新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2017.12.19

【試乗レポート】3列シートでも走りが気持ちいい! マツダ CX-8

文と写真●ユニット・コンパス

 CX-8は、スカイアクティブ世代となったマツダにとって初のピープルムーバーであり、従来MPVやプレマシーといったミニバンに乗っていたユーザーにとっても待望の多人数乗車モデル。このCX-8の登場によって、ようやくラインアップの構築が完成したという言い方もできるだろう重要車種だ。国内で販売されるマツダ車のなかでもっとも大型となるCX-8は、見てのとおりスタイリッシュなSUVスタイルを採用。ここに、6人または7人の乗員が乗り込むというわけで、当然2列目と3列目シートの快適性が試乗のポイントになる。

 外観は、堂々とした風格を持ちながらも、同時にスマートな印象を受けた。一般的な大型SUVの多くが、立ち気味のフロントガラスを採用するのに対して、CX-8のそれはクーペのように斜めだし、縦に短いサイドのグラスエリアもその印象を加速させる。ここに本当に3列シートが収まっているのか、3列目は狭苦しいのではないかと疑うほどスタイリッシュだ。では、実際に乗り込んでみて室内空間を確認してみよう。

 ドアを開けたときの印象は、CX-5よりもシックで上質感があるというもの。デザインテーマは同じだが、パネル類の素材や色使いが異なり、試乗した「XD Lパッケージ」にはリアルウッドが使われていることもあって高級感がある。なお、マツダが本杢パネルを採用したのはユーノスコスモ以来だとのこと。サテンクロームのメッキ加飾もマッチしている。ドライバーズシートに座ると、いい意味でCX-5に近い感覚で、クルマとの一体感があり、マツダらしいドライバー目線のクルマであることが伝わってきた。このまま走り出したくなるが、まずは2列目、3列目を確認してからにしよう。

 取材車両は6人乗り仕様で、2列目はセパレートしたキャプテンシートタイプ。間にはXD Lパッケージ専用の大型コンソールボックスが備わり、ぜいたくな気持ちになれる。シート自体の大きさも適切で視界も広く、これならロングドライブでも快適だろう。センターコンソールがあるこの仕様ではセンターウォークスルーができないが、マツダとしては2~4名での使用やショーファー用途をイメージしているとのこと。

 そして注目の3列目。「XD Lパッケージ」では、2列目シートを倒してのアクセスになるが、ドア開口部や内装内張りの形状を工夫したというだけあって、潜り込むような窮屈さは感じない。だが、頻繁に3列目を利用したり、お年寄りに乗ってもらうのであれば、センターウォークスルーができるXDまたはXDプロアクティブがオススメだ。3列シートの頭上空間は170cmまでの体格を想定しているというとおり大柄な男性には厳しく、中学生くらいまでの子供か小柄な女性向けといった印象。とはいえ、座ってしまえば足先を2列目下に入れることもできるため想像以上に快適だった。SUVであることを鑑みれば十分以上に使える3列シートだということができる。

 マツダはなぜCX-8をミニバンではなく、3列シートを持つSUVとしたのか。それを理解するカギとなるのが、メカニズムの基本となるプラットフォームの存在。CX-8が採用しているプラットフォームは、似たようなプロファイルを持つCX-5ではなく、北米向けモデルであるCX-9と同じものなのだ。つまり、CX-8はCX-5のロングバージョンではなく、CX-9の兄弟車と考えた方が正しいということだ。

 CX-9は2016年からすでに販売されている大型SUVだが、企画としてはCX-8とほぼ同時期に立ち上がっていて、プラットフォームをCX-8と共有することも決まっていたという。国内専用車としてピープルムーバーは必須だが、ゼロからミニバンを専用設計するのはコストや販売台数から考えて難しく、ある程度の販売ボリュームを見込めるCX-9の存在があったらからこそ、CX-8の企画が成り立ったと言えるだろう。この2台はプラットフォーム以外にも、シートなどの部品を共有している。

 たしかに、CX-8のホイールベースは2930mmでCX-9のそれと同じ。しかし全長と全幅はCX-8が4900mm×1840mmであるのに対して、CX-9は5065mm×1969mmとひとまわりも異なる。これは、CX-8の寸法が日本国内の道路事情や駐車環境を考えたギリギリのサイズであることに対して、よりゆとりが求められる北米向けのCX-9という違い。フロアのサイズは同じながらも、CX-9ではアッパーボディをよりふくらむような形状とすることで、両立させているという。この長いホイールベースこそがCX-8のパッケージングの肝要な部分で、1列目ではマツダが考える理想的なドライビングポジションを確保しながら、2列目シートにロングスライド機構を採用し、なおかつ3列目でも身長170cmの乗員が無理なく快適に過ごせる空間を実現させたわけだ。

 2列目、3列目に座ってもうずもれた感じがしないのは、1列目から3列目に向かってフロアが上がっていくシアター的なレイアウトを採用しているからだが、後方の席でも頭上のスペースがしっかり確保されているのが好印象。デザインの巧みさでカバーしているが、じつは全高はCX-5に比べて40mmも高く、これが効いているのだろう。SUV的なスタイリッシュさと3列シートの空間を両立させた非常に緻密かつ理知的なパッケージング設計だ。

 では、そんなCX-8の走りはどうなのか。結論からいうと、その走りは十分に気持ちのいいものだった。3列シートを持つ大型SUVにしてはという言い訳なしに。

 CX-5に比べて、タイヤのトレッド幅は同じでホイールベースが大幅に長いため、もっと大船のような動きをするクルマになってもおかしくないのだが、ステアリングやアクセル、ブレーキ操作に対するクルマの動きにリニアリティがあり、ドライバーとクルマとの間にちゃんと一体感が生まれているのだ。カーブでもぐらりとだらしなく車体が傾くこともなく、きれいなフォームを保ったまま走り抜けてくれるし、左右にハンドルを切り返すようなシチュエーションでも腰砕けになるようなことがない。

 また、これはCX-5オーナーが悔しくなるかもしれないが、CX-8の方がエンジンがいい。力強さとなめらかさ、そして静粛性が一段と進化しているのだ。これを実現したのが「急速多段燃焼」というコンセプトで、段付エッグシェイプピストン、超高応答マルチホールピエゾインジェクターなどの新技術が採用されている。これらによって、さらに優れた静粛性と燃焼効率、そして高い環境性能を両立することができたという。

 これだけの要素を盛り込みながら、2WDのベースグレード「XD」で320万円を切り、360°ビューモニターなどを設定できる中心グレードの「XDプロアクティブ」の2WDで353万7000円という価格には価値がある。3列目を倒せばCX-5よりも広大なラゲッジルームが登場することから、アウトドアなどの用途で荷物が多いユーザーにとってもCX-8は魅力のある選択肢になるはずだ。

マツダ CX-8 XD Lパッケージ 2WD 6人乗り(6速AT)

全長×全幅×全高 4900×1840×1730mm
ホイールベース 2930mm
トレッド前/後 1595/1600mm
車両重量 1880kg
エンジン 直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量 2188cc
最高出力 190ps/4500rpm
最大トルク 45.94kgm/2000rpm
JC08モード燃費 17.0km/L
サスペンション前/後 ストラット/マルチリンク
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 225/55R19

販売価格 319万6800円~419万400円(全グレード)

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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