新車試乗レポート
更新日:2017.08.18 / 掲載日:2017.08.10
街乗りにぴったり! 新型CX-3のガソリンモデルは、お買い得なだけじゃない
文●ユニット・コンパス 写真●川崎泰輝
乗るたびによくなっている。2017年6月にガソリンエンジンを追加したCX-3の試乗会でまず感じたのが、クルマ全体の着実なレベルアップだった。
洗練されたルックスはそのままに、中身をブラッシュアップするのがマツダ流
グレードは「20S Lパッケージ」の2WDモデル。
通常、クルマはモデルチェンジして登場した瞬間がピークで、それ以降は後から登場したライバルとの相対評価も相まって、古さを感じ商品力の低下を実感するものだ。だからこそ、メーカーは数年に一度商品力を強化するためにマイナーチェンジを行う。しかしマツダでは、「スカイアクティブ」導入にあたってこの従来的な考え方から脱却し、「一括企画」によって生み出されていく新技術を随時投入し、商品の魅力をつねに向上し続けるというやり方へと方針転換を行った。今回の改良は、先進安全技術の充実やパワーユニットの追加がトピックではあるが、クルマそのものも、登場当初より確実に乗り味がよくなっていることに気が付き、その洗練の度合いと開発姿勢に感心したのだ。
具体的には、アクセル操作に対するクルマの動きがリニアリティを増し、ドライバーの意思に対してクルマが忠実に動いているように感じられるようになった。これは追い越しをかける際にアクセルを大きく踏み込むような特定のシチュエーションの話ではなく、信号待ちからの発進というような、日常レベルで感じられるもの。たとえば、発進する前走車の動きに合わせて加速していくのがとても簡単だ。アクセル操作へのレスポンスのよさを演出するためにちょっと踏んだだけでグッと加速するクルマもあるが、そういうクルマを運転するには、ドライバーはクルマの動きを先読みして途中でアクセルを戻す必要がある。その逆も含めて、こういったクルマは不自然で運転が楽しいとは言い難い。
だが、CX-3では踏めば踏んだだけ加速し、その加速感もドライバーの気持ちとリンクしているため、先読みしてアクセルを加減する必要がない。マツダではこれを独自の制御技術にて実現し、今後幅広い車種に展開していくという。ロードスターのようなスポーツカーだけではなく、マツダ車すべてで意のままに走る歓びを提供したいという考えによるものだ。カタログスペックには出ない技術ではあるが、人間の感性に沿ったクルマづくりは運転の愉しさだけでなく、ヒヤリハットを減らし結果的に安全運転にもつながるものとして歓迎したい。
全車が「安全運転サポート車」最高ランクに
各所にダークレッドのアクセントが入るインテリア
安全といえば、先進安全技術の充実も見逃せない進化だ。マツダでは2017年度中に先進安全技術「i-ACTIVSENSE」を主要5車種にて全車標準装備とすることを表明しているが、新型CX-3がその先陣を切るモデルとなった。現在、交通事故の発生防止や被害低減のために、経産省などが「セーフティ・サポートカーS」という制度を推進している。これは、先進安全技術の搭載度合いを3つにランク分けすることで、安全装備を普及し、消費者にクルマごとの安全技術の充実度合いをわかりやすくしようというもの。自動ブレーキ、ペダル踏み間違い時加速抑制装置、車線逸脱警報、先進ライトのすべてを備えるCX-3は、マツダ車として初めて全車が「サポカーS・ワイド」に該当することになる。
追加されたガソリン仕様はこんなひとにぴったり
さて、新型CX-3のもっとも大きなニュースであるパワーユニットの追加について紹介しよう。これまでマツダはCX-3を「マツダらしさを凝縮した個性派SUV」と位置づけ、ディーゼル仕様のみでの展開だった。今回改めてディーゼルを試乗し、力強い気持ちのいい加速と意のまま感の高い走りに感心したものの、「ガソリンエンジンも魅力があるのでは?」という疑問があったのも事実。ガソリンエンジンはディーゼルよりも軽く、安く、静かにできる可能性があるからだ。マツダ社内でもそういった議論はあったようで、このタイミングで追加とあいなった。
搭載されるのは、「SKYACTIV-G 2.0」。車格から考えればなかなか贅沢なチョイスだ。ガソリン版を単なる廉価モデルという印象にさせずに、CX-3の魅力、価値を維持する方針だという。ガソリンとディーゼルを乗り比べると確かにその考え方にも納得できる。低速域こそディーゼルの力強さに一歩およばないものの、必要にして十分なトルク感があり、伸びやかな加速が味わえる。エンジンは全域においてスムーズでナチュラルなフィーリングで、ガソリン車のこのフィーリングに慣れ親しんでいるユーザーにとってはきっと好ましいはずだ。
ディーゼルのメリットは長距離運転が楽であることと、年間走行が1万km以上走るような使い方での経済性。対してガソリンモデルは、燃費では一歩ゆずるものの本体価格で30万円ほどリーズナブル。つまり、年間走行距離が数千キロというちょい乗り的な使い方が多いひとやサンデードライバーにオススメだ。また、マツダのディーゼルはアイドリング時の音や振動が上手に抑えられているが、深夜や早朝といったシチュエーションでは、やはりガソリン車のほうが気を遣わずに済むだろう。
なお、今回の改良に合わせて、ボディカラーに人気のソウルレッドクリスタルメタリックが追加されたのも朗報。CX-3はデザインが魅力的なクルマだけに、色にこだわれるのは嬉しい限りだ。
【マツダ CX-3 20S Lパッケージ 2WD(6速AT)】
全長 4275mm
全幅 1765mm
全高 1550mm
ホイールベース 2570mm
重量 1240kg
エンジン 直列4気筒DOHC
総排気量 1997cc
最高出力 148ps/6000rpm
最大トルク 19.6kgm/2800rpm
サスペンション前/後 ストラット/トーションビーム
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 215/50R18
販売価格 210万6000円~276万4000円(ガソリン車のみ)