自動車やバイクを運転する際に必須である自賠責保険は、万が一の事故に備えるための重要な制度です。事故の補償に絶対に必要なため、任意ではなく強制的に加入しなければなりません。

しかし、その具体的な仕組みや補償内容、手続きの流れについて詳しく理解している方は意外に少ないのではないでしょうか。

この記事では、自賠責保険の概要から手続き方法、補償範囲、そして注意すべきポイントまで具体的に解説します。車やバイクの購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

ポイント
  • 自賠責保険は法律で加入が義務付けられている「強制保険」で、全ての車やバイクの所有者が対象です。
  • 補償対象は「他人の死傷」に限られ、物損事故や自分自身のけがには対応していません。
  • 保険金請求には必要書類の提出が必須で、損害保険会社が損害調査を依頼し、支払い可否と金額が決定されます。
  • 支払いまでの期間が長引く場合に備えて「仮渡金制度」があり、症状や死亡事故のケースで一定額の前払いが可能です。
  • 自賠責保険は全国一律の保険料で営利性がなく、被害者救済を目的とした公共的制度です。

車の自賠責保険の仕組みを理解しよう

車の自賠責保険の仕組みを理解しよう
自賠責保険とは、万が一の交通事故で他人を死傷させてしまった場合に、被害者の救済を目的として、公的に最低限の補償を行うための制度です。そのため、車を所有・運転する全ての人にとって重要な保険です。

任意で加入する保険とは異なり、法律によって加入が義務付けられており、未加入での運転には重い罰則が科せられるため注意しましょう。

この記事では、自賠責保険の基礎から、保険金が支払われるまでの流れ、補償内容、注意点などを詳しく解説していきます。

車での事故に役立つ自賠責保険の仕組み

あまり考えたくないことですが、もしも車で事故を起こしてしまった場合にパニックにならないためにも、どのような流れで自賠責保険が機能するのかを正しく理解しておくことが大切です。

万が一の事態に備えて大まかな流れを把握しておき、スムーズに手続きを進められるようにしておきましょう。

ここからは、どのような流れで自賠責保険の保険金が支払われるのか、その仕組みを具体的に解説します。

車による事故の発生

車による事故の発生
交通事故が発生してしまった場合には、事故の状況に応じて負傷者の救護や警察への通報が最優先です。事故が発生した際に警察への届け出をしていないと、自賠責保険を請求するのに必要な書類も取得できないため、必ず警察へ通報しなければなりません。

事故発生後、警察による事故処理や負傷者の救護等が終わったら、それから自賠責保険の請求へと進む段階に入ります。保険請求の際には、警察が作成する「交通事故証明書」が必要となるため、まずはその書類を警察署等で申請しましょう。

請求書を提出

交通事故が発生した場合には、請求者が損害保険会社または共済組合に自賠責保険の請求を行う必要があります。その際には、以下の必要書類一式を提出しなければなりません。

  • 交通事故証明書
  • 自賠責保険請求書
  • 医師の診断書または死亡診断書
  • 治療費や交通費の明細書 など

これらの書類を正確に提出することで、自賠責保険による補償手続きが正式に始まります。書類に不備があると審査が滞る可能性があるため、損害保険会社(共済組合)に確認して確実に進めましょう。

損害調査を依頼

請求者からの請求書類を受け取った損害保険会社(組合)は、その内容を確認したうえで自賠責損害調査事務所に損害調査を依頼します。

この調査は、事故の状況や損害の範囲を明らかにし、保険金支払いの可否を決定づける重要なプロセスです。調査依頼が正しく行われることにより、保険金が適切に支払われるかどうかを公正かつ中立の立場で判断できる体制が整います。

損害調査を依頼した後に、調査期間から追加で情報や書類が求められる場合があるため、その際は正確に対応することを心がけましょう。

損害調査の実施

損害調査が実施される段階では、自賠責損害調査事務所が、事故発生時の状況やけがの程度、被害と事故の関係、過失割合などを総合的に調査します。

この調査によって、請求内容が保険の支払い基準を満たしているかが判断されるため、審査の公平性を担保するうえでも重要なプロセスといえるでしょう。

調査事務所は、必要に応じて医療機関や事故現場に問い合わせや確認を行い、保険金支払いの可否と金額を決定するために綿密な情報収集を行います。

自賠責損害調査事務所が損害保険会社へ損害報告

自賠責損害調査事務所が損害保険会社へ損害報告
損害調査が完了すると、自賠責損害調査事務所は、その調査結果を損害保険会社に対して報告します。

この報告には、事故の発生状況や保険金支払いの可否、妥当な共済金の金額などが明記されているため、適正な補償を行うための重要な判断材料になるといえるでしょう。

この報告を受けた損害保険会社は、報告内容に基づいて最終的な保険金の支払額を算定し、補償手続きに進みます。

請求者への保険金(共済金)支払い

調査報告の内容に基づいて、損害保険会社または共済組合が、保険金の支払いの可否と支払金額を決定します。承認された場合は、請求者に対して保険金(共済金)が支払われ、その時点で自賠責保険による補償が完了です。

請求者は保険金が振り込まれたあと、その金額が適正かどうか確認するために、振込内容や明細をきちんと確認する必要があります。必要に応じて、損害保険会社へ説明を求めることも可能です。

自賠責保険の保険金はいつもらえますか?
自賠責保険の保険金は、治療が終了して損害額が確定したあとに支払われるのが原則です。もしも後遺障害が残った場合は、障害認定手続きの完了後に振り込まれるため、時間を要することがあります。ただし、経済的負担を軽減する目的で、死亡時は290万円、けがの場合は程度によって5万・20万・40万円の仮渡金を請求することが可能です。

自賠責保険は加入が必須

自賠責保険は加入が必須
自賠責保険は任意保険ではなく強制保険であるため、車やバイクを運転するすべての人に、法律で加入が義務付けられています。

自賠責保険は、交通事故の被害者に最低限の救済をもたらすことを目的としており、未加入で運転した場合には厳しい罰則が科せられるため注意が必要です。具体的には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に加え、違反点数6点が加算されて免許停止となる可能性もあります。

うっかりして、保険の有効期限が切れていた場合でも違反に変わりないため、有効期間には常に気を配りましょう。

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自賠責保険で支払う保険料は一律

自賠責保険における毎年の保険料率は、損害保険料率算出機構が事故の発生状況や支払い実績などのデータをもとに公正に検証・算出しています。そのため、自賠責保険に対して支払う保険料は、どの保険会社で契約しても一律の金額です。

そのような背景から、全国どこであっても同一の条件で契約できる仕組みが整備されています。したがって、保険会社を選ぶ際には、手続きのしやすさや対応の丁寧さなど、料金以外のサービス面を重視するのが良いでしょう。

自賠責保険加入の流れ

自賠責保険加入の流れ
自賠責保険には、損害保険会社や代理店、車やバイクの販売店などを通じて加入できます。車を買う場合には、車を購入した販売店やディーラーでそのまま加入手続きを行うのが一般的です。

原付やバイクに関しては、郵便局や一部のコンビニ、インターネットでも契約可能であるため、身近な場所で比較的簡単に手続きできます。

加入の際には、車検証や車体番号・登録番号が確認できる書類が必要となるため、事前に準備をしておくことが大切です。

契約完了後に発行される自賠責保険証明書は、しっかりと保管しておきましょう。

自賠責保険の加入手続きに必要な書類

自賠責保険に加入する際には、自分が所有している車に関する情報を正確に証明できる書類が必要です。具体的には、以下のような車台番号がわかる書類を用意しましょう。

  • 自動車検査証(車検証)
  • 軽自動車届出済証(軽自動車の場合)
  • 標識交付証明書(原付・バイクの場合) など

これらの書類をもとに、車の所有者や登録情報を確認し、保険証明書が発行されます。書類に不備があると加入手続きが滞ってしまうため、事前にすべての書類を揃えておくことが大切です。

自賠責保険は保険会社に利益がない

自賠責保険は、交通事故の被害者を救済することを目的とした制度であるため、その社会保障的な性質から保険料には営利性がなく、利潤は含まれていません。すなわち、保険会社は自賠責保険の契約から利益を得ない仕組みとなっているのです。

契約者から集められた保険料は、被害者への補償金や自賠責保険制度の運営などに当てられています。自賠責保険は営利目的ではなく、あくまでも被害者救済のために設けられている制度であることを理解しておくことが重要です。

自賠責保険には仮渡金制度がある

自賠責保険には仮渡金制度がある
自賠責保険には「仮渡金制度」という仕組みがあり、賠償額の確定までに時間がかかる場合、被害者は加害者の保険会社に治療費や葬儀費用の前払いを請求できます。

仮渡金は、死亡事故の場合には290万円、けがの場合は症状に応じて5万円・20万円・40万円の前払金が支払われる制度です。この制度により、被害者が早期に医療費や葬儀費用を確保できるように整えられています。

仮渡金の請求先は、加害者が加入している損害保険会社や共済組合です。

これは、被害者の経済的負担を軽減するための重要な制度といえるでしょう。

自賠責保険があれば任意保険はいらない?
自賠責保険だけでは十分とはいえません。自賠責保険は対人賠償を目的とした保険であり、物損事故や自分自身・同乗者のけが等に対しての補償がないからです。さらに、自賠責保険には支払限度額があり、これを超える賠償責任が発生するケースも珍しくないため、自賠責保険に加えて任意保険を併用するのが最も安心できる選択といえるでしょう。

自賠責保険の請求を行う人の違いと申請方法

自賠責保険の請求には、「加害者請求」と「被害者請求」の2種類があります。状況に応じて請求者が異なるため、それぞれの流れをしっかりと把握しておくことが重要です。

ここでは、自賠責保険の請求を行う人の違いと申請方法について詳しく解説します。

加害者請求:事故を起こした人

加害者請求とは、交通事故を起こした側が自賠責保険の保険金を請求する方法です。

この場合は、まず加害者が被害者に対して損害賠償金を払う必要があります。その後、自賠責保険の契約先である損害保険会社や共済組合に対して、自身が支払った損害賠償金額を保険金として請求するのが基本的な流れです。

加害者請求では、一時的に加害者が賠償金を立て替える必要がありますが、手続きが比較的シンプルだという利点があります。

被害者請求:事故に遭った人

被害者請求は、交通事故の被害を受けた本人が、自ら損害保険会社や共済組合に対して保険金の支払いを直接請求する方法です。

被害者請求では、損害額がすべて確定していなくても、治療費や通院費などの確定した支払いがあれば、限度額内で何度でも保険金を請求できます。これにより、加害者の支払い能力や対応に左右されずに、自分自身で必要な補償を受けられる点がメリットです。

ただし、必要書類をすべて被害者本人が準備しなければならず、手続き完了までにある程度の手間がかかります。

自賠責保険の支払条件と限度額の違い

自賠責保険の支払条件と限度額の違い
交通事故により発生した損害に対して、自賠責保険からどのような条件で保険金が支払われるのか、ある程度把握しておくことは非常に重要です。補償対象や限度額は損害の種類によっても異なるため、内容を正しく理解しておくことをおすすめします。

ここからは、自賠責保険の支払い条件と限度額の違いについて具体的に見ていきましょう。

事故によりけがをした場合

交通事故によって負傷した場合、自賠責保険では治療費や文書料、休業損害などが補償されます。

支払いの対象とみなされるのは、医師の診断に基づく治療が必要であると判断され、実際に治療を受けたことが証明された場合です。また、けがと交通事故との因果関係も認められなければなりません。

共済金の限度額は、被害者1人当たり120万円です。支払いは治療で実際にかかった費用に基づいて算定され、必要書類を提出することで請求が可能です。

ただし、重症の場合は十分な金額が得られない場合もあります。そのようなケースに備えて、任意保険との併用が重要です。

事故により後遺障害が生じた場合

交通事故によって後遺障害が残ってしまった場合には、自賠責保険では障害の等級に応じた保険金が支払われます。

支払額は等級によって異なり、例えば、常時介護を要する「第1級」では最大4,000万円、臨時的な介護を必要とする第2級では最大3,000万円が限度額です。

一方で、上記以外の後遺障害は、第1級の3,000万円から第14級の75万円まで、障害の程度に応じて細かく等級分けされています。また、保険金の受け取りには、医師の診断結果をもとにした後遺障害等級の認定が必要です。

事故により死亡した場合

交通事故によって被害者が死亡した場合、自賠責保険から最大3,000万円の保険金が支払われます。この場合も、保険金を受け取るための条件として、死亡診断書等によって事故と死亡との因果関係を証明できることが必要です。

支払いの対象として含まれるのは、葬儀費用や逸失利益、被害者および遺族の慰謝料などです。葬祭費は実費に応じて最大60万円まで補償されます。

被害者が死亡した場合、保険金の受取人は法定相続人となり、相続順位に基づいて分配されます。

自賠責保険に未加入で運転するとどうなりますか?
自賠責保険に未加入で車を運転すると、自動車損害賠償保障法の違反にあたり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。また、未加入の状態で事故を起こした場合には、被害者への賠償責任を全額自己負担しなくてはなりません。自賠責保険への加入は法律で定められた義務です。

自賠責保険の注意点

自賠責保険は、交通事故が発生した際に被害者を救済する重要な制度ですが、補償内容には範囲があり、金額にも上限が設定されていることを忘れてはいけません。

補償の対象や金額などについて、事故が起こる前から正しく把握しておくことが大切です。ここでは、自賠責保険を利用する際に知っておきたい注意点について解説します。

保障される範囲が限られている

保障される範囲が限られている
自賠責保険は交通事故の被害者救済を目的としており、その対象は被害者の死亡やけが、後遺障害などの身体的損害に限られている点に注意が必要です。そのため、物損事故や自分自身または同乗者の負傷などについては補償されません。

このような制限があることから、自賠責保険はあくまでも最低限の対人補償を目的とした制度であると理解することが重要です。十分な補償を受けるためには、自賠責保険だけでなく任意保険にも加入する必要があります。

支払い金額に上限がある

支払い金額に上限がある
自賠責保険は、支払い金額が無制限ではなく上限が定められている点にも注意しておかなければなりません。

けがに対する補償は、被害者1人につき最大120万円、後遺障害では等級に応じて75万〜4,000万円、死亡事故の場合は最大3,000万円です。

事故の損害が自賠責保険の補償金額を上回ることは十分に考えられるため、自賠責保険だけでは補償額が不足する可能性があります。経済的リスクを軽減するためにも、必ず任意保険と併用すべきでしょう。

責任の有無によっては保障を受けられない

自賠責保険は、すべての事故に対して無条件に保険金が支払われるわけではない点にも注意しましょう。

例えば、被害者が事故の全責任を負っていると判断される場合には、保険金の支払いは行われません。歩行者の信号無視や無謀な横断などによって、被害者側の過失が100%であると認定されるケースなどが該当します。

まとめ

①自賠責保険は対人事故の被害者救済を目的とした保険で、すべての車・バイクに加入義務がある
②請求先は損害保険会社や共済組合で、調査や審査の後に補償が行われる
③営利目的の保険ではないため保険料はどの保険会社でも一律
④補償額には上限があり、けがで最大120万円、後遺障害で最大4,000万円、死亡時は最大3,000万円
⑤自賠責保険は物損や自身・同乗者の補償はされないため任意保険との併用が重要

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