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更新日:2022.04.01 / 掲載日:2021.12.24
カローラクロス 実力再チェック【全タイプ徹底比較検討】
パワートレーン、装備、etc…購入最終決定特別指南!

「カローラ」の名を継ぐコンパクトSUVは、その大名跡にふさわしい実力か否か、そしてベストバイは? コスパを睨みつつ、購入検討の最終決定を導く。
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之/澤田和久
カローラの名を裏切らない、好バランスな実用SUV
実用性とコスパの両立は
カローラシリーズMVP
全高高く、室内高に余裕を持たせられるSUVパッケージングを活かした新趣向のワゴンと見るのが最もカローラクロスの実態に近い。もちろん、最低地上高などの悪路対応力は一般的な乗用車に比べるとアドバンテージはあるが、SUVとしては初級レベル。しかも4WDは生活四駆型であり、ハイブリッド車にしか設定されない。
とはいえ、一般乗用車なら鼻打ち腹擦りに気を遣うような路面も気楽に走れ、見晴らしのいいキャビンに余裕の荷室容量となればレジャー用途適性は一気に高まる。つまりカローラクロスはウェルバランスの実用車なのだ。
実用性を重視すれば欠かせない要点がコスパ。同車の開発要点のひとつでもある。FF車のリヤサスにはGA-Cプラットフォームで唯一となるトーションビーム式を採用。ダブルウィッシュボーンに対して軽量安価が利点だが、乗り心地と操安の両立点が低く、走りの質を求めれば退歩の感は否めない。しかし、結果としてカローラクロスが他のカローラ系と同様の予算帯に収まる価格設定となり、実用車としてのコスパではカローラ系で最も優れたモデルとなった。ミニバンは不要だが、実用性を重視するユーザーは注目の一車だ。
【再検討】カローラ クロスはこんなクルマ
TOYOTA カローラ クロス

既存メカニズムを活用して低価格を実現した世界戦略車
東南アジアや北米で先行して発売されたグローバル戦略車。国内向けには独自のフェイスデザインが与えられるなど、海外向けを無理に押し付けられたような印象はなく、国内ユーザーのトヨタ&カローラに対する期待を損なわない。2015年の現行(4代目)プリウスから採用されたTNGAアーキテクチャーを採用しつつ、エンジンは2009年以来の1.8ℓ、FF車のリヤサスは簡便なトーションビーム式を採用するなど、大衆車カローラにふさわしい価格で実用性とSUV的価値を提供する。





早くもカローラの代表選手に

【再検討】2WD(FF)か、4WDか<価格差約20万円>
4WDは燃費低下が小さく、リヤサスの形式も異なる
ハイブリッド車に後輪を独立した電動駆動とした4WDシステムのE-Fourを設定。トヨタ系ハイブリッド車では定番となっているが、RAV4以上が後輪駆動に大出力型の同期モーターを採用するのに対してカローラクロスは小出力の誘導モーターを用いる。滑りやすい路面での発進や低速での補助を主目的とした設計であり、機能的には簡易型E-Fourとも言えるシステムであり、4WD性能は降雪地域での実用性向上、つまりは生活四駆なのだ。ちなみにWLTC総合モード燃費の低下率は8%弱である。
また、4WD車はリヤサスにダブルウィッシュボーンを採用。車重や駆動負荷変動の影響もあるのだろうが、据わりのいい操縦感覚や乗り心地の雑味が減少。大差というほどでもないが、走りの質感を求めるならFF車以上。価格差に見合うとは言えないまでも、雪路走行の可能性も考えられるユーザーならば投資価値はある。





【再検討】ガソリンか、ハイブリッドか<価格差約35万円>
ひと世代前のエンジンをハイブリッドシステムがカバー
カローラクロスに限らずカローラ系に共通しているのだが、ハイブリッド車もガソリン車も搭載エンジンはダイナミックフォースエンジン以前、つまりヤリス クロスやRAV4より一世代前のタイプだ。1.8ℓの排気量設定は車格には十分だが、ダイナミックフォースエンジンと比べると反応や力感で劣る。ただ、エンジン性能がドライバビリティに直結しないハイブリッド車はエンジン制御等で多少旧世代感はあるものの、それほど目立たない。ならばガソリン車はダメかというとそうでもないのが悩ましいところ。CVTの変速制御や微小なアクセル制御での追従性などは一般ガソリン車相対では優れている。実用性基準のコスパならガソリン車が有利だが、価格差を燃費で取り戻すのは難しいとはいえ、ドライバビリティ面での優位性など総合的にはハイブリッド車が魅力的。予算的に無理がなければハイブリッド車を選ぶのが無難だ。


おすすめパワートレーンは?
ハイブリッド車狙いなら
4WD車も射程に入る
予算潤沢ならハイブリッド・4WDがベスト。価格を除けば4WDによる燃費低下が唯一のウイークポイント。ただし、WLTC総合モードでFFより8%弱低下するとはいえ、ガソリン車よりも約10㎞/ℓも優れている。気になるのは価格だ。同グレードで比較するとハイブリッド車はガソリン車の35万円高、ハイブリッド4WD車はさらに約20万円高く、ガソリン車との価格差は約55万円。実用性の高さでカローラクロスを考えているユーザーには厳しい価格差だ。ただし、ハイブリッド車狙いなら4WDというのは大いにアリ。
【おすすめ】ハイブリッド・4WD

【再検討】狙い目装備のグレードは<価格差最大約40万円>
Zならダウンサイザーも納得
コスパ追求ならSよりGだ
実用性重視というと経済志向に偏った印象を持つかもしれないが、ダウンサイジングの要点のひとつでもあり、その狙いならば内外装や装備も上級のものを求めるのも不思議ではない。最上級グレードのZは正にそんな設定である。カローラ系では唯一となる運転席パワーシートを標準装備。プレミアム性を高める装備であり、上級クラスから移行してきたユーザーには魅力だ。また、ハンズフリー機能を備えたパワーバックドアも標準装着している。
ただ、実用性への影響が大きな装備はグレード間格差が少なく、割り切れるならベーシックなGでも十分だ。OPの拡張性を考慮するなら中間設定のSをベースにOPで仕立てるのも手なのだが、装備差となるLEDフォグランプとパワーバックドアを選択した時点でZとの価格差は14万円。運転席パワーシートや内外装の艤装加飾の違いを考慮するとZを選んだほうが買い得とも言える。
【G“X”】主な装備
入門グレードながらトヨタセーフティセンスやディスプレイオーディオなどの基本装備は標準装着。
【G】主な装備
後方モニターや非接触キーが標準、メーターリングは加飾付き。ホイールは17インチ。




【S】主な装備(Gの装備に加えて/Gから16万円高)
ルーフレールや金属調外装、オプティトロンメーターを装備する。




【Z】主な装備(Sの装備に加えて/Sから24万円高)
切削光輝+ダークメタリック塗装ホイールやフォグ、上級仕様の灯火、本革コンビシートを装備。





【注目アクセサリー】ラゲージアクティブボックス



イチバン納得価格のグレードは?
上位グレードは価格差に
見合う魅力的な内容だ
実用コスパとプレミアム性のバランスあるいは優先順位が重要である。パワートレーンやグレード展開と価格設定は納得できるもの。時代性まで含めるなら上位設定車種のほうが買い得と言ってもいいほど。言い方を換えるなら上位設定仕様への誘導が巧み。見比べていると予算内で選べる最上位仕様になってしまう。
オススメとしてはOP最小限のハイブリッドZ・4WD、実用コスパ優先ならガソリン車のG。前者は上級クラスからのダウンサイジング派、後者は手頃さと使い勝手重視のユーザー向けである。
【おすすめ】ハイブリッドZ E-Four

