車の最新技術
更新日:2021.06.04 / 掲載日:2021.06.04
EVユーザーのための電力会社選び【石井昌道の自動車テクノロジー最前線 第9回】

文●石井昌道
以前は家庭や商店などでは東京電力や関西電力など各地域の電力会社10社から電気を買うしかなかったが、2016年4月1日に電力の小売全面自由化がされてからは、すべての消費者が電力会社や料金メニューを自由に選べるようになった。既存の電力会社以外の新規参入企業は新電力と呼ばれ、その数は700社とも言われ鎬を削っている。競争を勝ち抜いていくには魅力的な料金プランが欠かせないが、自動車関連で注目なのが東急でんき&ガス(株式会社東急パワーサプライ)の『EV応援プラン』だ。
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EV、PHVユーザーにむけた電力プランが登場

東急でんき&ガスのEV応援プラン
EVまたはPHEVを所有あるいは使用している、その見込みがある人なら加入が可能で、夜間1時-5時の間は電気代が約30%安くなる。
EVやPHEVの一般的な使い方は、夜間に家庭のガレージでプラグインし、朝には満充電になっていて出かけられるというものなので、それにマッチするプランだろう。また、たいていのモデルには何時から充電を始めるなどのタイマー機能が付いているので1時-5時にセットすれば煩わしさもない。約30%安くなるのは300kWh/月を超えた場合で、1人暮らしではそこまで使わないかもしれないが、2人以上の世帯ならば平均的に超えるはずだ。
もう一つ注目なのが、再生可能エネルギー実質100%と謳われていることだ。EVは走行中のCO2排出量がゼロで環境に優しいとされているがそれはTtW(Tank to Wheel=燃料タンクまたはバッテリーから車輪を回すまで)でありWtW(Well to Wheel=油井など原料の採掘から車輪を回すまで)でみれば、電力が何から作り出されているかでCO2排出量および環境負荷はかわってくる。
例えばトヨタ・ヤリス・ハイブリッドのCO2排出量(TtW)は古い基準のNEDCで68g/km、WLTPで92-112g/km(ともに欧州仕様)。同程度のBセグメントのEVはTtWではゼロだがWtWでみると、水力発電が50%、原子力発電が25%とCO2排出量の少ない電源構成のスウェーデンなら1-2g/km程度で、たしかに環境負荷はたいへんに低いものの、日本の電源構成では概算で50-60g/km程度と思われる。日本の優秀なフルハイブリッドに対して、あまり優位に立てていないのが現状だ。
そこで再エネ(再生可能エネルギー)のさらなる比率引き上げに期待がかかっている。2020年の日本の再エネ比率は21.7%で2014年に比べれば8%ほど増加。日本は国土面積あたりの再エネ比率は高いのだが、人口が多いため電力需要が大きく、再エネ比率を上げにくいという不利はあるものの、CO2排出量削減を目指すにはもっと上げていく必要がある。
金銭的なメリットに加えて再生可能エネルギーを使用している証明も発行

「EV応援プラン」では再生可能エネルギー100%でCO2排出削減に貢献できる
再エネの普及を促すべく、電力に価値を持たせたのが『非化石証書』。石炭や天然ガスなど化石燃料以外で発電された電力はCO2を排出しないものの、一般的にコストが高くつく。そこで2012年からは固定買取制度(FIT)が創出され、ほかの電力よりも高く買い上げることで再エネ発電業者を増やす仕組みが行われ、太陽光発電などは大いに増えてきたわけだが、その買取費用は国民全体が担っている。電気料金に加算される再エネ賦課金だ。非化石証書はその国民負担を軽減しながら、さらなる再エネ普及を目指すものでもある。実際のところ、電気には色がついているわけではないので、いま使っているのが何由来なのかはわからないが、非化石の再エネに環境的な価値を見出し、電力小売り業者がそれを非化石証書として取り出し、他の電気と組み合わせて供給することで実質的に再エネを供給しているとみなすことが国によって認められている。
EV応援プランは再エネ指定の非化石証書を使用することで実質再エネ100%と謳うことが可能。これによって、EVおよびPHEVのユーザーは、今の日本の電源構成では環境負荷低減にあまり貢献できていないなどと思わず、堂々と環境優等生でいられるわけだ。
非化石証書は何だかよくわかりづらい制度であり、ともすればまやかしとも捉えられかねないが、再エネ普及にポジティブな措置であるのはたしか。日本はエネルギー自給率が低く、以前から省エネに取り組んできたからCO2排出量削減の競争ではなかなか苦しいところではあるが、国際社会の一員として協調していく必要がある。再エネ比率を高水準にすることが求められているのだ。
執筆者プロフィール:石井昌道(いしい まさみち)

自動車ジャーナリストの石井昌道氏
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。
【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】は週刊連載です。次回のテーマは「最新EVインプレッション」です。どうぞお楽しみに!