車種別・最新情報
更新日:2018.11.07 / 掲載日:2018.04.27
【注目SUV徹底チェック】MITSUBISHIエクリプス クロス
●文:山本 シンヤ ●写真:佐藤 正巳/澤田 和久

MITSUBISHIエクリプス クロス
●発売日:2018年3月1日●価格帯:253万2600円~309万5280円●販売店:ミツビシ全店●問い合わせ先:0120-324860
■主要諸元(G4WD)
●全長×全幅×全高(mm):4405×1805×1685●ホイールベース(mm):2670●車両重量(kg):1550●パワートレーン:1.5L直4DOHC(150PS/24.5kg・m)●JC08モード燃費:14.0km/L●燃料タンク容量(L):60[レギュラー]●最小回転半径(m):5.4
自然なフィーリングの1・5Lターボエンジン
先月号でナンバー付きモデルの緊急試乗を行なったが、今回は一般道~ワインディング~高速道路までジックリと公道試乗を行なった。
エクリプスクロスはRVRとアウトランダーの隙間を埋めるモデルではなく、エクリプスの「スタイリッシュな世界観」、「パジェロのSUVDNA」、「ランエボのスポーツDNA」と「三菱らしさ」を凝縮させたモデルである。
エクステリアは前傾姿勢で上半分がパキッとして洗練、下半分は筋肉質で安心感のある三菱らしさを表現したSUVらしいデザイン。有機的な造形で乗用車に近い多くのライバルに対して、逆に新鮮に見える。イメージカラーのレッドタイヤモンドやホワイトパールはスポーティなイメージが強いが、逆にブロンズメタリックは欧州車のようなエレガントさが光るなど、ボディカラーによってイメージが変わるのも面白い。
インテリアは悪路走行や車両感覚の掴みやすさにも役立つ、三菱伝統の水平基調の考え方を受け継ぎ、これまで苦手だったデザイン/質感共に大きくレベルアップ。三菱初採用となるヘッドアップディスプレイは格納式を採用。ガラス投影機のほうがいいと言う声もあるが、個人的には三菱らしくていいと思う。Gプラスパッケージのみスマートフォン連携ディスプレイオーディオを装備。スマートフォンを巧みに使う人ならこちらがお勧め。ただ、タッチパッドコントローラーがAppleCarPlayのみでAndroidAutoに対応しないのが残念。他グレードは通常のナビを装着するための2DINスペースが用意されるが、別途ナビを買うと結果的に割高である。
エンジンは三菱初のダウンサイジングターボの1・5Lターボ(4B40)。ストイキ燃焼、デュアルインジェクションなどが特徴で150PS/240Nmのパフォーマンスを誇る。低中速の力強さに加えて高回転までストレスなく回る特性は、いい意味でターボらしくない自然なフィーリング。トランスミッションはCVTだが上手にチューニングされており全開にしない限りは特有のラバーバンドフィールは感じない。しかし、一般道のストップ&ゴーが続くような状況だと、アクセル操作に対してやや機敏すぎる所も……。

背の高さを感じさせない安定感の高いハンドリング
フットワーク系はアウトランダーをベースに効果的な補剛+構造用接着剤採用により体幹を鍛えたボディ&シャシーに、路面状況から最適な駆動力制御を行なうオールホイールコントロール理論によるオン/オフ問わないバランスのいい走りが特徴だ。
クローズドコースではランエボを思い出す大胆な姿勢変化も許容する懐の深さが印象的だったが、一般公道では走る場所を問わず、余計な演出をせずに素直で安心して走れるドライブフィールが印象的。背の高さを感じさせない安心感の高いハンドリングは、基本性能と電子制御が上手にバランスされている証拠だろう。
一方、快適性や静粛性はライバルに対して劇的に優れていると言うわけではないが、クルマのキャラクターに対しては合格点に仕上がっている。しかし、リアルワールドでは一般道の快適性に対して高速道路ではややクルマが動きすぎるのが気になった。この辺りが上手く両立できると走りの質感もより上がるのはないだろうか。
また、個人的には一般公道でももう少し『三菱らしさ』を主張するようなグレードがあってもいいと思った。例えば、もう少し出力を上げたパワーユニット、旋回性を重視したS‐AWC制御、そしてビルシュタインダンパーなどをプラスさせたフラッグシップ。かつてギャランフォルティス(ランサー)/コルトにラインアップされていたスポーティバージョンの復活はどうだろうか?

スポーティバージョン!「ラリーアート」の復活に期待!!
三菱独自のS-AWCと呼ぶ車両運動統合制御システムを採用。自動で適切な4WD性能を実現。雪道用、悪路用のモードも備える。
新開発の1.5L直噴インタークーラーターボエンジンは、2.4LクラスのNAエンジンよりも低回転から力強いトルクを発揮する。
アクセサリーでよりタフに使える


よりアクティブにエクリプスクロスを仕立てられるディーラーオプションカスタマイズを用意。エクステリア用ガーニッシュパーツや専用ルーフキャリア、ラゲッジ使い勝手向上アイテムもラインナップ。
MITSUBISHIエクリプスクロスの0→100km/h加速をTEST
ターボラグは少なくリニアな立ち上がりパワフルさも十分
エクリプスクロスの動力性能を、ゼロ発進加速で測定した。最新のダウンサイジングターボだけあってターボラグは極めて少なく、加速Gは遅れがなくリニアに立ち上がる。0.3Gまで0.6秒というデータは良好な部類だ。最大Gは0.5G弱でパワフルさも十分。エンジン回転数をみると、フル加速ではCVTがステップシフトとなり、5600rpmでシフトアップされている。100km/h到達は10.46秒で、これは以前、同様のテストを行ったヴェゼルハイブリッドの10.383に迫るものだ。※テストの結果は状況等で異なります。あくまでも参考値です。

※データ取得の関係上、エンジン回転数変化が段階的になっていますが、実際は滑らかです。
SUBARU XVとライバル対決
個性・実力を兼ね備えた注目クロスオーバー同士で比較!
新同格ライバル!?とも言えるエクリプスクロスとスバルXV。両車の気になるポイントを多角的に検証してみよう。
パッケージング・デザイン
機能的なデザインはエクリプスクロスだが、どちらもタウンユースに適している
バンパーを悪路対応デザインとしているが、XVの車体は基本的にインプレッサと共通。全高はルーフレール込みでもエクリプスクロスが90mm高い。XVはスポーティな5ドア車のデザイン。エクリプスクロスは部分的に個性的な造形を施しているがキャビンは高さをとった箱型に近い。言い換えるとXVは乗用車デザイン、エクリプスクロスは機能的SUVデザインなのだ。全長はXVが60mm長いが、ホイールベースは共通。エクリプスクロスのほうが車両感覚を掴みやすく、周辺死角はXVが少ないが、どちらもタウンユースにも適したサイズだ。
エクリプス クロス



SUVらしい逞しさと骨格を持つのがエクリプスクロス。前傾姿勢のルーフラインを持つが、インテリアはタイトな印象。
特に後席の開放感が不足している。が、パーソナル性を考えたら許容範囲だ。
前述した通り、見た目よりタイトに作られた室内空間。
XV



前後フェンダーなどにクラウディングパネルを装着。17~18インチの大径タイヤを装着し、SUVらしいフォルムを実現している。
車高を高めて見晴らしを良くしている。
インプレッサスポーツをベースにするため、ハッチバックモデルと同等の広さを確保。
4WD機構
悪路や滑りやすい路面での対応力はエクリプスクロスが上
両車ともにFFをベースに後輪へのトルク伝達(前後輪同期性)を状況に応じ多板クラッチで制御する電子制御4WDを採用している。制御モードはエクリプスクロスがオート/スノー/グラベルの3モード。XVはオート(ノーマル)とエクリプスクロスのスノー/グラベルに相当するXモード。悪路や滑りやすい路面での踏破性はどちらかと言えばエクリプスクロスが積極果敢なドライビングへの対応力、XVが穏やかな扱いやすさを重視した特性。こういった違いはオンロードでのハンドリングにも表れ、エクリプスクロスがスポーティな印象だ。
エクリプス クロス

S-AWCを4WD車に標準装備。スイッチ切り替えで雪道や悪路走行で、適切な4WDモードに変更できるのが特徴だ。
<1>S-AWCはドライバーの操作と車両状態をセンサーで検知し、前後の駆動配分とブレーキ制御を決定。<2>アクティブヨーコントロールとASC、ABSを統合し、左右輪間の駆動/制動力を制御。<3>リヤデフに設けられた電子制御カップリングを制御し、走行状況に応じて後輪に駆動力を配分。<4>あらゆる路面で安定した走行性能と、リニアなハンドリングを実現。
XV

路面状況などに応じて適切なトルクを前後輪に配分するアクティブトルクスプリットAWDを採用。悪路対応のX-MODEも装備。
走り・パワーユニット
低速域ではXVが扱いやすいが、高速域ではエクリプスクロス
両車ともにミッションはCVTを用いるが、小気味いいマニュアル変速も可能である。通常モード時でもエクリプスクロスはステップ変速感が強いのだが、1.5Lながら2.5L級のトルクを発生するターボにより巡航ギヤ維持の加速に優れる。XVはNA仕様の1.6Lと2L。2L車では加速時のダウンシフトも少なめだが、CVTを利した半速分のダウンシフトで初期加速を高める制御。1.6L車はダウンシフト域も大きくなる。低速域でのコントロール感はXVのほうが洗練された印象だが、高速域での余力はエクリプスクロスが1ランク上の出来である。
エクリプス クロス
JC08モード燃費は4WD車で14.0km/Lを達成している。
150PSを発生する1.5L直4ターボエンジン。
XV
JC08モード燃費は16.0~16.4km/Lと排気量で大差ない。
115PSの1.6Lと154PSの2.0Lの2タイプ。
先進安全装備
歩行者対応など最新の安全&運転支援が揃うXV
XVが採用するアイサイトVer.3は歩行者対応AEBSや全車速型ACC、半自動操舵型LKAを備え、BSMやRCTAも設定している。半自動駐車支援装備はないものの現在の最新安全&運転支援装備の主たるものが揃う。エクリプスクロスも充実した装備を採用しているが、車線維持支援は逸脱警報のみとなり、価格帯を考えると少々不満。また、アイサイトは全車に標準装着されているが、エクリプスクロスはベーシックグレードがACC非設定。機能面でもグレード設定、あるいは買い得感でもXVのほうが魅力的である。
エクリプス クロス

レーザーレーダーとカメラや電波式レーダーで多彩な予防安全と運転支援機能を搭載。最新システムが一通り揃う。
XV

エクリプスクロスへのアドバンテージは、アイサイトVer.3のステアリング操作をアシストするアクティブレーンキープだ。
ユーティリティ
荷室容量や使い勝手でXVに軍配が上がる
悪路走行前提ならXVのサイドシルの汚れは乗降の妨げ。SUVでは比較的低い座面地上高でも乗降時はサイドシルとふくらはぎが接触しやすい。エクリプスクロスはドアパネルでサイドシルをカバーしているのでXVほど気を使わなくて済む。荷室周りは汚れ物対応や後席スライド機構などエクリプスクロスがレジャー用途向けの設計だが、荷室容量は幅、奥行き、高さともXVが勝っている。付け加えるなら後席の着座姿勢やスペースのゆとりもXVがリード。4名乗車の機会が多ければXV、2名乗車基本のレジャーならエクリプスクロスに分がある。
エクリプス クロス

リヤシートを最前端にスライドした状態で448Lの最大ラゲッジ容量を持つ。床下には大型のアンダーボックスを設置。
XV

開口幅の広いラゲッジ。容量は通常で385L。床下のアンダーボックスは小さめ。使い勝手はベースのインプレッサスポーツに準じる。
結論
SUBARU XVとライバル対決
多用途性ではエクリプスクロス
雰囲気でも使い方でもSUVらしさへのこだわりが両車の評価では最も重要である。その点では外観の印象どおりの2車でもある。一般的な乗用車からの乗り換えで、ラフロード走行はプラスαの楽しみとするくらいのユーザーにとってXVはベストバランスと言っていい。もっとSUVっぽくて、タウンユースからアウトドアレジャーまで多様に使うというユーザーならばエクリプスクロスが似合う。ただし、4名乗車を基準にすると積載に余裕がないので、アウトドアレジャー派はポスト&プレファミリーが対象である。
提供元:月刊自家用車