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2023年04月04日 16:54自動車・モータースポーツ雑記 第ニ回「パイクスピーク・ヒルクライム」

3月の怒涛の繁忙期が終わり、工場も少し落ち着きを取り戻してきました。
バタバタと忙しいのはしんどいですが、それはそれとして桜味のお菓子が沢山出回るこの季節は嫌いじゃなかったりします。
そんなこんなで今回は自動車・モータースポーツ雑記第二回、パイクスピーク・ヒルクライムについて紹介していこうと思います。

北米・コロラド州で行われるパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムは、1916年から続く歴史ある競技です。パイクスピークとは開催地の山の名前で、1806年に探検家のゼブロン・パイクに因んで「Pike‘s Peak(パイクの頂)」と名付けられましたが、パイク自身は登頂を完遂してはいなかったりします。競技は一台ずつ出走するタイムトライアル方式。標高2862mの地点からスタートし、森林限界をも超えて頂上の4301m地点まで約20㎞の道を一気に駆け上がることから「The Race to the Clouds(雲へ向かうレース)」の通称でも知られています。道の殆どの区間にはガードレールのような転落防止策が存在せず、足もすくむような断崖絶壁を横目に猛スピードで疾走する様は正にクレイジーな非日常の世界。

参戦するマシンはオープンホイールやストックカー、マッスルカー、ラリーカー、更には二輪(2019年のカーリン・ダン選手の死亡事故を受け現在は参戦不可)やサイドカー、ATV等多種多様ですが、最高峰クラスに当たるアンリミテッドクラスはその名の示す通り改造無制限のクラスで、この競技の花形と言える存在です。安全に関する規定さえクリアしていればパワーソースやボディワークにこれといった制限はほぼ存在せず、故にマシンの外観はチームによって様々で個性的ですが、共通しているのは空気密度の落ちる高山でも有効なダウンフォースを得るために装備される強大なリアウイングやフロントスポイラー/カナード等といったエアロパーツでしょう。これらによって、アンリミテッドクラスの参戦車両は禍々しいとも言える強烈で独特なビジュアルを持っています。

同様に大気中の酸素を吸い込んで燃焼する内燃機関を搭載する車両に於いても酸素濃度の薄い高山では出力が低下するため、強烈な過給圧をかけることで標高上昇による出力低下を極力抑えるようにしています。ターボチャージャーは自動車に於いて普及する以前は航空機が高高度を飛行するために使用されていた技術であり、ある種原点に近い使い方と言えるかもしれません。また、電気自動車は酸素濃度の低下で出力を左右されないためパイクスピークに於いては非常に有利とされており、実際にロマン・デュマ選手が2018年にEVレーシングカー・フォルクスワーゲンI.D.Rをドライブし打ち立てたコースレコードはそれまでセバスチャン・ローブ選手とプジョー208 T16パイクスピークが保持し5年間破られることのなかったレコードを16秒近くも短縮し、前人未到の7分台に突入。この時の記録は現在もまだ破られていません。

草創期から80年代中頃までは、殆どのイベントをインディロードスターやフォーミュラカー/バギーのようなスタイルのハンドメイドのオープンホイールマシンが支配してきました。しかし80年代末期には状況が一変。WRCで一時代を築いたもののその危険性からクラス消滅の憂き目に遭ったグループB規定のラリーカーをパイクスピーク用に改造し転用する形で欧州の自動車メーカーが殴り込み、85年から89年までのパイクスは欧州メーカーによって制圧されます。現在では全面ターマック(舗装路)となっているパイクスピークですが当時はまだ全面グラベル(未舗装路)で、ド派手に砂塵を巻き上げながら崖スレスレをリアタイヤが通過する豪快なドリフトは現在のパイクスには無い魅力と言えるでしょう。

当時のパイクスピークを鮮明に残した映像として有名なのは「Climb Dance」と呼ばれる映像作品。これは1988年にアリ・バタネン選手がプジョー405 T16GRで当時のパイクスピークのコースレコードを記録した際の様子を捉えた短編ドキュメンタリーで、時間としては5分程度の非常に短い作品ながら見る者の記憶に強く焼き付く作品となっております。欧州メーカーの活躍とこのショートフィルムによって、北米のローカルなヒルクライムイベントは一躍世界に知れ渡ることになりました。

90年代に入ると再びオープンホイールクラスが台頭し93年にはポール・ダレンバック選手によって88年のバタネン選手のレコードは塗り替えられますが、翌94年にはアンリミテッドクラスで参戦するロッド・ミレン選手のトヨタ・セリカ・スーパースポーツターボが前年のレコードを40秒近く更新し総合優勝。この時の記録は13年もの間破られず君臨し、同時にフルコースでの10分切りが一つの指標となります。ミレン選手の記録更新から暫くの間はアンリミテッドクラスの車両がパイクスを支配し現在もアンリミテッドが総合優勝の最有力候補とされていますが、時折オープンホイールやその他のクラスが総合優勝を飾ることもあり、あらゆるクラスが総合優勝を狙えるというのがパイクスの醍醐味の一つと言えるでしょう。

パイクスに於ける日本勢の活躍を語るうえで欠かせないのは、やはりモンスター田嶋こと田嶋伸博選手。ダートトライアルやラリーでも活躍する同氏は1988年からパイクスピークヒルクライムに参戦を開始、1995年には短縮コースでの開催ではありますが日本人として初の総合優勝を果たし、2006年から2011年の間には怒涛の6年連続総合優勝、更には2011年の記録はフルコースでの史上初の10分切りと数多くの功績を残しました。また、2011年の記録は全面舗装路になる前の最後のコースレコードとして永久に更新されることなく残り続けるものとなります。彼の存在を広く世に知らしめたのは、㈱ポリフォニーデジタルのレースゲームシリーズ・グランツーリスモでしょう。1999年発売のグランツーリスモ2で彼のパイクスピークマシンであるカルタスとエスクードが初収録され、特にエスクードに関しては1000馬力に迫る圧倒的パワーと800㎏程度の軽量車体でゲーム中最強マシンの座に君臨し、更には後のシリーズにも継続収録されたことで多くの人の記憶に刻まれることとなります。

他にも田嶋選手と同じく国内で活躍するダートトライアルドライバーとして知られる亀山晃選手は93年にR32GT-Rでオープンクラスに参戦しレコードタイムでクラス優勝、98年にもR33GT-Rベースのコンプリートカー・ニスモ400Rを駆りオープンクラス優勝。世界一危険なモータースポーツと言われるマン島TTの参戦経験もあるライジングサンレーシングの渡辺正人選手はサイドカークラスで参戦し2014年と2015年にクラス連覇。一世風靡セピアのメンバーでありVシネマの帝王として知られるタレントの哀川翔氏も2009年に自らのドライブでオープンクラスに参戦しクラス5位で完走、2012年には英国の少数生産スポーツカー・ラディカルの車体にTMG開発の電動パワートレインを搭載した「TMG EV P002」を引っ提げ自ら立ち上げたチーム「TEAM SHOW」の監督として参戦、ドライバーに全日本ラリーチャンピオンの奴田原文雄選手を据え当時の電気自動車のレコードタイムでクラス優勝…といった具合に最高峰以外でも多くの日本人が活躍しており、それらに注目してパイクスを楽しむのも良いかもしれません。

自由度の高いレギュレーションが生み出す他のカテゴリでは見られない怪物じみたマシンの数々、息を吞む断崖絶壁と雲を見下ろす景色、記録や道への飽くなき挑戦、そして内燃機関 vs EV…今後どのように変革していくかは判りませんが、何れにせよ非常にエキサイティングで目が離せない競技であり続けることに違いはないでしょう。

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オレンジモータース
認証工場:第1-3072号

国産車・輸入車を問わず、メンテナンス&車検の実施できる設備が充実。

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