車の最新技術
更新日:2022.08.26 / 掲載日:2022.08.10
「日本のクラウン」が世界を目指す【ニュースキャッチアップ】

文●ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス、トヨタ
(掲載されている内容はグー本誌 2022年8月発売号掲載の内容です)
日本を代表する高級セダンのクラウンがフルモデルチェンジを行った。16代目となる新型は、従来のセダンだけでなく4つのボディタイプを持つシリーズとして登場。国内だけでなく、世界のトヨタ販売店でフラッグシップモデルとして販売される。
時代の変化に合わせてクラウンが大変身
クラウンが革命を起こした。15代続いてきた「クラウン=セダン」という常識を覆し、4つのボディタイプをラインアップする新高級車として再出発するのだ。
ワールドプレミアにあたってスピーチを行った豊田章男社長は、16代目クラウンを日本の歴史に重ねて「新しいクラウンは明治維新であり、新しい時代の幕開け」と語った。クラウンといえば、トヨタだけでなく日本の乗用車史を支えてきた重要車種。歴代のチーフエンジニアたちは重責に耐えながら新しい価値を生み出すべく努力を重ね、それがユーザーからクラウンへの信頼につながってきた。だが、近年では価値観の多様性により、誰もが高級セダンに憧れる時代ではなくなった。
開発にあたっては、当初15代目のマイナーチェンジとして開発が進んできたものを承認せずにキャンセル。まったく新しいクラウンを再提案することがチームに命じられた。クラウンチームの出した答えは、セダン+SUVという「クロスオーバー」。豊田章男社長はその成果を認めつつも純粋な「セダン」の開発も指示。それを受けてチームはさらに、「スポーツ」と「エステート」を提案してきたのだという。
新型は世界40カ国でトヨタのフラッグシップとして販売。日本から世界へ。クラウンの挑戦は続く。
[CLOSE UP]今度のクラウンは4タイプ

新型クラウンで衝撃的なのが、4つのボディタイプで登場すること。その理由は、新型は約40カ国で年間20万台規模を目指すグローバルモデルとしての役割が与えられるから。世界中のトヨタで、フラッグシップモデルとして販売されるため、より多くのニーズを受け入れるために多彩な個性を作り出した。クロスオーバーを皮切りに順次販売される予定だ。
クラウン(クロスオーバー)

新型クラウンでもっとも早く市販されるのがクロスオーバー。セダンとSUVを融合させたスタイルにより、アイポイントの高さや室内空間のゆとりを高めている。
クラウン(スポーツ)

TNGAプラットフォームを採用することで高められた走行性能のポテンシャル。それを存分に発揮するのが、5ドアハッチバックを採用するスポーツだ。
クラウン(セダン)

豊田章男社長がクロスオーバーの次に開発を命じたのがセダンタイプ。オーソドックスな高級車スタイルや後席の居住性を求めるユーザーをターゲットにする。
クラウン(エステート)

かつて人気を博した高級ワゴンの「クラウンエステート」が復活する。従来のワゴンよりもSUVに近いプロポーションで、ラゲッジスペースも充実していそうだ。
TNGAが4タイプ同時開発を可能にした

トヨタが2012年に立ち上げたプラットフォーム「TNGA」。新型クラウンではその発展型を採用。優れた走行性能と高い環境性能を両立させる優れた基礎だ。
新時代の4WDシステムを搭載予定

クロスオーバーには、エンジンとモーターを直結させ、さらに後輪用にモーターを搭載。350馬力、550Nmという高性能と新しい車両姿勢コントロールを行う新システムを搭載予定だ。
日本における乗用車の歴史を作ったクラウンは「クルマ界の徳川家」!?

1952年に日本初の本格乗用車として開発されたクラウン。日本の発展とともに日本を代表する高級車に成長し、時代の変化に対応しながら15代と続いてきたクラウン。近年ではセダン需要の縮小とともに、存在感が薄くなっていた。豊田章男社長はその姿を徳川幕府と重ねて説明した。


時代に合わせて進化することを選んだ
クラウンが従来のオーソドックスな高級セダンでなくなったことに驚く人は多いだろう。だが、国内のセダン需要だけを考えた守りの改良ではなく、「ユーザーが求める今の時代の高級車」に挑んだ姿勢はチャレンジング。この挑戦が成功すれば、「日本のクラウン」から「世界のクラウン」へと大きく飛躍するチャンスだ。まずは新しいクラウンの門出を祝いたい。