が少ないことも特徴です。
ピストンエンジン特有の上下動による揺れがなく、静粛性も高いため、街乗りから高速走行まで快適に運転できます。こうした乗り心地の良さも、多くのファンに支持される理由のひとつです。
3. ロータリーエンジンのデメリット

ロータリーエンジンには魅力的な特徴がある一方で、実用面でのデメリットも存在します。とくに燃費性能や耐久性、整備費用などは購入時に理解しておきたいポイントです。
ここでは、ロータリーエンジンのデメリットを3つ解説します。
(1) 燃費の悪さと排ガス規制
ロータリーエンジンは、燃費性能の面ではピストンエンジンに劣る傾向があります。
構造上、燃焼室が広くて熱効率が低いため、同排気量のピストンエンジンより燃料消費が多くなります。
また、排ガス中の有害物質も多く、環境規制への対応が難しいことも、生産終了につながった要因のひとつです。
(2) 耐久性やオイル消費の問題
ロータリーエンジンは、耐久性の面でも注意が必要です。
ローターの各頂点にある燃焼室の気密性を保つためのアペックスシールが摩耗しやすく、長期間使用すると圧縮不良が起こりやすい傾向にあります。部品を交換する際にエンジンをオーバーホールする必要があるため、高額な修理費用がかかってしまうのです。
さらに、エンジン内部の潤滑を保つためにオイルを燃焼室へ噴射するため、ピストンエンジンよりオイル消費量が多くなり、こまめなオイル管理が欠かせません。
(3) 修理・整備費用や税金が高額
ロータリーエンジンは特殊構造のため整備できる工場が限られます。
専用工具や知識が必要になることから、修理やオーバーホールの費用は高額になる傾向です。とくにアペックスシール交換やエンジン載せ替えが必要な場合、数十万円単位の出費になることもあります。
さらに、同排気量のピストンエンジンに比べて自動車税が高くなります。自動車税や排気量区分など法的なあつかいは、排気量に「1.5倍」の係数を掛けて計算されるためです。
ピストンエンジンより吸気・燃焼サイクルが多く、実質的な出力や性能をそろえる目的で導入されています。
たとえば、RX-8の排気量は1,308ccですが、税制上は1.5倍の係数を掛けた1,962cc(2リッタークラス)になるため、自動車税が高くなります。
4. ロータリーエンジンが再度注目されている理由
ロータリーエンジンは、2012年にマツダRX-8の生産終了で姿を消しましたが、近年再び注目されています。
その理由のひとつが水素燃料との相性です。水素は燃焼しても二酸化炭素を排出せず、水になるだけなので環境負荷が少なく、カーボンニュートラルの実現に貢献します。
ただし、ピストンエンジンでは排気バルブが高温になるため、着火性が非常に高い水素は、スパークプラグで点火させる前に自然着火(早期着火)しやすいという課題があるのです。
一方、ロータリーエンジンは燃焼室の構造上、排気バルブのような高温になりにくく、自然着火(早期着火)が起きにくいため水素燃料に適しています。
さらにマツダは、ロータリーを発電用エンジンとしてEVに搭載する開発も進めています。MX-30 Rotary-EVでは新開発の8C型ユニットを採用しました。
環境対応と走る楽しさを両立するマツダの挑戦により、ロータリーエンジンは再び脚光を浴びています。
5. 過去のロータリーエンジン搭載車一覧

ロータリーエンジン車一覧を見ていくと、マツダがこの技術に注いできた情熱が伝わります。
世界で唯一、量産車への搭載を実現してきたメーカーとして、多くの名車を生み出してきました。ここでは代表的なモデルを紹介します。
まず、もっとも有名なのは「RX-7」です。
1978年に初代が発売され、軽量ボディにコンパクトで高出力なロータリーエンジンを搭載したことで人気を集めました。1982年にはターボ仕様が追加され、レースでも活躍しました。
その後の2代目、3代目でもターボ仕様が引き継がれ、スポーツカー市場で確固たる地位を築きました。
2003年に登場した「RX-8」は、4ドア4シーターのクーペです。観音開きドアを採用した独特のデザインが特徴で、13B-MSP型(通称「RENESIS(レネシス)」)ロータリーエンジンを搭載し排ガス性能の向上も図られましたが、2012年に生産が終了しています。
さらに、1967年発売の「コスモスポーツ」も忘れられない存在です。世界初の量産ロータリー搭載車として、マツダの技術力を世に示しました。
6. エンジンに関することはグーネットピットにお任せください
ロータリーエンジンは、コンパクトで高出力、滑らかな回転フィールなど独自の魅力を持つ一方、燃費性能や耐久性、整備費用といった課題も抱えています。ただ、発電用エンジンとしてMX-30 Rotary-EVに搭載されたことで、水素燃料との組み合わせによる将来性にも注目が集まっています。
もしロータリーエンジン車の点検や修理を検討する際は、グーネットピットでお近くの整備工場を探してみてください。確かな技術を持つプロが、愛車を最適な状態へ仕上げてくれます。