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更新日:2018.11.14 / 掲載日:2017.12.04

日本のクラウン 世界に戦いを挑む

【本記事は2008年4月にベストカーに掲載された記事となります。】新型クラウンは1955年の初代から数えて実に53年を経て13代目。同じ車名で世代を刻んできたクルマとしては国産では最も歴史の長いブランドで、’06年12代目にフルチェンジしたスカイラインがこれに続く(スカイラインは昨年50周年)。自他ともに認める「日本の代表的高級車」だ。50年以上もの歴史があると、親子孫3代クラウン愛好家なんていうユーザーも珍しくない。新車が出るとカタログも見ずに「いちばんいいヤツをすぐ納車してくれ」なんて注文がバンバン入る。セダンが売れないといわれる昨今でもコイツは別格。ライバルからみると羨ましいかぎりの優良顧客をたくさん抱えているのがクラウンの最大の強みだ。ところが、そんなクラウンをとりまく状況が、近年急激に変化してきている。その原因はご多分に漏れずいわゆるグローバル化なんだけど、世界中が単一の市場に統合される中で、高級車の価値観もまた「世界基準」に収斂しつつある。これが近年クラウンのクルマ造りに大きな影響を与えている要因だ。ひと昔前のクラウンは、まさしく「日本の高級車」として確固たる独自の世界観があったから、ベンツBMWと比較しようなんて余計なことは考えなかった。ところが、近年はそうも言ってられなくなったということ。いちばんのご贔屓筋であるクラウンユーザーが、そういった輸入車のことを気にしはじめたのだから否も応もない。これに輪をかけたのが身内のレクサスの上陸。レクサスはもちろん最初から世界基準の高級車として企画されたクルマだけど、それをついこのあいだまでクラウンを扱っていたディーラーが模様替えして売りはじめたんだから、そりゃぁクラウンユーザーだって心中穏やかじゃぁないさね。

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ゼロクラウンから一歩進んだ原点回帰へ

アスリート:ゼロクラウンのDNAを色濃く受け継ぐアスリート。スポーツセダンだ

アスリート:ゼロクラウンのDNAを色濃く受け継ぐアスリート。スポーツセダンだ

そんなこんなモロモロの事情が重なって「ええい、今度のクラウンは1回全面リセットじゃぁ!」って勢いで作られたのが、先代のいわゆる“ゼロクラウン”だ。おかげで、あのおっとりとしたクラウンがパフォーマンスやハンドリングでも欧州車とガチで勝負するようなクルマに生まれ変わったのだった。これがよかったのかどうか、いま思うと個人的にはちょっと微妙かなぁと思う。そりゃぁ、ハンドリングだとかスタビリティだとか、安全に直結するクルマの運動性能はイイに越したことはない。この点は誰だって異論はない。でも、高級車はその上に伝統に磨かれた独自のキャラクターを築いてこそ価値がある。クラウンが大切に育んできたテイストは、至れり尽くせりのおもてなし感覚と、すこーしユルめのゆったりした乗り味だったんじゃないだろか?ハードウェアとしては文句なく良くなってるんだけど、「なにもクラウンまでそんなに目を血走らせて走り! 走り! と大騒ぎしなくても……」って、ゼロクラウンはちょっと頑張りすぎているように感じられるのだ。だから、新しいクラウンはその世界基準に向いた振り子をちょっと戻して、もう一度日本の(あるいは日本人にとっての)ベストな高級車のあり方を再構築しようとしたクルマなのだと思う。

ロイヤルは伝統的クラウンの味を最新技術で実現

ロイヤル:伝統的なクラウンらしさを感じされるロイヤルサルーン。ゆったりした乗り味

ロイヤル:伝統的なクラウンらしさを感じされるロイヤルサルーン。ゆったりした乗り味

そういう考え方で見ると、今度のクラウンであらためて注目すべきグレードは3.0ロイヤルサルーンだ。最近のクラウンはアスリートばかりが注目され、本来クラウンの本流であるロイヤルサルーンの影が薄かった(販売的には6対4でロイヤルが若干多い)。まぁ、自動車雑誌的に走りをウンヌンしようとすると、どうしても話がアスリートに偏りがちなのはしょうがないんだけど、そのいっぽうでゼロクラウンではロイヤルサルーンがいまひとつピンボケ気味で、操安をとるのか乗り心地をとるのかキャラがはっきりしなかったのも事実。グローバル化の急流に足を踏み入れた結果、日本の高級車の本道たる中心グレードがちょっと浮き足立っていた感があったのだ。今度のクラウンでは、ロイヤルサルーンにそういった迷いがないのがいい。新しいロイヤルサルーンに乗ると、まず感じるのはクラウンらしいソフトな乗り心地感覚が戻ってきていることだ。さすがにプラットフォームは最新だから、セパレートフレーム時代みたいな座布団を3枚重ねたような縦にも横にもユルい感覚じゃないんだけど、路面からのアタリを上手に丸めて鋭いショックを極力排除しようという足づくりはクラウンならでは。クラウンを何台も乗り継いできたようなユーザーなら、「これこれ、この乗り味だよ!」と納得すること請け合いだ。興味深いのは、このクラウン伝統の乗り心地が高度な電子制御デバイスに支えられていること。AVSと呼ばれる可変ダンパーは、カーナビと協調して一度通った道を“学習”して減衰力を可変させるという凝った芸を見せるし、VDIMを全車に標準装備とするなどスタビリティ制御も万全。今度のクラウンは、まさに“電子プラットフォーム”に乗って走っていると表現するのがふさわしいクルマなのだ。サスを固めてダイナミック性能を確保するばかりじゃ能がない。最新の電子制御デバイスを動員して乗り心地ポテンシャルを広げた結果が、今度のロイヤルサルーンのしなやかな乗り味に表現されているのである。この走りのテイストは、ベンツやBMWに代表される欧州高級車とはまったく違う味わいで、まさにクラウン伝統の乗り味を最新テクノロジーで再構築したものといっていい。もちろん、アウトバーン速度でカッ飛んだり峠を攻めたりすれば、そりゃぁEクラスや5シリーズの方が操舵感にドシッと手ごたえがあって走りやすい。まぁ、誰でもそう思うでしょう。でも、そういう走りをしたいならクラウンはアスリート3.5を選べばいいわけで、コイツのパワフルで走りのスポーティなことといったら、E350や530iより確実に一枚うわ手といえるほどの俊足ぶりを見せてくれる。だからこそ「なにもコッチまで一緒になって足を突っ張らなくてもいいじゃない?」というロイヤルサルーンのキャラが生きてくるわけだけれど、こういうふうに上手に役割分担ができるようになったところに、ゼロクラウンから4年を経ての自信と熟成が感じられるわけだ。さらに、5月デビューということで今回は試乗できなかったけれど、シリーズにハイブリッドが加わればさらにクラウンの守備範囲は広がる。こちらもまた、欧州車にはない日本独自のハイテク高級車として、燃費/環境に関心の高いユーザーにアピールすることだろう。今度のクラウンのキャッチフレーズは「超えてゆく、ブランド」というものだが、ロイヤルサルーン、アスリート、ハイブリッドという三本柱が、それぞれの方向にクラウンの世界を広げたことは間違いないと思うな。

CheckPoint 10・15モード燃費15.8km/L ハイブリッドは5月6日登場

ハイブリッドは専用チューンされた3.5Lエンジン+モーターでシステム出力345馬力を発揮する。10・15モード燃費は15.8km/L

ハイブリッドは専用チューンされた3.5Lエンジン+モーターでシステム出力345馬力を発揮する。10・15モード燃費は15.8km/L

13代目となる新型クラウンには、ハイブリッドが新たにラインアップされている。11代目クラウンにはマイルドハイブリッドと呼ばれるハイブリッドモデルが設定されていたが、モーターのみの走行モードを備えない、いわゆる簡易ハイブリッド。対する今度の新型クラウンハイブリッドは、本格的なハイブリッドシステムを採用している。基本的なメカニズムは先に登場しているレクサスGS450hと共通で、296馬力、37.5kgmを発揮する専用チューンの3.5L、V6エンジンに、昇圧コンバーターにより650Vまで高められた電気で最高出力200馬力、最大トルク28.0kgmを発揮するモーターを組み合わせたFR用THSII。システム出力は実に345馬力となる。このシステムは前述のとおりレクサスGS450hと同じである。が、10・15モード燃費は14.2km/Lから15.8km/Lに引き上げられている点に注目したい。これは、GS450hよりも燃費志向のチューニングとしたため。これにより、動力性能的には0→100km/h加速がGS450hの5秒6から6秒2とややパフォーマンス的にはダウンとなっているが、それでも充分速い。ハイブリッドはクラウンシリーズのモデルチェンジと同時に2月18日付で発表はされているものの、実際にクルマが登場するのは5月6日の予定。価格は595万~619万円。

PART1 新型クラウン各論チェック!! クラウン3.5アスリートvsBMW530i

BMW530iには272馬力、30.6kgmを発揮する直列6気筒エンジンが搭載される。スポーツサルーンのスタンダード的存在

BMW530iには272馬力、30.6kgmを発揮する直列6気筒エンジンが搭載される。スポーツサルーンのスタンダード的存在

TEXT/片岡英明BMWは「駆けぬける歓び」のキャッチフレーズからわかるように、走りに命をかけているメーカーだ。当然、スポーツセダンの代名詞となっている。530iを含め、5シリーズ全車にクイックなアクティブステアリングを標準装備している。舵を与えた瞬間、操っている実感があるのがBMWの美点だ。操舵フィールはクラウンより重いが、路面との接地感がわかりやすい。そしてスピードを上げていってのコーナリングでは気持ちよく鼻先が狙ったコースに向く。クラウンはステアリングを切った時の操舵量が微妙に変化するゾーンがあり、やや滑らかさを欠く。クラウンも高いスタビリティ能力を持ち、リアの踏ん張りもきいているが、スポーツセダンとしての操舵の洗練度、操る楽しさはBMWが一歩上をいく。低速でのショックのいなし方やノイズの遮断などには不満もある。が、クラウンより走りの楽しさの主張がダイレクトで濃密だ。次はパワーユニットである。クラウンは3.5Lのストイキ直噴V型6気筒エンジンを積む。対するBMWは、シルキーシックスのニックネームで愛されている3Lの直列6気筒DOHCだ。どちらもドラマチックなエンジンで、気持ちがいい。全域に渡って余裕があり、高回転まで気持ちよく吹け上がる。パワフル感、6速ATの滑らかさはクラウンがリード。実用域ではBMWの主張あるパワー感が光っている。この勝負、クラウンが僅差で勝利だ。インテリアの質感、装備の充実度などは両車とも互角である。キャビンの広さと快適性も甲乙つけがたい。買い得感と平均点の高さで選ぶならクラウンということになる。

PART2 クラウン3.0ロイヤルサルーンGvsベンツE300

VS ベンツEクラス 日本が世界に誇る高級サルーンの王者はクラウンだ! クラウンVS世界の高級車

VS ベンツEクラス 日本が世界に誇る高級サルーンの王者はクラウンだ! クラウンVS世界の高級車

TEXT/片岡英明クラウンのフラッグシップと位置づけられるロイヤルサルーンGのライバルに選んだのは、同じ車格のEクラス。そのなかから同じ3LのV型6気筒エンジンを積むE300を選んだ。日本車から乗り換えても違和感を抱かないのがEクラスである。ヨーロッパ車は肥大化しているが、Eクラスは全幅こそちょっと広いが、それ以外はクラウンに近い。日本で取り回ししやすいし、キャビンもクラウンと遜色ない広さを確保した。後席ではクラウン以上に寛げる。V型6気筒エンジンはどちらも滑らかだ。高回転までストレスなく回り、実用域のトルクも厚みがある。主張を感じさせるのはクラウンの直噴V6エンジンだ。静粛性の高さは、さすがのメルセデスもかなわない。こもり音や振動を上手に封じている。また、高回転の伸びがよく、パンチ力とトルク感も一歩上をいく。ATはクラウンが6速、E300は7速タイプだ。制御が絶妙で、滑らかにつながるのはクラウンである。変速ショックは皆無だ。山岳路では学習制御が効果的にアシストし、不要な変速を上手に抑え込んでくれた。ドライバビリティは一歩上の印象だ。フットワークは、クラウンも捨てたもんじゃない。自慢のVDIMの助けを借りなくてもかなりのところまで頑張る。シャシーの基本性能はすこぶる高い。Eクラスを上回る安心感があり、限界域に近づくとVDIMが助け舟を出してくれる。制御の介入も自然な感じでお節介じゃない。これは高く評価する。E300はジェントルなハンドリングだが、操縦安定性や乗り心地に設計の古さが見え隠れする。ドライバーの意思に忠実で、乗り味にしなやかさを感じるのはクラウンだ。

PART3 クラウン2.5ロイヤルサルーンvsアウディA6 2.4

VS アウディA6 日本が世界に誇る高級サルーンの王者はクラウンだ! クラウンVS世界の高級車

VS アウディA6 日本が世界に誇る高級サルーンの王者はクラウンだ! クラウンVS世界の高級車

TEXT/片岡英明クラウンの対抗馬となるアッパーミドルクラスのアウディといえばA4の上級のポジションを与えられたA6ということになる。ライバルに選んだ2.4は、A6のボトムに位置するグレードである。クラウンも2.5Lはボトム。ボトムグレード同士の対決だ。アウディというと4WDのイメージが強い。だが、比較車として選んだ2.4はFF車だ。トランスミッションも上級グレードは6速ATだが、2.4は無段変速のCVTを採用した。動力性能はクラウンの圧勝だ。排気量が100cc小さいこともあり、最高出力も最大トルクも負けている。しかも車重はクラウンより重い。さすがのCVTをもってしても実用域のトルクは一歩及ばないし、高回転の伸びとパンチ力、そして静粛性も物足りない。改良のメスをふるい、熟成の域に達したクラウンのV6エンジンに対抗するには役不足だ。クラウンは6速ATの洗練度がきわめて高く、CVT並みの滑らかさと俊敏な加速を身につけている。しかも明らかに、ドイツ車よりも実用燃費はいい。高速クルージングなら、粗い運転でも10km/Lの大台を割ることはないだろう。これは3Lや3.5Lにもいえる美点だ。走りの洗練度もクラウンの勝ち。アウディA6の軽くなった操舵フィールには好感が持てるが、荒れた路面では揺れの収まりが悪く、落ち着かない。クルマと乗り手の一体感という点では物足りなさを感じる。乗り心地のしなやかさでも勝ち目はない。さすがにインテリアは上質ムードだが、これはクラウンにもいえること。ベースグレードの出来が際立っていいのがクラウンだ。コストパフォーマンスとトータル性能は飛びぬけて高い。

NEWクラウングレード&価格

新型クラウンにはアスリート、ロイヤルサルーン、ハイブリッドといった、3つのシリーズが設定されている。それぞれ明確なキャラクターが設定されており、エクステリアもグリルやバンパー、リアコンビランプのデザインなどにより3タイプに区別されている。アスリートは最もスポーツ性を強調したシリーズとなっており、メッシュ調のフロントグリルと大きく口を開けたフロントバンパーが特徴的。タイヤは225/45R18が全グレードに装着される。2.5Lはロイヤルと共通だが、3Lの設定はなく、315馬力を発揮する3.5Lが設定されている。いっぽうロイヤルサルーンはクラウンの中心的モデルで、2.5Lと3Lを設定。横桟グリルとウイング状の開口部を持つフロントバンパーでアスリートとは対照的なソフトな印象のフロントマスク。タイヤサイズは215/55R17で乗り心地重視。そして新たに加わったハイブリッドだが、横桟グリルにアスリートと同じフロントバンパーで独特のフロントマスク。クリアレンズのリアコンビランプがハイブリッドの特徴となる。

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グーネットマガジン編集部

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