新車試乗レポート[2019.10.05 UP]

【試乗レポート・ダイハツ タント】新型の特色は内装、先進安全装備、そして運転席にアリ!

ダイハツ タント

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 昨今、乗用車における軽自動車の販売比率は約4割まで高まっている。乗用車が10台売れたらそのうち4台が軽自動車、という計算になるのだからかなりの比率だ。最近の軽自動車は室内が広くなっただけではなく、乗り心地や装備が快適になり、商品としての魅力が大きく高まった。言葉を選ばずに言うと、かつてのような「安っぽさ」はすっかり払拭されたと考えている人が多いのだろう。だから「これでいい」と考える人が多いのも素直に納得できる。

この記事の目次

新型タントはメカニズムのすべてを一新
運転席ロングスライドがもたらす新しい使い勝手
先進安全装備が充実した新型タント。クルーズコントロールは渋滞時に自動停止
ライバルN-BOXと比べて新型タントの優れたところは?

関連情報

ボディタイプ:軽自動車 国産車 新車

 そんな軽自動車マーケットのなかで、もっとも売れ筋となっているのが、今回紹介するダイハツ「タント」も属するスーパーハイトワゴンである。ライバルは、日本で最も売れている乗用車であるホンダ「Nボックス」をはじめ、スズキ「スペーシア」などだ。
 実は、タントはそのなかでも特別なモデルである。なぜなら、このジャンルを切り開いたパイオニアなのだから。
 2003年にデビューした初代タントをはじめて見たとき、その室内の広さに驚いた。従来の軽自動車の主力ジャンルだった「ハイトワゴン」(ダイハツの車種では「ムーヴ」)に比べると背が高く、室内の圧倒的なゆとりを実感できた。そんな室内の広さはライバル不在の当時、他の軽自動車に対して大きなセールスポイントとなり、タントは瞬く間に人気車種となって軽自動車の勢力分布図を塗り替えた。
 それを見たライバルメーカーのスズキは「スペーシア」(初代モデルは「パレット」)を生み出し、ホンダは「Nボックス」をデビューさせるとたちまち大ヒット。スーパーハイトクラスは軽自動車の主力ジャンルへと成長していったのだ。つまりタントは、ここ15年ほどの軽自動車事情を語る上で欠かせない車種なのである。

新型タントはメカニズムのすべてを一新

 そんなタントが、フルモデルチェンジで新型へ生まれ変わり、4世代目となった。今回のモデルチェンジは車体の基本構造からエンジンやトランスミッションまですべてを新規に開発した、かなり力の入ったものである。
 たとえば、ダイハツはプラットフォームのアレンジに自由度を持たせたうえで基本設計を全車統一する「DNGA(ディー・エヌ・ジー・エー)」と呼ばれる新しい車両設計の考え方へと転換を図っているが、その採用第一弾となるのがこの新型タント。「タントはダイハツの主力モデルだから、まずはタントからDNGAを採用したかった」とダイハツの関係者は言う。

ダイハツ タント カスタム

 新型タントのバリエーションは、基本的に従来モデルと変わらない。ボディは背の高いスーパーハイトで、エクステリアの仕立ては標準タイプと上級仕様の「カスタム」のふたつをラインナップ。エンジンは自然吸気とターボがあり、標準仕様も上級仕様も最上級グレードにはターボエンジンを組み合わせる。
 やはり注目は室内の広さだが、そこは先代と同等。車体サイズに制約がある軽自動車の場合、もはや室内の拡大は行きつくところまで来てしまい、フルモデルチェンジしても室内を広げるのは難しいのだ。とはいえ、後席に座ると足元と頭上のスペースがたっぷりで呆れるほど広い。こんな軽自動車を買うと、「クルマは軽で十分」という気持ちになるのも理解できる。

運転席ロングスライドがもたらす新しい使い勝手

 ところで、タントといえば欠かせないのが、ライバルに差をつける“飛び道具”だ。
 歴代モデルを振り返ると、それぞれが時代の先を行くエポックメイキングなアイデアを盛り込んできた。初代は天井を高くして室内を広げたパッケージングで世間を驚かせたし、2代目は助手席側の前後ドアを開けるとBピラー(一般的に派存在する中央の柱)がない「ミラクルオープンドア」と呼ぶ大開口部になる仕掛けが自慢だった。
 新型ではなんと、運転席シートが後方へロングスライドする機能を世界初採用。後方へ大きく移動するという、運転席ながら運転とは全く関係ない仕掛けなのが興味深い。
 どんなシーンで便利かと言えば、助手席側のスライドドアから乗り降りする際に車内を移動するのが楽になるほか、運転席に座ったまま助手席側リヤシートの子供の世話ができるとダイハツは説明する。
 実際に試してみたところ、ボクがもっとも便利だと感じたのは小さな子供と一緒に移動するママやパパの乗り降りだ。具体的には、助手席側スライドドアから子供を抱きかかえて、もしくは子供と一緒に車内へ乗り込み、後席のチャイルドシートに子供を座らせるような状況。そんなとき、一般的には子供を座らせた後にママやパパはいったん車を降り、車外をまわって運転席に乗り込むことになる。しかし運転席を後方へ大きくスライドすることで運転席へ室内移動しやすい新型タントなら、車外を歩く必要がないというわけだ。雨の日などにはこのメリットをもっとも感じられることだろう。この運転席ロングスライド機能を搭載するのは「X」系と「カスタムRS」である。

 「ミラクルオープンドア」や「運転席ロングスライド」だけでなく、新型への搭載で軽自動車初採用となる「助手席イージークローザー」や「ウェルカムオープン機能」、そしてオプションとして用意しているグリップやオートステップなど、新型タントの装備を見て気付くのは、乗り降りに関する機能への力の入れ方だ。助手席イージークローザーとは助手席のドアが半ドアになるのを防ぐ仕掛け。半ドア状態までドアを閉じれば、あとは電動でしっかりと閉じてくれる。「バタン!」と勢いよく閉じなくても、軽く閉めればスーッとドアが引き込まれ、ドアがしっかりと閉じるのは実に便利。一般的には500万円以上するような高級車に組み込まれる装備ながら、100万円台で購入できる軽自動車に組み込まれたのは画期的である。
 いっぽうの「ウェルカムオープン機能」は、あらかじめ降車時にスイッチを押して設定しておくだけで、次に乗り込む際はクルマに近づくだけでスライドアが自動的に開くシステム。子供を抱きかかえているときなどには、とても重宝するだろう。
 「もっとも乗り降りしやすい軽自動車を作る。」
 新しいタントに新投入されたアイテムをみていると、そんな開発陣の意気込みが伝わってくる。

先進安全装備が充実した新型タント。クルーズコントロールは渋滞時に自動停止

 意気込みと言えば、驚くのは走りの良さだ。実は公道試乗の前にサーキットで旧型と乗り比べてみたのだが、その素直な動きには感動すら覚えた。先代からの進化幅もとても大きかったのだ。
 正直なところ、タントのような背の高いクルマは重心も高く、物理特性からいって運動性能は不利である。曲がる時にフラフラしやすいのだ。しかし新型は安心感が大きく高まった。旋回中の安定感と、大きく曲がり込んでも挙動が不安定にならない懐の広さ、そして旋回中のハンドル修正の少なさは、「あのタントがここまで!」と思うほど。公道でも背の高さを感じさせない素直な感覚を実感することができた。
 いっぽうで唯一残念だったのは、路面が荒れた場所を通過する際に衝撃が大きめで、乗り心地が若干乱れたことだ。
 ちなみにエンジンは自然吸気とターボがあるが、オススメは断然ターボ。従来に比べると自然吸気でも動力性能が高まってはいるものの、とはいえ車体が重いだけにターボエンジンの太いトルクのほうがしっかり加速するので断然運転しやすい。
 また新型は、簡単操作で使いやすい駐車支援システム(駐車時のハンドル操作をクルマがおこなう)や、スーパーハイトワゴン初の渋滞時には停止までを自動でおこなう追従式クルーズコントロールを一部仕様に搭載。先進の運転サポート技術も見どころだ。

ライバルN-BOXと比べて新型タントの優れたところは?

 ところで気になるのは、販売面でクラストップを独走するホンダNボックスとの比較だろう。室内の広さでいえば、違いを感じるほどの差はない。どちらも広大だ。
ただし実用面では、後席のシート格納方法などの違いがあって、荷物を積むことを重視するならNボックス優勢だ。いっぽう、乗り降りのしやすさやドア開閉の便利機能などはタントがリード。どこを重視するかが、選択のポイントとなるだろう。

ダイハツ タント X(CVT)

全長×全幅×全高 3395×1475×1755mm
ホイールベース 2460mm
トレッド前・後 1300/1295mm
車両重量 900kg
エンジン 直3DOHC
総排気量 658cc
最高出力 52ps/6900rpm
最大トルク 6.1kgm/3600rpm
サスペンション前/後 ストラット/トーションビーム
ブレーキ前/後 Vディスク/ドラム
タイヤ前・後 155/65R14




 

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