新車試乗レポート
更新日:2025.07.01 / 掲載日:2025.07.01
新しいキャプチャーはエスプリアルピーヌが魅力的【竹岡 圭】【ルノー】

文●竹岡 圭 写真●ユニット・コンパス
どこを切り取ってもサマになる街。パリにはそんなイメージがあります。パリに本社を置くルノーが送り出した「パリが息づくコンパクトSUV」。元々「恋に落ちた二人が冒険に出かけるクルマ」として誕生したキャプチャーは、ルノーの本社があるパリをテーマに2.5代目に生まれ変わりました。
デザインの変更で印象が大きく変わった

具体的には、まずフロントマスクがガラリと変わりました。ロザンジュと呼ばれるルノーのロゴも進化していますが、そのロザンジュを囲むようなグリルが、また新しい。フロントバンパー上部とグリルに配されたブロック模様が、ポリカーボネート素材のグリルに光が反射することで、ボディカラーによって色合いが違って見えます。これはロザンジュから、さざ波が広がっていくフィーリングなのだそうですが、今までにない斬新な試みですよね。
ボンネットも厚みが増し、水平デザインとなり、薄型のヘッドライトに加え、バンパー部分に配された両側のデイタイムランニングライトが目を惹きます。これはロザンジュを半分に割って、反転させて取り付けたようなデザインになっているのですが、その隣には、ブレーキ冷却とタイヤ周りの整流に効果を発揮する2つのエアインテークが配されました。デザインと機能性を融合するという、ルノーデザインの得意技が生かされた表現です。

今回はエスプリアルピーヌとテクノの2つのグレードが用意されていて、エクステリアはホイールのデザインとサイズ、バッジ等々くらいの差ですが、インテリアはかなり違います。シートを含め、全体的にエスプリアルピーヌの方がかなり豪華かつ上質な仕上がりなので、どうしてもファブリックシートじゃないとダメという方以外は、エスプリアルピーヌがオススメとなります。というのも、同じパワートレインで比べると20万円しか価格差がないから。装備の差を考えるとかなりお買い得です。



そのパワートレインですが、今回はテクノはマイルドハイブリッドエンジンのみ。エスプリアルピーヌにはそれに加えて、E-TECHハイブリッドが用意されています。E-TECHハイブリッドは直列4気筒1.6LNAエンジンと電子制御ドッグクラッチマルチモードATで構成されています。
このドッグクラッチというのがポイントになりますが、これは一般的なクラッチやシンクロナイザーを省いた、本来モータースポーツで使われるトランスミッションです。でもそれをそのまま量産車に使うと、シフトチェンジの際のショックと振動でたまったものではないので、そこをモーターでアシストしてスムーズに変速させるというシステム。さらにモーター側に2つ、エンジン側に4つのギアを持つことで12通りの変則比があり、モーター、エンジンそれぞれからの切れ目なくパワーを引き出してくれます。
発進時はモーターを使った方が効率が良いのでモーターを使い、中速時はエンジンとモーターを効率よく組み合わせてパワーを引き出し、高速域はメインはエンジンで、追い越し加速などさらにパワーが必要な時にモーターでアシストするという感じのハイブリッドパワートレインです。

実はこのE-TECHハイブリッドエンジンは、アルカナに搭載されているものと同じなのですが、若干カタログ値は上がっていたりします。でも、乗った感じとしては、アルカナのE-TECHハイブリッドよりも、スタート時のモーターの力の微妙な匙加減が絶妙で、さらにスムーズに発進できるようになるなど、洗練度が増しているのを強く感じました。スーッとなめらかに上品に発進しつつ、その後気持ちよくパワーが伸びていくので、爽快なんですよね。
実は、人間は0.25G以上の加速Gが出ると、これを加速度として感じることができるらしいのですが、その加速Gをモーターで発進後0.2秒くらいで出せるようになっているため、全体的に素早さが増し、気持ちよくパワーが伸びていく爽快感として感じさせてくれるようです。
結論としては、街中は元気よくキビキビ走るけど、ムリヤリパワーを引き出したようなガツガツしたやりすぎ感はなく、全域でとても乗りやすいという印象。今まで乗ったE-TECHハイブリッドの中でいちばんこなれている感じがしました。しっかり細かいところまで進化を続けているという証ですよね。
弱点と言えば、全体的に静粛性は高いけれど、エンジンが掛かっていない時と掛かっている時の音の差が大きいので、少し気になってしまうことでしょうか。

ターボの力強さが気持ちいいマイルドハイブリッド

マイルドハイブリッドの方はE-TECHハイブリッドの燃費が驚きの23.3km/lなのに対し、17.4km/lではありますが、それでも十分な数値ですし、軽快さとアクセルペダルを踏んでいった時のパワフルさは、やはりこちらの方が上。車両重量が90kg違うので乗った瞬間から軽さを感じますし、なんてったってターボエンジンですからね。ワインディングロードをグイグイ走るという方は、こちらの方が正直なところ気持ち良いかと思います。
手足のように扱えるルノーらしいモデル
どちらをチョイスしても、手足感覚で操れるちょうどイイサイズ感を生かし、コーナリングも素直。このハンドリングの良さは、さすがはルノーで、コンパクトカーからスポーツモデルまで一貫したこだわりがあり、ドライバーと共に走っている感覚が味わえます。
フランスを思い浮かべると、丘陵地帯を爽快に走るならばマイルドハイブリッドが似合い、パリの街中の渋滞はE-TECHハイブリッドに軍配が上がる。日本の日常生活でどちらを選ぶかは、好みとライフスタイルという感じでしょうか。