車の歴史
更新日:2020.07.28 / 掲載日:2020.07.28
“丸目”に惹かれる!人気者 TOYOTA SPORTS800の魅力 エクステリア
TOYOTA ’67 SPORTS 800(UP15)トヨタが1965年に販売を開始したスポーツカーが、多くのクルマ好きからヨタハチの愛称で親しまれているトヨタスポーツ800だ。車格的に名車トヨタ2000GTの弟分的な認識が強いが、2000GTのデビューは1967年。デビュー年からすればヨタハチが2000GTの兄貴分となる。ただし2000GTが専用シャシーを有する高級なGTであったのに対し、ヨタハチは大衆車パブリカのコンポーネントを流用して作られた小型スポーツカーとその生い立ちは異なる。とはいえその車両作りは、当時の開発陣の本気をとても強く滲ませるマニアックなものであった。●文&撮影:坪内英樹
Dimension
ボンネット、トランク、左右のドアは全て前ヒンジ。ルーフはタルガトップで脱着可能となり、ボンネット同様にアルミ製となる。
現行コペンと比べると 全長のみ大きい
ライトウエイトの2シーターオープンスポーツということで、コペンとサイズを比較してみた。全長はヨタハチが3580mmなのに対し、コペンが3395mmと約200mm長いものの、その他はコペンの方が大きい。全幅は1465mmに対し1475mmとコペンが広いが10mmなので、ほぼ同じと思っていいだろう。全高は1175mmに対して1280mmと約100mmもヨタハチの方が低い。コペンと比較すればヨタハチは低くそして長いのだ。
ライバルとなったのは ホンダSシリーズ
ライバルとなったのはホンダSシリーズ 60年代に登場した小型スポーツといえば、ハイパワーな4気筒DOHCエンジンを搭載するホンダSシリーズと、今回このページに登場するトヨタスポーツ800の2台が頭に浮かぶはず。ホンダSシリーズは1963年にS500を登場させ、翌1964年には排気量を拡大したS600をデビューさせる。そのS600のライバルとしてヨタハチは登場したのだ。 2輪メーカーから自動車メーカーに参入したホンダのSシリーズは、エンジンもシャシーも専用設計であったが、対するトヨタは既にクラウンやコロナなどの4輪乗用車を生産する国内有数の自動車メーカーであり、小型スポーツカーのジャンルに参入する際も、既存車両のコンポーネントを流用するという手法を取った。 ヨタハチのベースとなったのは、トヨタが1950年代に国民車構想の影響を受けて開発し、1961年にデビューさせた初代パブリカだ。軽量なフルモノコックボディを採用し、フロントにWウィッシュボーン、リヤにリーフリジッド式のサスペンションを組み合わせ、軽量コンパクトな空冷水平対向2気筒の700ccエンジンを搭載したパブリカの基本コンポーネントを、ヨタハチは流用する。 つまりはスポーツカーでいながら、その中身は大衆車。小型スポーツカーとして専用のエンジンやシャシーを持つ、ライバルホンダSシリーズと比べ、運動性能は圧倒的に低くなってしまうはずだ。しかし実際に小型スポーツカーとしてホンダSシリーズと比べて魅力がなければ、50年後の今、その名が残ってはいまい。ヨタハチはホンダSシリーズと異なる、小型スポーツカーの魅力を有していたのだ。 ちなみに動力性能でいえば、ホンダSシリーズが圧倒的に有利となる。排気量が最も小さいS500でも44psと、ヨタハチの45psとほぼ同じ最高出力を誇る。S600で57ps、S800ともなると70psもの馬力を誇ったのだ。しかしスポーツカーの魅力はエンジンパワーだけでは決まらない。ホンダSシリーズに対してパワーで劣るヨタハチは軽さと空力性能を高め、トータルでの動力性能を高めたのだ。 車両重量を比較すると、最軽量のS500が675kg、S800では755kgとなるが、ヨタハチは580kgと約100kgも軽量。1トン超の車両でも100kg軽いだけで運動性能は大きく変わるが、600から800kgという車重となる小型スポーツカーで、100kg軽いというのは、かなりの差となって、運動性能に影響を与えるはずである。
兄貴分の2000GTは、リトラクタブルヘッドライト+ボディ形状に合わせたカバー付きのフォグランプという前照灯の構成であったが、ヨタハチでは2000GTのフォグランプ位置がヘッドライトとなる。
スラントしたノーズの先端に小さく口を開けるグリル。前期と後期でデザインが異なり、撮影車両は後期型となる。またグリルはフラップ式となっていて、走行風の取り入れ量を調整可能だ。
フラップ式のフロントグリルをエンジン側から見るとこのような構造となっている。右端にはフラップを動かす為のワイヤーが配され、そのワイヤーが室内まで伸びている。油温などに合わせフラップを手動で開閉する。
いわゆるバンパーは前後共に2分割式。一般的なバンパー形状からするとオーバーライダーのみとなる。材質はアルミ製で、軽さにこだわったヨタハチらしい。ちなみに後の補修部品はスチール製となるそうだ。
空力にこだわったヨタハチらしく、フロントフェンダー上部に装着されるウインカーは流線形型状を採用している。ちなみに撮影車両のフェンダーミラーは、鏡面が大きいパブリカ用を流用しているそうだ。
軽さを求めたアルミ製のボンネットは、当時のスポーツカーの定番となる前ヒンジ式だがヒンジがシンプルな外ヒンジタイプ。その前方には兄貴分の2000GTと同様のデザインを採用したヨタハチのエンブレムが付く。
フロントスクリーンは車体サイズからすると大きめ。そこに備わるワイパーはスイング式を採用している。ボンネット後端とフロントウインドウの間のカウルトップ部の長さが、かなり長いのも特徴だ。
サイドウインドウには、60年代の車両らしく三角窓を備えているが、開閉はしないハメ殺しタイプとなる。リヤクォーター部のとてもシンプルな形状のダクトは、換気用のアウトレットとなっている。
リヤクォーター部のダクトを室内側から見ると、後方にヒンジを備え内側に開く扉式のカバーが装備されており、ドライバーが必要に応じてその扉を開閉させて内気を換気できるようになっている。
ドアのアウターハンドルは、後端側が軸となるシャレた形状のものを採用する。現代では突起物扱いされそうな形状だが、60年代車らしい個性的なデザインだ。その上に備わる穴はキーシリンダー用となる。
リヤの灯火類は左右に配されるオレンジのウインカー、レッドのスモール&ストップランプのみ。なんとモデル末期まではバックランプの設定が無かった。そのバックランプは、ナンバー灯の部分に設置されたそうだ。
給油口はトランクリッドの右側前方に装備されている。キャップにはしっかりロック用のキーシリンダーが装備される。トランクリッドもアルミ製で、ボンネット同様にシンプルなアウターヒンジとなっている。
トランクを開くと、開口部からはスペアタイヤがその多くのスペースを占めているように見える。しかし奥行きは広く、そのスペースには取り外したタルガトップが収納できるようになっている。