新車試乗レポート
更新日:2022.04.29 / 掲載日:2022.04.27
【試乗レポート プジョー 新型308】日本車顔負けのコスパに感激

文と写真●ユニット・コンパス
晴天のもとで対面した新しい308は、まるで青年が立派な大人になったかのような印象を受けた。
先代モデルからサイズだけでなく、デザインや品質感もアップ

シャープな目つきと彫りの深い顔立ち、全長+145mm、全幅+45mm、全高+5mmと、縦横ともに大きくなったところにタイヤがボディ外側いっぱいに踏ん張りを効かせるスタイルは、いい意味でコンパクトカーらしくないルックス。とくに全幅が格上のクラスと同じくらいになったことが大きいのだろう。プジョーは新型のデザインについて、新エンブレムの導入を採用すると同時にSUVにも負けない存在感を目指したと説明したが、たしかに風格があり路上での主張が増している。その印象を強くしたのがボディカラーだ。試乗会にはテーマカラーのオリビン・グリーンのモデルが用意されていたのだが、グリーンとブラックとの強いコントラストが、力強さと高品質なイメージを作り上げているのだ。試乗会場の周辺で何度かこのカラーの車両とすれ違ったが、その度に印象的でいい色だなと思った。

上質さを大切にした優れた日用品

新型308の商品ポジションをひとことで表現するとすれば、「上質さを大切にした優れた日用品」といったところだろう。プジョーが主戦場とするヨーロッパ市場では、長らくハッチバックというボディ形状が主流だったが、ここのところSUVがその立場を奪おうという勢いで成長している。当然プジョーも3008というSUVを投入してニーズに応えているのだが、ハッチバック市場には根強い人気があり、ユーザーは目が肥えている。そこで、新型ではSUVと並べても遜色ないプライドを満たせる商品にしようという狙いが生まれた。前述のボディサイズ拡大もこの目的に沿っている。
グレード構成は4つで、今回は1.2L直3ガソリンターボの「308 Allure」(305万3000円)とプジョーが売れ筋だと予想する1.5L直4ディーゼルターボの「308 Allure BlueHDi」(327万7000円)が試乗車として用意されていた。「Allure」はベーシックグレードだというが、ファブリックとレザーを組み合わせたシートは造形や縫製も十分に美しい。座面サイズも大きく、座り心地もゆったりとしている。プジョー自慢の小径ハンドルも先代モデルよりも形状が洗練されフィニッシュのレベルも高い。ダッシュボードからドアまで繋がるファブリック素材の加飾パネルのあしらいも今風。こういうディテールのセンスにフランスのブランドを選ぶ喜びがある。
新型では10インチタッチスクリーンの「PEUGEOT i-Connect」にボイスコントロールなどの先進機能が加わったのもウリなのだが、それが使用できるのは「GT」のみで、「Allure」はナビもインストールされていない。Apple CarPlayとAndroid Autoには対応しているので、手持ちのスマホをUSBで接続すれば、ナビアプリなどが車両の10インチタッチスクリーンで操作可能になる。
新型ではシフトレバーも小さなトグルスイッチに変わった。エンジンスイッチから手を動かすことなく操作できるし、よいしょと力を入れる必要もない。なにより従来シフトレバーのあった位置に蓋付きのドリンクホルダーが用意されたことは、従来型のユーザーには羨ましいところだろう。これまでは市販品などをわざわざ購入する必要があったからだ。また、クルマによってはドリンクホルダーを使うと肘置きが使いにくいレイアウトもあるが、新型308は心配なし。






価格だけではないベースグレード「308 Allure」の魅力

声を大にして伝えたいのが走りの印象だ。ガソリン車、ディーゼル車どちらも完成度が高く、それぞれの商品性とマッチしている。なによりハッチバックならではの重心の低さが素性の良さとして効いているのだ。
メカニズムの大部分を先代から改良して使うフルモデルチェンジではあるが、実際に走らせてみると進化のほどは大きかった。資料によると、基本性能に関わる車体の強靭さや快適性につながるガラスの厚みなど細部にわたってアップデートを行なっていることがわかる。
使用用途が日常的な買い物や通勤が主だというなら、オススメは1.2Lガソリンターボの「308 Allure」だ。クルマの動きがとにかく軽快で、小径ハンドルと相まって交差点でもまるで羽が生えたかのように軽やかに曲がるのが気持ちいい。乗り心地も秀逸で、クルマ全体はかっちりとしていて振動も少なく守られている感じがあるのに、段差などはふわりと上手にやり過ごしてくれて優しさがある。それでいて山道をハイスピードで走らせても、涼しい顔でコーナーをクリアしてしまうのだから素晴らしい。
ではディーゼルエンジンの「308 Allure BlueHDi」はといえば、ロングドライブや日常的にある程度の距離を走る方に向いているだろう。ある程度スピードがのってきたときの、しっかり腰の座った動きはいかにも欧州車らしく、長距離走行での疲労が少ないキャラクターだ。街中のストップ&ゴーが苦手という意味ではまったくないので、よりオールマイティであるという見方もできるのだが、街中での使い心地のよさはガソリン車に軍配が上がる。
国産車と比べても負けないコストパフォーマンス

ひとクラス上のモデルに匹敵するサイズと堂々たるデザインと品質感に加えて先進安全装備についても十分なレベルに到達した新型308。そして今回の試乗で収穫だったのが、305万3000円の「308 Allure」が意図的に価格を低く見せるためのグレードではないとはっきりわかったこと。同サイズの国産車と比べても価格差はないため、これまでよりも多くのユーザーが興味を持つだろう。プジョー&ハッチバックファンだけでなく、多くのひとに試してもらいたい個性と魅力を持ったクルマが登場した。