新車試乗レポート
更新日:2020.10.23 / 掲載日:2020.10.23

ヤリスクロス・魅力大研究【1】公道試乗

この記事の目次

今春に開発発表されたヤリスクロスがついに正式デビュー。ライバル勢を真っ青にする設定価格も驚きなのだが、やはりヤリスクロスが本領発揮となるのは、リアルワールドでの走りだろう。ヤリスの走りは受け継がれているのだろうか?

  • TOYOTA
    ヤリスクロス

    ●発売日:2020年8月30日
    ●価格帯:179万8000~281万5000円
    ●問い合わせ先:0800-700-7700(トヨタ自動車お客様相談センター)

試乗インプレッション

クラスを超えた良質な走りに脱帽。正直、売れてしまうのも当たり前!

SUVの重量ハンデは皆無 高速走行も難なくこなせる

 車重はヤリスより100kg以上重く、車重比では1割近く違う。普通に考えれば動力性能の低下は避けられないと思うが、ドライブフィールからは、動力性能の目立った低下を感じない。車両重量の違いを意識するのは全開加速くらいである。

 ガソリン車は巡航ギヤ維持力がヤリスより低下していたが、早いタイミングでダウンシフトを行うことで、回転上昇を控え目にする変速制御で非力感を抑えている。浅いアクセル開度でのトルクや、踏み増し時の加速反応を重視したアクセル特性の効果だろうが、車格からすれば余力を感じる設定であり、高速巡航時でもエンジンに無理をさせている感じはない。

 ただし、その反動は燃費に跳ね返ってくるようで、ハイブリッドFF車を交通量の多い首都高速でACC任せで走ってみたところ、燃費計の数値は約25km/Lを示す。同じような道路状況でもヤリスならば30km/Lに迫るので、実用燃費の低下は避けられないことが確認できた。ちなみに同じ状況でヤリスクロスのガソリン4WD車の数値は20km/Lであり、状況変動を考慮すれば、ほぼWLTC高速モード燃費に準じていた。

 ただ、燃費の超優等生であるヤリスとの違いであり、コンパクトSUVのライバル勢と比較すると極めて優秀。省燃費性能の高さは、間違いなくヤリスクロスの大きなアドバンテージの一つである。

 エンジンフィールはハイブリッドとガソリン車では多少様子が違う印象。ガソリン車の80km/h以下の巡航回転数は1500回転。100km/hでも2000回転を超えてこない。一方、ハイブリッド車はエンジンを稼働させる時は2000回転以上になるなど、常用回転域はハイブリッド車のほうが高く感じられた。とはいえ、エンジン騒音そのものが小さく、3気筒のパルス感も抑えられているので、ノイズの侵入も気にならないレベルである。

サスチューンは硬めだが 路面の跳ね上げ感は少なめ

 燃費面ではハンデとなった重量増だが、乗り心地では「プラス」の要素になる。サスチューニングは定員乗車の高速走行でも十分な安定性を確保するため硬めの設定だが、それでもヤリスに比べると段差乗り越えの衝撃や跳ね上げ感は減少している。沈み込みストロークは抑えられているが、動き出しの滑らかなストローク制御が乗り心地の肌触りや落ち着いたハンドリングをもたらしてくれる。4名乗車でウェルバランスを狙ったサスチューニングも、ヤリスクロスのキャラに似合っている。

 ハイブリッド車とガソリン車を比べると、ハイブリッド車のほうが重質な味わいが強い。さらに4WD車のほうが微小な突き上げ時にマイルドに感じる。細かな部分も含めた乗り味の質感はハイブリッド4WDが最良だろう。

 ヤリスクロスの走りで見逃せないのが悪路踏破性の高さだ。今回、特設ステージで踏破性能を体感したが、生活四駆型EFourを採用したハイブリッド車の性能に少々驚きを感じた。決してオフロード走行向けとは言い難いが、登坂でなければトレイルモードに切り替えることで、スプリットμもモーグルも対応できるなどなかなかの実力を持つ。ガソリン車のロック&ダートモードはさらに高い踏破性を示し、初級レベルのクロカン路くらいは楽勝だろう。「こいつは使えそう!遊べそう!」というのが試乗後の第一印象。SUV的なプレミアムの上乗せが少ない価格設定も好感だ。今回の試乗は短い時間だったが、生活からレジャーまで使って元が取れる素性の良さ、実践力の高さをヤリスクロスに感じることができた。

  • ロードノイズは相応にあるが、不快感さは感じない。高速道路で重宝するACCはハイブリッド/ガソリン車とも共通の機能を持つが、前走車離脱時の加速制御はハイブリッド車のほうが穏やかであり、ガソリン車は加減速制御が忙しい印象。

icon ハイブリッド車

ハイブリッドZ (FF車) ●価格:258万4000円

ハイブリッド車の方が車両重量が重くなるが、走りの安定性にはプラスに作用する印象。ガソリン車と比べると路面ギャップ時の突き上げが穏やかで、ハンドリングも良好に感じる。

  • ハイブリッド車にもガソリン車と同型の1.5L直3ダイナミックフォースエンジンを搭載されるが、燃費優先の制御のため、エンジン単体のパワースペックはガソリン車より控えめ。最新THS 2と組み合わせることで真価を発揮するシステムだ。

■主要諸元 ●全長×全幅×全高(mm):4180×1765×1590 ●ホイールベース(mm):2560 ●車両重量(kg):1190 ●パワーユニット:1490cc直3DOHC(91PS/12.2kg・m)+モーター(59kW/141N・m) ●トランスミッション:電気式CVT ●WLTCモード総合燃費:27.8km/L ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)トーション・ビーム式(R)●タイヤ:215/50R18 

icon ガソリン車

G(FF車) ●価格:202万円

腰の効いたサスチューンもあって、SUVの重量ハンデはほとんど感じない。浅いアクセル開度でも素早く力感が盛り上がってくるなど、一般路でも操る楽しみを体感できる稀有な存在だ。

  • 最善の熱効率を追求して生まれた最新のダイナミックフォースエンジンは、1.5L3気筒とは思えないほど低中速域から豊かな力感を示してくれる。省燃費性能も極めて優秀だ。

■主要諸元 ●全長×全幅×全(mm):4180×1765×1590 ●ホイールベース(mm):2560 ●車両重量(kg):1120●パワーユニット:1490cc直3DOHC(120PS/14.8kg・m) ●トランスミッション:電気式CVT ●WLTCモード総合燃費:19.8km/L ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)トーション・ビーム式(R)●タイヤ:205/65R16 

icon

ギュッと凝縮された塊感を上手に表現するエクステリア。水平基調のボンネットラインの採用でSUVらしいタフなイメージを強めている。他にも大型ホイールアーチや大径ホイール、切り上がったLEDライトが印象的なフロントマスクなど、ヤリスの名は付くものの、その印象は大きく異なる。

インパネの基本形状や構成素材はヤリスを踏襲するが、メーターデザインやセンターコンソール意匠で差別化される。最も大きな違いは後席周り。延長されたホイールベースの余裕は後席のゆとりに当てられており、足元も頭上空間もゆったり。ヤリスの弱点をしっかりと解決していることは見逃せない。

  • 荷室スペースの拡大も大きな武器。シート格納時には上下2段に使い分けができるラゲッジデッキボードなどを用いることで完全フラット床面を実現している。後席は4:2:4後席分割可倒式と多彩なシートアレンジを採用することで、実践的なユーティリティ性能も手に入れている。

見た目以上に走破性は優秀。SUVの基本性能も抜かりなし

駆動力制御は“最新”を採用。本格的な悪路以外なら問題なし

 FF車と4WD車の価格差はハイブリッド/ガソリン車共に約23万円。少々の価格差を感じるが、ガソリン車にはダイナミックトルクコントロール4WD+マルチテレインセレクト、ハイブリッド車にはE-Four(電気式4WDシステム)と、トヨタの最新駆動システムが採用されている。4WDによる悪路踏破性の上乗せはガソリン車の方が1ランク上だが、ハイブリッド車も生活四駆としては悪路対応力が高い。ちなみにFF車のリヤサスはトーションビーム式だが、4WD車はダブルウィッシュボーン式にグレードアップ。劇的とは言わないまでも、4WD車は乗り心地も向上する一面を持つ。

 本格的な悪路走破性まではいらないユーザーならば、ヤリスクロスの4WD車は理想的な1台になるかもしれない。

ガソリン車もハイブリッド車も、泥濘などで空転した際に反対側のタイヤに駆動力がかかるように制御する最新の駆動制御技術が備わっている。

  • 凹凸の激しい路面状況でも、地面に接地しているタイヤに適度な駆動力を伝え続けることで走行することが可能。オンロード専用のSUVではないのだ。

  • ガソリン車

  • ハイブリッド車

ガソリン車もハイブリッド車も、フロアコンソールに走行モードの切り替えスイッチが備わる。ガソリン車は3つの走行モードを備えるマルチテレインセレクト(右)、ハイブリッド車には2つの走行モードを備えるモード切り替え機能(左)が用意される。

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グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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