車の最新技術
更新日:2025.08.18 / 掲載日:2025.08.18

新型フォレスターの進化したメカニズムを解説する【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●スバル

 2025年4月に発売された6代目フォレスターはストロングハイブリッドのS:HEVを新たにラインナップしたこともあって注目度が高く、受注も好調のようだ。初期はS:HEVに人気が集中していたが、ここにきて1.8Lターボエンジン搭載のSPORTの人気が高まりつつあるという。S:HEVの納期が長くなってしまったからという理由もあるのだが、純粋なエンジン車の良さで選択しているむきも少なくないだろう。

 先代は2.0Lエンジン+マイルドハイブリッドがエントリーモデルで1.8Lターボは上級モデルだったが、6代目はストロングハイブリッドのほうが高価で1.8Lターボがエントリーモデルとなった。だからといって廉価版扱いするのは間違いだ。乗ってみればS:HEVに対して燃費では勝てないものの、速さや運動性能の高さでは上まわっていてグレード名通りの魅力があるからだ。

1.8L BOXER 直噴ターボ “DIT”

 エンジンは2020年にレヴォーグで初めて搭載されたCB18型。以前に比べてボアピッチを大幅に短縮した新骨格だ。従来のFB16型に比べると14.4mmも短く、エンジン全長では40mm短くなっている。水平対抗はロングストローク化が難しいと言われるがボア×ストロークは80.6×88.0mm。水平対向としては珍しくオフセットクランクを用いてフリクション抵抗を図り、リーンバーン燃焼も実現した意欲的な新世代ユニットだ。6代目フォレスターではオルタネーターの抵抗を減らし、エンジンオイルも改良。CVTの制御も進化している。

 先代モデルに比べると車両重量は約70kg重くなっているが、0−100km/h加速は8.6秒と俊足の部類をキープ。ちなみにS:HEVは9.4~9.6秒、先代マイルドハイブリッドのe-BOXERは12.2秒となっている。

 走らせてみると低回転域からトルクが充実していて頼もしい。ラバーバンドフィールなどCVTの悪癖はほとんど顔をみせず、右足で伝えるドライバーの意志とクルマの動きがぴたりとシンクロしている。新型ながらキャリーオーバーすることで熟成が極まった感があるのだ。

フルインナーフレーム構造を採用することでボディ剛性を高めている

 シャシー性能も進化している。SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)はフルインナーフレーム化されてポテンシャルがあがるとともに、サスペンションを最適化。先代同様の超飽和特性ダンパーはピストンスピードが速い領域で減衰力の立ち上がりを強くしている。さらに、わかりやすいのが新たに採用されたデュアルピニオン式のパワーステアリングだ。ドライバーからの入力とアシストを分離していることで、ステアリングフィールがすこぶるナチュラル。軽い操舵力ながらきっちりとインフォメーションが伝わってくるのだ。切り始めた瞬間から、切り増していったときのビルドアップまで素晴らしフィーリングになっている。

 そして何よりハンドリングがいい。S:HEVは車両重量が重く、重心の高さもわずかに感じて、コーナー入り口を攻めていくとリアのイン側がめくれあがるような感覚になることがあるが、SPORTはそれがほとんどないのだ。タイヤはマッド&スノーで一般的なサマータイヤに比べるとグリップ志向ではないものの、ドライ路面ではスポーティに走れる。ウエット路面では少し慎重になることが必要だ。

 ドライバビリティの良さやスポーティなフィーリングを重視するならS:HEVよりもエンジン車のSPORTがオススメだ。先代に比べると約55万円高となっているが、サイクリスト対応歩行者エアバッグやアイサイトの機能向上などを始め、多くの仕様向上がなされているので、割高感はなし。納期もS:HEVが9ヶ月程度のところSPORTは4ヶ月程度と早いのでオススメできるモデルだ。

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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