ハイブリッド車の走行用バッテリーに関して、役割や寿命、交換が必要になった場合の対処法など、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
ハイブリッド車のバッテリーは2種類あり、それぞれに役割が異なります。バッテリーについて把握しておくことで、いつかバッテリーが寿命を迎えたときにどのような選択肢があるのか知っておくことが可能です。
この記事では、バッテリーの基本的な特徴や、寿命と交換サインなどについて解説します。
ハイブリッド車の心臓「走行用バッテリー」
ハイブリッド車には2つのバッテリーが搭載されており、走行用バッテリーは主に「駆動用バッテリー」のことを指しています。
走行用バッテリーはとても大きく、もし寿命を迎えて交換が必要になると数十万円の出費になってしまうでしょう。ドライバー自ら交換するのは、危険が伴うことから禁止されています。
もし費用を抑えたいと考えている場合は、リビルド品を検討したり、複数の業者で見積もりをとったりすることが重要です。
ハイブリッド車の種類と違い
ハイブリッド車には主に3つの種類があり、それぞれに特徴や導入されているモデルが異なります。
システム重量がそこまで大きくない「パラレル方式」は軽自動車に多く用いられていることがポイントです。
「シリーズ方式」は、走行は全てモーターで、エンジンは蓄電に役割が振られています。エンジンの稼働率がとても低く、燃費性能が特に高いことが特徴です。
「スプリット方式」は、エンジンにモーターをサポートする役割があります。停止からの発進時や高速道路の走行時など、本来より多くのエネルギーを消耗する場面でモーターが作動することで低燃費を実現させています。
ハイブリッド車には2つのバッテリーがある
ガソリン車とは異なり、ハイブリッド車にはバッテリーが2つ搭載されています。バッテリーそれぞれに役割や特徴が異なり、どちらも重要な役割を担っているのです。
ここからは、ハイブリッド車のバッテリー、走行バッテリーとも呼ばれる「駆動用バッテリー」と、ガソリン車のバッテリーと同じ「補機用バッテリー」についてそれぞれ詳しく解説します。
走行の動きに関わっているバッテリーは駆動用バッテリー(走行用バッテリー)と呼ばれており、ハイブリッド車に搭載されているモーターを作動させる役割があります。
バッテリーには大量の電気が蓄えられており、重量バランスをとるために車体下部に設置されているパターンが多いです。そのため、自分ひとりではバッテリーの交換作業はできません。
駆動用バッテリーが正常に作動しなくなると、最終的には車を動かすこともできなくなってしまいます。メーカーの保証も長く、そう簡単に交換が必要になるケースは稀ですが、もしもの際には修理をするか買い替えをするか考えなくてはいけません。
補機用バッテリーには、パワステやパワーウィンドウなどの電装品に電力を供給する役割があります。補機用バッテリーの役割は基本的に、ガソリン車に搭載されているバッテリーと同じです。
また、ハイブリッドシステムを起動させるスイッチの役割も務めています。そのため、補機用バッテリーが動かなくなってしまうと、ハイブリッドシステムを起動できず、外出先でトラブルに合った際には駆動用バッテリー同様ロードサービスを呼ぶことになります。
補機用バッテリーに関してはセルフで交換を行うことも可能です。カー用品店やホームセンターなどで購入できるでしょう。
車種によっては、後部座席の下に設置されているものもあります。
バッテリーの寿命と交換サイン
駆動用バッテリーと補機用バッテリーでは、それぞれ寿命も異なります。
補機用バッテリーは3~4年と比較的短いスパンで寿命がきて、定期的に交換が必要であることに対し、駆動用バッテリーは5~8年ととても長寿であり交換する場合には数十万円の費用が必要です。
ここからは、バッテリーの寿命と交換サインについて紹介します。
駆動用バッテリーの寿命は、5~8年程度で、走行距離にすると10万km程度とされています。
5~8年ということは、新車で購入してから2・3回目の車検を受けるタイミングです。一般的に車を所有する期間は7年程度であり、ちょうど車の乗り換え時期と被ります。そのため、バッテリーの寿命が来れば、交換は行わずに車を売却して新しい車の購入資金に充てる方も多いです。
バッテリーの交換をするとなると高額な費用がかかってしまうことも乗り換えを選ぶ方が多い要因になっています。
走行距離にすると10万kmが目安で、一般的に1年1万kmといわれていることからも、よほどシビアコンディションで使用されていない限り、5年以上は使い続けられるでしょう。
補機用バッテリーは駆動用バッテリーよりも寿命が短く、3~4年程度です。ガソリン車にも搭載されている補機用バッテリーですが、ガソリン車に比べて負担が少ないことから長持ちする傾向があります。
補機用バッテリーが寿命を迎えてしまうと、ハイブリッドシステムの電源が入れられず、車を使用できなくなっているため、定期的な交換がおすすめです。
補機用バッテリーは、駆動用バッテリーのような数十万円の高額な費用はかかりません。また、搭載場所によっては自分で交換もできるため、駆動用バッテリーよりも手軽に交換が行えるでしょう。整備工場に持ち込んでも、駆動用バッテリーの交換より工賃も安く抑えられるでしょう。
ハイブリッド車のバッテリー交換をセルフで行う場合
ガソリン車のバッテリーは、ボンネット内部に搭載されており、セルフでも比較的簡単に行えていました。しかし、ハイブリッド車はガソリン車よりも部品が多いぶん構造が複雑で、高圧電流も流れていることから危険性もあります。
このようなことから、駆動用バッテリーの交換には専門知識を身につけた人でないと交換作業はできないことになっています。必ず駆動用バッテリーの交換に対応した整備工場に依頼しましょう。
補機用バッテリーも搭載場所によってはセルフでの交換は難易度が高いですが、駆動用バッテリーと違って不可能ではありません。
バッテリー劣化による症状
バッテリーが劣化してくると、燃費が悪くなったりアイドリングストップをしている最中に勝手にエンジンが再始動したりします。普段と変わらない運転の仕方をしているのに、燃費が悪くなったと感じる際にはバッテリーの不調を疑いましょう。
また、バッテリーが上がりやすくなることや、坂道でエンジン音に異常を感じることもバッテリーの劣化が関係している恐れがあります。
メーターのディスプレイにも警告灯が表示されますが、蛍光灯の点灯が必ずしもバッテリーの寿命を伝えているわけではないため、警告灯の点灯はあくまでも参考程度にとどめておきましょう。
なお、補機用バッテリーは寿命を迎える前兆を見極めるのが難しいといわれているため、注意が必要です。
走行用バッテリーの交換のタイミングになると、車のあらゆる部品が寿命を迎えている可能性が高いことから、修理するよりも売却して、新しい車の購入資金に充てる方も多いです。また、リビルド品という中古パーツの活用も、抵抗のない方にはおすすめです。
バッテリーが上がる原因と対処方法
バッテリーが上がる原因は、充電が十分に行えていないのに消費電力が大き過ぎることです。ハイブリッド車の場合、補機用バッテリーがバッテリー上がりを起こしてしまったことを表しており、半ドアのまま放置したり、ライトを消し忘れていたりすることが原因です。
基本的な対処法は、ガソリン車と同じように2台の車をブースターケーブルでつないで行うジャンピングスタートです。バッテリー上がりを起こした車と、救援車のバッテリーが同容量であることを確認したうえで作業を行います。
対処を行っても頻繁にバッテリー上がりを起こしてしまう場合は、バッテリーの交換を視野に入れておきましょう。
バッテリー交換の費用と節約方法
バッテリーの寿命は、比較的に長持ちする部品ですが、消耗品であるため何年・何万kmと使用していると劣化が進み、あらゆる症状が現れます。
交換が必要になったとき、満足なメンテナンスが実現できるよう、交換費用の相場や節約する術を知っておくことが重要です。
ここからは、バッテリー交換の費用と節約方法について解説します。
駆動用バッテリーの交換には20~50万円程度の費用がかかります。新品のバッテリーに交換するとなると高額な費用がかかってしまいますが、リビルド品(中古品)を活用することで大きく費用を抑えられるでしょう。
駆動用バッテリーの交換は、どこでもできるというわけではありません。ディーラーや自動車整備工場など、自宅からの距離も考慮して依頼先を選ぶことがポイントです。
部品代はどこの業者を利用してもそこまで金額は変わりませんが、作業手数料は業者が独自に設定した金額であるため業者選びも慎重に行う必要があります。
補機用バッテリーの交換は作業手数料をあわせて3~4万円程度です。補
機用バッテリーは、セルフでの交換が可能であるため、費用を抑えたいと考えている方は行ってみても良いでしょう。しかし、駆動用バッテリーではないから危険性はないというわけではありません。
補機用バッテリーでも車のメンテナンスを自分自身で行う際には事前準備を整えて安全面に考慮しながら行うのが重要です。セルフだと作業手数料を浮かせられるメリットがありますが、時間と手間がかかってしまうことから、判断は慎重に行いましょう。
人が怪我をしたときに傷を暫く放っておくと、自然と治ることもありますが、車はそうではありません。そのまま様子を見ていても状態が回復することはまずないため、車の不調を感じたときには早めに点検を受ける習慣をつけましょう。
走行用バッテリーを長持ちさせる運転とメンテナンス方法
バッテリーの寿命は平均的な数値であるため、走行環境や運転方法によっては目安にしていた時期よりも早くに寿命を迎えてしまうケースも珍しくありません。
今使用しているバッテリーをできる限り長持ちさせるには、普段から運転方法や保管方法など注意を払っておくことが重要です。
ここからは、走行用バッテリーを長持ちさせる運転とメンテナンス方法について紹介します。
急発進や急ブレーキなど「急」の付くような激しい運転はバッテリーにも負担がかかっている状態です。なるべく穏やかな運転を心がけて、車間距離をしっかりととっておくと自然とバッテリーにもやさしい運転ができます。
また、ハイブリッド車は走行している最中に回生ブレーキを活用してバッテリーに電気を蓄えている仕組みです。基本的には電気の使用と充電がバランス良く行われていますが、過充電はバッテリーに負担を与えてしまうことを覚えておきましょう。
なお、ハイブリッド車に搭載されている「エコモード」を急いでいるときこそ積極的に取り入れることで、バッテリーの負担を軽減させられます。
バッテリーにやさしい運転の方法は、自然と安全運転が身につくためおすすめです。
バッテリーは高温が苦手なため、夏場の保管環境には注意が必要です。近年の夏は猛暑日が多く、何の対策も行っていない車内の温度は50度を超えてしまいます。
高温状態が続くとバッテリーは劣化が進み、車内の装備品のカーナビやドライブレコーダーなどもあわせて負担がかかってしまいます。そのため、夏場はサンシェードを活用したりカーポートなど屋根を設置したりして、直射日光を避ける対策を行いましょう。
なお、車内の温度は車のボディカラーによっても異なります。白と黒では5度程度の温度差があり、黒のボディカラーの車はより高温になります。
劣化したバッテリーを使用し続けることは、あらゆるリスクがあります。
特に遠方へドライブなど出掛けた際に、バッテリーの寿命を迎えて車が動かせなくなると、ロードサービスを呼んだり、日中の予定を変更したりしないといけなくなります。こうした事態を防ぐためには、日常的な点検と定期メンテナンスがかかせません。
バッテリーが劣化してくると、多くの場合メーターのある正面のディスプレイの警告灯が点灯します。警告灯が点灯したからといってバッテリーの不調とは限りません。しかし、バッテリーは完全に使えなくなるのを待つ前に交換することがおすすめです。
ハイブリッド車は、駐車してエンジンを切っているときにもドライブレコーダーやメーターなどの部品のデータを消してしまわないよう微弱の電力を使用しています。そのため、走行して溜めた電力も3~4週間ほど車を走らせていないと少しずつ使用するばかりで底をついてしまいます。
バッテリーにとってより良い環境を保つには、数週間に1度は1時間以上車を走らせて、バッテリーに充電をすることが重要です。
一見あまり使わない方が良い状態を保てるように思いがちですが、長期間乗らないで放置することも車に悪影響を与えてしまうことを覚えておきましょう。
中古のハイブリッド車を購入するときの注意点
ハイブリッド車を新車ではなく中古車から選ぶ際には、状態にバラつきがあるためハズレを引いてしまわないよう注意が必要です。
もしバッテリーが劣化した中古車を選んでしまうと、後のメンテナンスにお金がかかってしまい結果的に高くついてしまう恐れがあります。
ここからは、中古のハイブリッド車を購入するときの注意点について解説します。
中古車は大半が前にユーザーがいた車で、保管環境や運転方法なども様々です。どのように使用されていたかによって車の状態は違ってくるため、中古車を選ぶ際には車の状態をよく調べておくことが重要です。
特に「年式と走行距離のバランスが悪い車」には要注意です。
年式が古いのに走行距離がとても少なかったり、走行距離は多いが年式が浅かったりする車は車に負担のかかりやすい「シビアコンディション」であった可能性もあります。
可能であればエンジンオイルなどもチェックさせてもらい、定期的にメンテナンスが行われていたかも見ておくと安心です。
本来、走行用バッテリーにはメーカーごとに保証が設けられています。保証が受けられる条件はメーカーによって異なるため、事前に調べておくことが後悔しないためのポイントです。
保証期間が残っていれば、もし中古車購入後にバッテリーが故障しても無料で修理が受けられます。保証を受けるには整備記録簿が必要なケースなど条件もあるため、中古車販売店のスタッフには保証の有無を確認したい旨を伝えて対応してもらいましょう。
中には、中古車販売店独自の保証を勧めてくるパターンもあります。販売店の保証がいけないというわけではありませんが、料金面などは納得できるまで確認しておくことが重要です。